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一章 (日常)
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妹が朝練に出ていてしまった後の家はやたらと広く感じる。
それには理由があったりする。まずこの家には今二人で住んでいる状況だ。なら両親はどうしたとなるのが当然だ。
その答えは簡単なことで父親――天草切徒は仕事へ行くと行ったきり連絡が取れない。捜索届を出したこともあるが結果は変わらなかった。それは俺が小学四年生の時の話だ。
母親――天草柚李は言っていた。
「あの人は、必ず帰ってきます。それまでこの家を守りましょう」
子供のことを思って言った言葉なのか母親自身がすがるため、自分を保つために言ったのかは子供の俺にはわからなかった。
そんな母親は一人で家を守るために……家族を守るために働き始めた。仕事をして家に帰ってくれば家事をこなす。それを四年間続けたある日の秋のことだ。母親は仕事場で倒れた。
それからずっと母親は病院のベッドで、寝っきりの生活をしている。
俺が中学を卒業するまで親戚に助けてもらいながら生活をしてきた。
中学卒業と同時に就職をしたかったけれど妹もいたために母親の知り合いの美代子さんが経営している喫茶店で働くようになった。
これがまぁ……我が天草家が広く感じる理由だ。
「さて! そろそろ支度をしますか」
一通りの家事を済ませたところで仕事先に向かう時間が迫っている。仕事先へ向かううえで失礼のない私服に着替えて、身なりを整える。
外出の準備ができたので家を出る。
外は当然ながら寒い。今年はまだ雪が降っていない。
降らない方が助かるけど、見たいという気持ちもあったりする。
今向かっている仕事先の喫茶店は家から徒歩二十分のところにある。周りはビルばかりでオフィス街というやつだ。そんな近代的な街にポツリとある古風な喫茶店。店名は【Alice's】。ちょっとした人気店だったりする。
【Alice's】には小学生の頃から家族で何度も通っている思い出も店でもある。そんなお店で今は店員として働いているのだから何とも不思議な感じだ。
【Alice's】と看板に書かれた喫茶店に到着した。扉には【clause】と木の板がかけられている。
何の躊躇なく扉を開けて店内に入る。木の香りが出迎えてくれる。
店内は広くも狭くもない。古風なこのお店にはピッタリなサイズ。
正面にはカウンター席で作業スペースから顔をひょっこりと出す実年齢不明の見た目年齢三十中頃の女性が開店準備に取り掛かっていた。
「おはようございます美代子さん」
「おはよう。たける君」
あまりにもまぶしい笑顔に俺の心を増し掴み! 今日も綺麗だ。
なんて浸っている場合ではない。自己紹介をしていなかった。俺は天草たける以上。
特に話す内容が思いつかなかったのでこれで勘弁してください。ちなみに、チョコレートが嫌いです。
さて、早いこと着替えて準備をしなくては。
「着替えたらすぐに準備始めますね」
「今日もお願いね」
従業員の更衣室に入って、指定の服に着替える。その指定の服を着た最後にブラウン色のロングエプロンを付けて着替え完了。
見た目はまるでソムリエのようだが、一切そんな能力はない。でも必困っていることがある。それは開店すればわかることなので今は言わない。
それには理由があったりする。まずこの家には今二人で住んでいる状況だ。なら両親はどうしたとなるのが当然だ。
その答えは簡単なことで父親――天草切徒は仕事へ行くと行ったきり連絡が取れない。捜索届を出したこともあるが結果は変わらなかった。それは俺が小学四年生の時の話だ。
母親――天草柚李は言っていた。
「あの人は、必ず帰ってきます。それまでこの家を守りましょう」
子供のことを思って言った言葉なのか母親自身がすがるため、自分を保つために言ったのかは子供の俺にはわからなかった。
そんな母親は一人で家を守るために……家族を守るために働き始めた。仕事をして家に帰ってくれば家事をこなす。それを四年間続けたある日の秋のことだ。母親は仕事場で倒れた。
それからずっと母親は病院のベッドで、寝っきりの生活をしている。
俺が中学を卒業するまで親戚に助けてもらいながら生活をしてきた。
中学卒業と同時に就職をしたかったけれど妹もいたために母親の知り合いの美代子さんが経営している喫茶店で働くようになった。
これがまぁ……我が天草家が広く感じる理由だ。
「さて! そろそろ支度をしますか」
一通りの家事を済ませたところで仕事先に向かう時間が迫っている。仕事先へ向かううえで失礼のない私服に着替えて、身なりを整える。
外出の準備ができたので家を出る。
外は当然ながら寒い。今年はまだ雪が降っていない。
降らない方が助かるけど、見たいという気持ちもあったりする。
今向かっている仕事先の喫茶店は家から徒歩二十分のところにある。周りはビルばかりでオフィス街というやつだ。そんな近代的な街にポツリとある古風な喫茶店。店名は【Alice's】。ちょっとした人気店だったりする。
【Alice's】には小学生の頃から家族で何度も通っている思い出も店でもある。そんなお店で今は店員として働いているのだから何とも不思議な感じだ。
【Alice's】と看板に書かれた喫茶店に到着した。扉には【clause】と木の板がかけられている。
何の躊躇なく扉を開けて店内に入る。木の香りが出迎えてくれる。
店内は広くも狭くもない。古風なこのお店にはピッタリなサイズ。
正面にはカウンター席で作業スペースから顔をひょっこりと出す実年齢不明の見た目年齢三十中頃の女性が開店準備に取り掛かっていた。
「おはようございます美代子さん」
「おはよう。たける君」
あまりにもまぶしい笑顔に俺の心を増し掴み! 今日も綺麗だ。
なんて浸っている場合ではない。自己紹介をしていなかった。俺は天草たける以上。
特に話す内容が思いつかなかったのでこれで勘弁してください。ちなみに、チョコレートが嫌いです。
さて、早いこと着替えて準備をしなくては。
「着替えたらすぐに準備始めますね」
「今日もお願いね」
従業員の更衣室に入って、指定の服に着替える。その指定の服を着た最後にブラウン色のロングエプロンを付けて着替え完了。
見た目はまるでソムリエのようだが、一切そんな能力はない。でも必困っていることがある。それは開店すればわかることなので今は言わない。
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