海上都市の機甲女 ~a point of change~

ケニーさん

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第五機

同時暴走事件 《東エリア――中央部第二発電施設》 4

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 篤の表情を見たツバキは言葉を濁した理由を理解した。

(本当に優しい人ですね……。心配してくれることがうれしい。篤さんは私にさせたくないと思っている。でもやってもらわなければならないとも思っている。だから言葉にできない。
 なら、篤さんに言わせてはだめだ。私から言わないと……そうでなければ背負わせてしまう。私から言えばそれが少しでも軽くなる)

 言うか否か逡巡しゅんじゅんする篤に言葉をかける。

「私がやります……私にやらせてください。篤さん」

 ツバキの言葉を聞いて篤は眼を見開く。そして心が読まれていたことに気が付く。篤は言葉にできない自分に呆れる。先ほど爆発して更に激しく炎上する施設に目を向けながら言った。

「いや、それは――」

「帰ってきます。必ずここに帰ってきます……。です」

 ツバキの柔らかな表情の中にある強い覚悟に篤は押し負けて、頷いた。

「それでどうやって施設内に入るんだ? 正面からはどう見ても入れない」

「このビルの屋上から隣の施設に飛び移ります。距離はありますけど、加速するための距離もありそうですし、建物も高さの差があるので自由落下を考慮しても施設屋上に着地できます」

「その後は? 施設もそこそこ、階数がある。当然エレベーターは作動していないはずだ。目的は地下だ。階段で降りるにしても時間がかかる」

「施設内の構造を調べてみましてが、階段と階段の間に地下まで隙間が空いているみたいなんです。そこから一気に降下します」

 篤はバイクのボックスから熱に強く強度のあるザイルを取り出して手渡した。

「長さは全く体内がうまく使ってくれ。それと、施設内にも暴走している機械人形アンドロイドがいるかもしれない。十分気を付けてくれ。あともう一つ……帰りはどうするつもりだ?」

「成功させれば問題ありません」

「穂摘。発電施設はツバキがやる。もう一つは俺がやる」

『さっき連絡があって、近くにたまたまいたペアがやってくれる。だから篤くんはツバキちゃんの帰りを待っていてあげて』

「わかった」

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 ツバキはビルに入ってエレベーターで屋上へ向かった。

(久しぶりの約束。約束はだれかとするもの……。約束の守られなかった時の辛さはよく知っている。
 篤さんにそんな思いはさせない)

 ツバキは篤の為、都市の為、自分自身の為に気合を入れた。
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