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第八機
安心できる場所
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篤は携帯端末を耳に当てて病棟入り口でコール音を数回聞き流していた。
繋がったら一拍おいてから話し始めた。
「篤だ。連絡が遅くなって悪い」
『いいよー別に。お仕事お疲れ様。だいぶ疲れてるみたいだけど……大丈夫?』
いつもより声のトーンとリズムが遅いことから体調を推測したサクラが篤の心に空気同然に入り込んできた。
「わかるか? 二日連続で事が起きて肉体的な疲れもそうだが精神的なものが結構たまってな……。そうだ、ツバキのことなんだが今日は病院泊まりだから帰れないんだ」
『そうなの? 大丈夫?』
「心配ないよ。ついさっきまで話をしていたくらいだ。でも、ツバキには負担をかけてばかりだ。俺だけの話じゃないが、機甲官はペアに頼りすぎている」
ガラスに映る情けない表情の自分を見ながらツバキと会ってからの出来事を思い出しながら思う。
さらにはナヅナや今話をしているサクラの事も思うところが多くある。篤自身の情けなさを痛感するばかりで憂鬱になってしまう。
篤はしまったと思った。サクラに心配をさせてしまうような事を口にしてしまって後悔した。だが既に口にしてしまった以上、取り消すことなどできない。何とか言い繕うと言葉を探しているところでサクラの言葉にもだが初めて聞く声音に篤は驚かされた。
「今……今なんて?」
聞き間違えかと思って聞き返してしまった。
『あっくんは頑張りすぎだよ。私たちを心配してくれるのはうれしいよ。でもね、あっくんが私たちを心配するようにあっくんのことを私たちは心配しているのを分かってほしいな……なんてね?』
照れくさそうに言い切った。だが篤が耳にしたのはおそらく、否――この言葉ではなかった。
だが篤には聴き返す勇気がなかった。だから記憶から消すことにした。聞こえていなかったことに――これは正しい判断だったのか迷いながらも。少なくとも今の篤には答えを導き出せない。
サクラの思いを――――
繋がったら一拍おいてから話し始めた。
「篤だ。連絡が遅くなって悪い」
『いいよー別に。お仕事お疲れ様。だいぶ疲れてるみたいだけど……大丈夫?』
いつもより声のトーンとリズムが遅いことから体調を推測したサクラが篤の心に空気同然に入り込んできた。
「わかるか? 二日連続で事が起きて肉体的な疲れもそうだが精神的なものが結構たまってな……。そうだ、ツバキのことなんだが今日は病院泊まりだから帰れないんだ」
『そうなの? 大丈夫?』
「心配ないよ。ついさっきまで話をしていたくらいだ。でも、ツバキには負担をかけてばかりだ。俺だけの話じゃないが、機甲官はペアに頼りすぎている」
ガラスに映る情けない表情の自分を見ながらツバキと会ってからの出来事を思い出しながら思う。
さらにはナヅナや今話をしているサクラの事も思うところが多くある。篤自身の情けなさを痛感するばかりで憂鬱になってしまう。
篤はしまったと思った。サクラに心配をさせてしまうような事を口にしてしまって後悔した。だが既に口にしてしまった以上、取り消すことなどできない。何とか言い繕うと言葉を探しているところでサクラの言葉にもだが初めて聞く声音に篤は驚かされた。
「今……今なんて?」
聞き間違えかと思って聞き返してしまった。
『あっくんは頑張りすぎだよ。私たちを心配してくれるのはうれしいよ。でもね、あっくんが私たちを心配するようにあっくんのことを私たちは心配しているのを分かってほしいな……なんてね?』
照れくさそうに言い切った。だが篤が耳にしたのはおそらく、否――この言葉ではなかった。
だが篤には聴き返す勇気がなかった。だから記憶から消すことにした。聞こえていなかったことに――これは正しい判断だったのか迷いながらも。少なくとも今の篤には答えを導き出せない。
サクラの思いを――――
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