魔王の娘

守 秀斗

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第8話:アンナちゃんが行方不明

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 翌日、私はまだ調子が悪い。

 けど、外出したアンナちゃんが戻ってこない。
 週一回くらい「気晴らしに行ってきます」と言って、散歩したりするがいつもはすぐに戻って来るんだけど。

 昨日、ベッドから無理矢理追い出したので、アンナちゃん傷ついたのかなあ。

 実は私は気が弱い。
 みんなには隠しているけど。

 アンナちゃんに嫌われちゃったかなあ。

 心配になった私は追跡装置で探す。
 あの『異世界街道』に行ったらしい。

 何でそんなところに?
 私は瞬間移動する。

 洞窟の入り口の前だ。
 アンナちゃんの追跡装置が付いている百合の花の髪飾りと、靴が片足だけ落ちている。
 この洞窟の中に入ったのだろうか?

 魔法で、さっと携帯ランプを出現させる。
 中に入ろうとしたら、冒険服を着た五人組の男たちが街道を登ってきた。

 頭の中を除く。
 この世界に元から居る住民だ。

「どうかされましたか。僕たちは冒険者で、この洞窟のモンスター退治を冒険者ギルドから依頼されたんですが」
「えーと、私は魔法使いのマオと言います。友達がどうもこの洞窟に入ってしまったようなんです。迷子になったかもしれないんです」
「それは大変ですね。一緒に行きましょうか」

 今日は調子が悪いし、魔王でも仲間がいるのは助かる。

「では、よろしくお願いします」

 私は冒険者たちと一緒に洞窟の中に入った。

「アンナちゃーん!」

 私は叫ぶが、誰も呼びかけには応じない。

 真っ暗の洞窟のなか、ランプを照らしながら進む。
 アンナちゃんはどこに行ってしまったんだろう。

 まさか、モンスターに喰われてしまったのか。
 心配だ。

 この洞窟には、どんなモンスターがいるのだろうか?
 思い出したぞ。

 そう言えば、この前、瞬殺した変態転移者は、この洞窟にはモンスターはいない、何も無いと言ってたなあ。
 後ろから冒険者たちがついてくる。

「ところで、どんなモンスターの退治を依頼されたんですか」

 先頭の冒険者が笑った。

「お前だよ」

 そいつは棍棒を振り上げる。
 頭に衝撃を受けて、私は倒れ込んだ。

 私は洞窟の少し広い空間で、台の上に体を括りつけられている。
 首輪に手枷、足枷。

 体を動けないようにされている。
 周りには、冒険者の連中がニヤニヤとした顔して私を見ている。

「あんたたちは、いったい何者!」
「転移者だよ」

「さっき、あんたの頭を覗いたけど、転移者じゃなかった」
「ある魔法を使って誤魔化したのさ」

 全員がゲラゲラと笑う。

「お前は悪魔の魔法使いのマオだろ。よくも、俺たちのような転移者を何人も殺しやがったな」
「確かにそうだけど、ろくでもない奴らだったからよ」
「ああ、そうかい、お前も似たようなもんじゃないのか。まあ、死ぬ前に楽しませてもらうか」


 私の脚が広げられる。
 こいつら、私を乱暴する気か。

 ろくでなしどもが。
 私は首輪と手足の枷を簡単に外す。

 魔王だからね。
 簡単よ。

 気絶したふりをしただけ。
 多少、調子が悪くても、こんなチンピラどもには負けるわけがない。

 私は腕を組んで仁王立ちになり、空中に浮かぶ。

「アンナちゃんを返しなさい。そうすれば、命だけは助けてやる」
「アンナって誰だよ」

 ボスらしき奴が言った。

 頭の中を覗いてみる。
 先程とは違い、読める。

 男が頭を触って叫んだ。

「あれ、あの野郎、魔法を解いたな」

 あの野郎とは誰の事だろう。
 どこかの魔法使いだろうか。
 うーん、その部分だけ頭の中が読めない。

 とにかく、アンナちゃんのことは本当に知らないらしい。

「私は魔王よ、十秒以内に立ち去りなさい。でないと、瞬殺します」
「なんだと、こいつ魔王かよ、やっつけろ!」

 全員で襲って来た。

 瞬殺!

 五人の首が吹っ飛ぶ。
 この、クズどもが。

 ふう、それにしても、アンナちゃんはどこなんだろう。
 洞窟の奥まで行くとアンナちゃんが倒れていた。

 私は駆け寄って声をかける。

「アンナちゃん、アンナちゃん、しっかりして」
「ああ、マオちゃん。おはようございます」

 アンナちゃんはピョンと立ち上がって、私に向かって挨拶した。
 全然、元気だ。

「何でこんなとこにいるの?」
「この洞窟の奥にアロマの香りがする植物があるって聞いたんで。探してたら、疲れて寝ちゃった」

「なんでそんなものを探していたの」
「体の調子が良くなるって聞いた。この前、マオちゃん調子悪そうだったから」
「もう、最初からそう言って城から出てよ」

 けど、私のために探してくれたのか。

「ありがとう、アンナちゃん」
「どういたしまして」

 ニコニコ顔のアンナちゃん。
 まあ、結局、見つけられなかったようだけど。
 可愛いから許す。

 頭に百合の花の髪飾りを付けてやる。
 瞬間移動で城に戻った。

「この髪飾りと靴、何で落としたの」
「覚えてない。入口近くですッ転んだけど」

 その時落ちたのか。
 まあ、いいか。
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