人生について考える

守 秀斗

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15.何の才能もない

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 ブラック企業で身体を壊し、辞めざるを得なくなった。
 その後、安アパートでぐったりとしている。

 つまらない仕事だった。
 本当はクリエイティブな仕事をしたかったんだがなあ。

 実際は単なる事務職。
 全く創造性もない、つまらない仕事だった。
 営業よりはマシだったけどなあ。
 しかし、サービス残業の連続でついに体をぶっ壊してしまい、辞めざるを得なくなった。

 わずかな貯金を取り崩しながら生活。
 そろそろ働かなくてはいけない。

 しかし、正直言って、体の方がまだ本調子ではない。
 それに、もう四十歳近い。

 面接行っても不採用の連続。
 こんな、故障品のおっさんより、元気な若い連中が先に採用されるのは当たり前だな。
 しかし、少しでも何かお金を稼がねば。

 しかし、俺は頭が悪いし、コミュ障に近い、独身男。
 外見もダメ。何か特殊な資格を持っているわけでもない。

 最近は家の外に出るのも億劫だ。

 自宅で出来る仕事はないのか。
 しかし、それこそ特別な技能を持っている人じゃないと生活なんて出来ないだろう。
 と言って、今から新たに何か勉強するにも、頭がかなり回らなくなってきている。

 疲れてきた。
 趣味と実益を兼ねることは出来ないかなあと大それた妄想をする。

 どうしたものか。

 しかし、人間、何かしら取柄があるものじゃないのか。
 そして、今まで経験したものでお金を稼いで何とか生活できないだろうか。

 そうだ、俺は読書が大好きだ。
 今まで、純文学、推理、恋愛、ファンタジー、ホラー、SF、歴史、ノンフィクション、ビジネス書からポルノ小説まで、五千冊くらい読んでるぞ。

 そして、今、ネットではアマチュア作家の投稿サイトが大流行している。
 昔は、出版社に持ち込みとかいろいろと面倒だったが、今や自宅で投稿できる。
 よし、この五千冊の読書経験を活かして、作家になるぞ!

 そう、思い立ったのだが、いざ、書こうとしたら全然書けない。
 一行も書けない。

 たったの一行も書けない。
 マジに全く書けない。

 どうなってんだ。
 あの、五千冊の読書経験はいったい何だったんだろうか。

 よく考えてみる。

 これはプロ野球に選手として試合に出場するのと、テレビで観戦しているのとは全然違うのと一緒ではないだろうか。
 
 いくら五千冊読書をしようが、実際に書いた事なんて一度もない。
 そりゃ、小説を書けるわけないよな。

 しかし、俺は創造的な仕事をしたいのが夢だったんだ。
 何とかして自力で考えるしかない。

 やっぱり、何事も練習が必要か。
 しかし、アラフォーだと急激に体力も知力も無くなっていく。

 練習している間にあの世ってこともありえるな。
 ただ、このまま野垂れ死にはしたくない。

 少しでもいいから自分が生きていた証拠を残したいものだ。

 よし、投稿サイトに残せばいい。
 サイトが潰れれば消えちゃうけど。

 俺は短編をうんうんと唸って考えながら、なんとか書き上げた。
 題材は俺の好きなホラー小説。
 ドキドキしながら、ネットのサイトに投稿する。

 予想通り全く読まれないし、感想なんて全くつかない。
 多少、PVはついたが斜め読みしただけだろう。
 所詮、俺には才能なんてない。

 がっかりしてふて寝する。
 もう就職はあきらめて、とりあえずバイトでもするか。

 アラフォーでもバイトなら、まあまあ仕事はあるからな。

 清掃のバイトをすることになった。
 かなり賃金は安いが仕方がない。

 さて、ある日、ふと俺が投稿した小説がどうなっているか見てみた。
 おお、何とお気に入りに二名が登録している。

 ほんの数人でも読んでもらえるとうれしいものだ。
 しかも、お気に入りにしてくれた。
 もう少しバイトをしながら小説の勉強をして頑張ってみるかなと俺は思った。

 まあ、お気に入りに登録しても読んでいるかどうかわからないけどな。

 けど、クリエイティブなことをしているという満足感もあるんだな。
 別に職業小説家になる必要もない。
 
 そう言えば、清掃員をしながら延々と長編を書き続けていた人がアメリカにいたなあ。
 死ぬまで世間には作品を発表しなかったようだ。

 死後に発見されて、今や、その長大な小説は博物館に展示されているらしい。
 俺もそれでいいや。
 
 まあ、ネット投稿はするけどね。

(終)
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