人生について考える

守 秀斗

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11.中学校の卒業アルバム

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 五十才で早期退職した。
 体を壊してしまったからだ。

 今は元気なのだが。

 四十才頃からおかしくなってしまった。
 いろんな病院に行ったが原因がよくわからない。
 
 結局、精神科に回される始末。
 そして、適当に精神薬を処方された結果、ますます体調不良になった。

 精神科医ってのは、無能だな。
 患者を薬漬けにしているだけだ。
 医者の中の落ちこぼれが精神科医になるって悪口を聞いたことがあるが、俺としては事実だと思う。俺にも出来るぞ、適当に薬出しているだけなんだから。

 AIにまかせた方がいいんじゃないのか。
 薬もコンビニで売ってくれ。
 無意味な三分ほどの会話で金を取って、適当に薬をばらまくだけの精神科医。
 
 俺は精神科にいくのをやめた。
 離脱症状に苦しんだ。

 でも、早期退職していたおかげで何とか乗り切った。
 仕事しながらじゃあ、無理だっただろう。

 さて、何とか調子が良くなったのだが、ヒマになってしまった。
 割り増し退職金や、今までの貯金で何とか暮らせていけそうだがな。

 年金はちょっとあてにならないけど、今までの貯えがある。
 独身なんでな。

 しかし、退職すると人間関係がバッサリと無くなってしまうなあ。
 昔の友人とは年賀状での関係だけだ。しかも、三人。
 今の若い人たちは年賀状なんて出すのだろうか。

 しかし、自分が体調を治すために精神薬を飲んだあげくに、その精神薬自体に苦しめられるとは思いもしなかったなあ。

 人生、先の事はわからないなあ。
 そんな風に思いながら、汚くしていたマンションの部屋を整理していると、中学の卒業アルバムが出てきた。高校や大学のは無いなあ、変だなあとよく考えてみると実家に置いてあることに気付いた。なんで中学のアルバムだけ持ってきたんだっけ。

 まあ、いいか。ちょっと中を見てみる。同級生たちの集合写真。みな若いなあ。十五才だもんなあ。三十五年前だ。この頃は病気ひとつしなかったなあ。虫歯くらいか。そして、俺はおとなしいグループだったが、それなりに楽しんだな。いや、当時は勉学などにそれなりに悩んでいたりもしたが、仕事に比べたらなんてこともない悩みだったような。

 そして、俺はパソコンを立ち上げる。目ぼしい奴を何人か検索してみた。誰か有名になった奴はいるだろうか。しかし、全く出てこない。まあ、それぞれ普通の人生を過ごしているのかなあと思っていると、一人、ブログをやっているのを見つけた。無職で酒浸りの生活をしているようだ。

 この人、確か、スポーツ万能で勉強も出来て、クラスの中心的存在だったなあ、そして、なかなか性格もよくて、大人しい俺にも気軽に声をかけてくる生徒だった。確か、生徒会長もやってたなあ。女子生徒にも人気があった。

 しかし、今や、すっかり落ちこぼれているではないか。何があったか、そのブログではよくわからなかった。とりとめのないことしか書いてない。しかし、やたら酒瓶の写真をアップしてる。アル中かよ。中学時代はあんなに明るかったのに暗いことばかり書いているなあと読んでいたら、最後に家族の書き込みで終わっていた。五年前に亡くなっていた。全然、知らなかったなあ。

 他にもう一人検索で出てきた。大企業のホームページで役員の一人として紹介されている。五十才で役員か。しかも、その役員の中で最年少だ。出世したもんだなあ。この生徒は、全然目立たない、友人も少ないし、いつもおどおどしていたのを覚えている。しかし、その大企業のホームページには自信満々の笑顔の写真と華麗な経歴が載っている。窓際で終わった俺とは大違いだな。

 人生とはわからないものだなあ、先のことなんて全くわからない。

 そして、今度は女子生徒が検索で出てきた。俺の隣に座っていた女子生徒。大人しくて人気の無い俺になぜかやたら話しかけてきたなあ。美人でクラスで人気があった。なんで、あんなに話しかけてきたのか。からかっていただけか。その女性は陶器の展覧会で出品者として写真が載っていた。素人の展覧会で別にたいしたことはなさそうだが。写真を見るとさすがに老けている。

 そこで、思い出した。この女子生徒さんとは大学時代に、偶然、道で会ったんだよなあ。向こうも俺のことを覚えていた。でも、ちょっと挨拶しただけで終わり。しかし、俺はその後も忘れられず卒業アルバムで電話番号を調べて、連絡しようとしたんだっけ。でも、結局、やめた。なんで連絡しなかったのかなあ。臆病だったからか。相手が迷惑がるのが想像されたからかなあ。やれやれ。情けないね。

 再度、その展覧会の写真を見る。老けたとは言え、美人の面影があるなあ。この展覧会に行ってみるかなあ。しかし、場所が遠いな。それに最後に会ってから三十年経っている。今さら会いに行ってもしょうがないか。

 でも、あの大学時代に連絡したら、何かしら進展があったかもしれないなあ。単なるもてない男の妄想かもしれないけど。

(終)
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