野球部のマネージャーの僕

守 秀斗

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第6話:勅使河原キャプテンのアドバイス

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 また、次の日。

 部活動の時に島谷先輩の様子を見る僕。でも、僕の方なんて全然見ないなあ。やっぱり勅使河原キャプテンの思い違いだろう。そして、石川先輩も僕の方を見ない。恥ずかしいのかなあと思っていたら、ちょっと目が合った。石川先輩はすぐに目をそらした。

 僕はあのホテルでの行為を思い出してうつむいてしまう。ちょっと恥ずかしい。でも、気持ち良かったなあ。久々に男の人に抱かれた。僕も男だけど。でも、やはり僕は心は女性じゃないかなあとも思ってしまう。何て言うか、相手に支配されたいって思ってしまう。僕は征服されたいの。いや、女性はそんな人ばかりじゃないだろうなあ。僕が変なだけかなあ。ああ、でも、裸になって抱き合うのって本当に気持ちがいい。後ろの穴でひとつになる。元カレとはその快感で病みつきになってしまったなあ。

 だめ、だめ、いやらしいことを考えるのはやめてマネージャーの仕事に専念しよう。今日はかなり暑い。用意していたスポーツドリンクが足りなくなりそうだ。仕方が無いので、カゴを持ってグラウンドの入口近くの自販機でペットボトルを何本か購入していると、妹の香がやってきた。

「あら、お兄ちゃん、何やってんの」
「何やってんのって、マネージャーの仕事だよ」
「あ、そうか。お兄ちゃんって野球部のマネージャーだったわね。でも、たまにお兄ちゃんもバット振ったり、守備したりしてるの見たことあるけど試合には出るの」
「無理に決まってるじゃん。僕は運動神経ないんだから」
「ふーん」

 なんだか、何か言いたげな香。

「なんだ、どうしたんだよ」
「じゃあ、なんで野球部に入ったのよ」

 それは島谷先輩の近くにいたいからとは答えられないな。

「まあ、野球が好きだからさ」
「そう言えば、中学も野球のクラブに入ってたね、お兄ちゃん」
「そういうことさ。でも、僕はマネージャーで充分だ。好きな野球の近くにいるだけで充分なんだ」

 思わず妹の前でカッコつける僕。本当は大好きな島谷先輩の近くにいるのが目的。それだけで充分、いや、充分じゃない。抱かれたい。後ろの穴で愛されたい、島谷先輩のを僕の体の中にいっぱい注ぎ込まれたい。でも、そんなことノーマルな妹には言えないな。

「じゃあね、マネージャーの仕事頑張ってね」

 妹の香はそう言って、体育館に入って行く。香の方は、バトミントン部に入部して、練習試合ですぐにエースの三年生を打ち負かして、すっかり注目の的になったみたいだ。双子なのにこの運動神経の違いは何なんだろう。僕とはえらい違いだなあ。

 さて、部活も終わり部員が全員帰宅、僕が一人でロッカー室の整理をしているとドアをノックする音がした。

「どなたですか」

 声をかけると、勅使河原キャプテンが入ってきた。

「いやあ、また新堂が何事かしてるかと思って、一応、ノックをしたんだけどな」

 なにやらクスクス笑いの勅使河原キャプテン。
 僕は顔が真っ赤になる。

「あ、あの、すみません。あんなことは二度としませんので、からかわないでください……」
「冗談だよ。それはともかく、島谷の奴なんだけど、やっぱりお前のこと見てたぞ」

 え、ほんと。
 僕はすごくドキドキしてしまう。

「それで考えたんだけどさあ、大会まで島谷には何も言うなってことを俺は言ったよなあ」
「ええ」
「ちょっと考え直したんだ。これも前に言ったけど、人生なんてあっという間だ。青春もあっという間。そんなわけで、どーんと島谷に告白したらどうだ」
「え、でも……」
「おっと、ただ条件があるなあ。もし告白するなら、石川との関係を清算しろよ。つーか、考えたんだよ。俺としてはなあ、この時点でもしも島谷の方からお前に告白したら、石川と島谷がお前を争うってことになるじゃないか。それはまずいんだよなあ。島谷がエースピッチャーで石川はキャッチャー。バッテリーの関係が悪くなるとまずいじゃないか。チームワークが乱れてしまう」
「はあ、でも……島谷先輩が僕のことを好きとは限らないじゃないですか」
「言われてみたらそうか。でも、じゃあ、何でお前のこと見てたのかなあ。まあ、やっぱり大会が終わるまでは、島谷には、お前から何も言わない方がいいかな。まあ、島谷も大会が終わるまでは何も言わないだろう、お前のことが好きでも」
「そう思います……」
「わかった、じゃあ、俺は帰るから、今日は島谷のロッカーに向けて出すなよ。いや、してもいいけど、ちゃんときれいにしておけよな」
「しませんよ!」
「冗談だよ」

 クスクス笑いでロッカー室を出て行く勅使河原キャプテン。もう、他人の事だと思って、ふざけてるのかと思ったけど、勅使河原キャプテンなりにチームのことを心配しているんだろうとも思った。

 それにしても、島谷先輩が僕のことを好きなんてありうるのかなあ。勅使河原キャプテンの勘違いじゃないのかなあ。ただ、僕は島谷先輩が大好きなのは事実なんだ。大会が終わったら告白しよう。でも、そうすると石川先輩のことはどうしようかと悩んでしまった。嫌いじゃないんだけど、抱かれている時に妄想していたのは島谷先輩。これは石川先輩に失礼じゃないかとも思ってしまう。はっきりと言うべきかどうか。でも、抱かれた時は気持ち良かったなあと思い出してしまった。抱いてほしいなあって、マジに僕はいやらしいなあ。

 家に帰って、悶々とする。でも、やはり石川先輩には、はっきり言った方がいいなあというのが僕の結論だったのだけど、その時は。
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