愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

文字の大きさ
56 / 139

52

 この寮の食堂もたくさんメニューがあった。
 名前からだとどんな物なのかわからないし、どのくらいの量かもわからない。多すぎて食べきれなかったら申し訳ないし、値段が低ければ量もそれに比例するだろうと、昼同様、値段の1番低い物にすることした。

「本当にそれでいいの?」
「うん。…はい」

 気を抜くと敬語が抜けてしまって焦る。周りに人もいるから注意しないと。周りの人に聞かれて、シエロに迷惑を掛けてしまったら嫌だ。

 2人で注文し、料理を受け取り、先ほどの席に戻る。
 ソラナはその間にいなくなっていた。なぜかその席の周りは人も少なくなっていて、喧騒から離れている。やっと肩の力が抜ける感覚がした。他の席はどこもいっぱいなのに、どうしてここだけそうなっているのかわからなかったけれど、僕にとってはありがたかった。
 それにこのくらい他の人と距離があれば、シエロと普通に話していても聞こえないだろうと判断し、今だけ普通に話すことにした。

「本当にそれだけで足りる?」
「うん、大丈夫だよ」

 心配そうな顔をしたシエロが僕に聞いてくる。この問いは、席に着くまでにも何回かされている。大丈夫と言っているのだが、シエロはずっと心配しているようだ。
 値段は気にしなくていいんだよ、と言ってくれたが、気にしていないと言ったらうそになるが、気にしているのはそれだけではないし、僕が頼んだものはサンドイッチとスープのセットで、これであれば僕のお腹は膨れる。だから、本当に大丈夫と説得したと思ったが、できてなかったみたいだ。

 いただきます、と2人で言って食べ始めた。
 お昼の時も思ったが、ここの学園のご飯はおいしい。サンドイッチのパンはふわふわで、中に挟まっている物もたくさんあって、すごくおいしい。

「テオ、はい」

 ふいに、シエロが僕の目の前にフォークを差し出してくる。そのフォークの先にはシエロが頼んだおかずがある。どうしたんだろう、と疑問に思ってシエロを見つめる。

「ほら、口開けて?」

 あー、と言いながらシエロが口を開ける動作をしてくる。その意図が読めないが、とりあえず同じ動きをしてみる。

「あー」
「ん」

 僕の開けた口へそのフォークを入れられて驚いたがシエロが口を閉じる動作をしたため、それに倣って、反動的に僕も口を閉じてしまう。フォークは取り除かれて、口の中にはおいしい焼き魚が残った。

「どう?おいしい?」

 食べろということかと理解し、咀嚼する。柔らかくて、ふわふわで、おいしい。
 口に物が入っていてしゃべれないので首を縦に振っておいしいと伝える。こんな魚は初めて食べる。おいしい。自然と頬が緩む。

「よかった。シエロは細いから心配になるんだ。無理に食べろとは言わないけど、もしよかったらこれ、もう少し食べない?」
「…じゃあ、もう一口、もらってもいい?」
「もちろん」

 こんなわがままいいのかな、とも思ったが、そう僕が言ったらシエロは嬉しそうに、また一口僕にくれた。シエロと食べるご飯はおいしくて、幸せってこのことなのかな、なんて漠然と思うくらい、その時間は本当に嬉しくて、楽しかった。
感想 42

あなたにおすすめの小説

記憶を失っている間に推しの婚約者になっていました

由香
BL
事故で記憶を失っていたルカは、ある日突然思い出す。 ここが前世で夢中になっていた恋愛ゲーム世界だということを。 しかも自分は、最推しだった第一王子アルベルトの婚約者になっていた。 甘すぎる距離感。 慣れたように落とされるキス。 そして見え隠れする、王子の重すぎる執着。 忘れていた恋を、もう一度始める貴族学園BL。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

可愛いは有罪

零壱
BL
───「可愛い」とは理性を狂わせる「罪」である。 美貌・頭脳・魔法に剣の腕前まで完璧な公爵子息リオハルト・ユーグリウスには、ただ一つ、致命的な欠点があった。 それは─── “かわいげ”がないこと。 鉄面皮、超合金と揶揄されるほど動かぬ表情筋。 圧倒的合理主義からくる感情の伝わらない言動。 完璧すぎて、人間味が壊滅的だった。 父侯爵にも匙を投げられたリオハルトは、己を変えようと一念発起。 学園の中庭で“可愛いとは何か?”を観察し続けること、一カ月。 数多の生徒の中でただ一人、リオハルトが“可愛い”と刮目したのは───騎士科の平民、ジーク。 弟子入りを申し出たその日から、ジークの前でだけリオハルトの完璧な理性が音を立てて崩れていく。 理性で“かわいげ”を解明しようとしては惨敗するポンコツ貴族(受)と、不屈の忍耐でそれを受け止める平民(攻)。 クスッと笑えて、気づけば胸を撃ち抜かれている。 理性崩壊系・文学ラブコメ、堂々開幕。 ※他サイトにもタイトル話、二話目、三話目のみ再掲。 ※二年前の作品です。改稿しようとして断念しました。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!