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インタイ
いんたい⑨
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ゴーグルとシリコンキャップを握った右手を飛び込み台にぶつける。ベストだ。ベストなんだが、心の中の俺がこれをベストと認めたがっていないんだ。
「ありがとうございました。」
見てくれていた役員の人にお辞儀をする。そして、プールの方を向いた。
「ありがとうございました。」
この6年間お世話になったプールにお辞儀をして、俺は荷物を取りに戻った。
荷物をとって、飛び込みプールの近くの台に置き、そしてキャップを被る。
「ふぅー。」
嬉しさが半分、悔しさが半分。去年の夏に調子を落としてからここまで上げてくるのに1年もかかってしまった。
それでもタイムは伸びたんだ。中間考査を全部水泳に捧げてやってきたからこの結果になったんだと思う。でも、
「もうちょっと早いと思った。」
後悔はない。やれることを全部尽くした結果がこれなんだ。誰も恨んじゃいない。でも、もうちょっとできたんじゃないかって。そんなことを思ってしまう。
「お疲れーっす。」
「お疲れ。」
藍とそれだけ言葉を交わして、プールに入り、ダウンを泳ぐ。エキシビションとはいえレースはまだ残っているんだ。それに備えよう。
ダウンを終えて、スタンドに戻る。精一杯の笑顔を作って。
「お疲れぃ。集合するん?」
「お疲れ。」
楓は俺の顔を見て、一瞬表情が曇ったあと、すぐに笑顔になって、タイムを見せてきた。
「遅い。ペース乱れすぎ。動画めっちゃ撮りにくかった。」
「それはすまん。」
「あと…お疲れ様。最後にいいもの見せてもらったよ。集合はあとでやからとりあえず着替えてき。」
そう言われて、俺は着替えを持って裏に行った。
「あっ、ちょっと。後でにして。」
背後から楓のそんな声が聞こえてくる。
「ばーか。そんなことせんでもいいのに。」
楓のそんな優しさに感謝しつつ、俺は着替え始めた。
着替え終わってスタンドに戻ると、江住先生が帰ってきていた。
「加太、お疲れ。もうちょっとやったな。」
「なんかベストに思えないベストっす。」
荷物を置きながらそんな話をする。
「まぁ、1秒でも出たからええやん。その1秒はこの1ヶ月の加太の頑張りや。それが報われたってのが俺はめっちゃ嬉しいわ。」
「ありがとうございます。」
江住先生のそんな優しい言葉に泣きそうになる。でも、まだ1日目だ。こんなことで泣いてなんか居られない。
結局ピー也には長水路では勝てなかった。でも、これだけやったんだ。もう悔いはない。
「っし。じゃあ明日に備えて帰るか。」
先生の集合も終わって、解散となる。俺たちはまだ続く戦いに備えて一足先に帰ることにした。
「ありがとうございました。」
見てくれていた役員の人にお辞儀をする。そして、プールの方を向いた。
「ありがとうございました。」
この6年間お世話になったプールにお辞儀をして、俺は荷物を取りに戻った。
荷物をとって、飛び込みプールの近くの台に置き、そしてキャップを被る。
「ふぅー。」
嬉しさが半分、悔しさが半分。去年の夏に調子を落としてからここまで上げてくるのに1年もかかってしまった。
それでもタイムは伸びたんだ。中間考査を全部水泳に捧げてやってきたからこの結果になったんだと思う。でも、
「もうちょっと早いと思った。」
後悔はない。やれることを全部尽くした結果がこれなんだ。誰も恨んじゃいない。でも、もうちょっとできたんじゃないかって。そんなことを思ってしまう。
「お疲れーっす。」
「お疲れ。」
藍とそれだけ言葉を交わして、プールに入り、ダウンを泳ぐ。エキシビションとはいえレースはまだ残っているんだ。それに備えよう。
ダウンを終えて、スタンドに戻る。精一杯の笑顔を作って。
「お疲れぃ。集合するん?」
「お疲れ。」
楓は俺の顔を見て、一瞬表情が曇ったあと、すぐに笑顔になって、タイムを見せてきた。
「遅い。ペース乱れすぎ。動画めっちゃ撮りにくかった。」
「それはすまん。」
「あと…お疲れ様。最後にいいもの見せてもらったよ。集合はあとでやからとりあえず着替えてき。」
そう言われて、俺は着替えを持って裏に行った。
「あっ、ちょっと。後でにして。」
背後から楓のそんな声が聞こえてくる。
「ばーか。そんなことせんでもいいのに。」
楓のそんな優しさに感謝しつつ、俺は着替え始めた。
着替え終わってスタンドに戻ると、江住先生が帰ってきていた。
「加太、お疲れ。もうちょっとやったな。」
「なんかベストに思えないベストっす。」
荷物を置きながらそんな話をする。
「まぁ、1秒でも出たからええやん。その1秒はこの1ヶ月の加太の頑張りや。それが報われたってのが俺はめっちゃ嬉しいわ。」
「ありがとうございます。」
江住先生のそんな優しい言葉に泣きそうになる。でも、まだ1日目だ。こんなことで泣いてなんか居られない。
結局ピー也には長水路では勝てなかった。でも、これだけやったんだ。もう悔いはない。
「っし。じゃあ明日に備えて帰るか。」
先生の集合も終わって、解散となる。俺たちはまだ続く戦いに備えて一足先に帰ることにした。
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