愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「あら、ようやく帰ってきたのね?お久しぶり、お兄様」
「……お、久しぶり、です」

 やっぱりこの人たちと話すのは怖くて、言葉が詰まる。目を見れない。

「長期休暇も家に帰ってこないんですもの……その間、何をしていたのかしらねぇ」
「……ぇ……と、あの……」
「今日はお兄様にお話があってきたの。ここでは話しづらいし、お部屋に入れてくださるかしら」

 入れたくなかった。何をされるかわからない。それに、シエロにもあまり二人きりになるなって言われていたから。でも、僕はこの人の言うことを断れない。それはずっと昔から体に染みついていて、もう変えることはできない。

「……どう、ぞ」

 そう言って扉を開けるとエミリアは部屋に入ってくる。
 エミリアは僕の部屋にぐるっと目線をやるとため息をついて僕に向き直った。

「あなた、シエロ殿下と婚約されたというのは本当の話しなのかしら?」
「……どうして、そんなことを、聞いてくるのですか?」
「質問に質問で返さないでいただけるかしら?まぁ、それが本当のことだとしても、それもきっと今の内だけよ」
「……そんなこと、ありません」
「あなたなんかに、王族の方が本気になるわけがないでしょう?国との関係を保つためにもきっと強く断ることができなくて関係を続けてくれているの。あなたに対して好意なんて一ミリもないのよ?そんなこともわからないのかしら……」
「……っそんな、こと、ありませんっ」

 シエロが、僕にくれる気持ちは全部本物で、温かくて、僕にたくさん愛情をくれるのに、そんなことを言うなんて。どうしても許せなくて、僕は声を荒げて否定した。

「シエロが、僕にくれるものは、愛情は、全部本物ですっ。それを、そんな風に……言わないで、くださいっ」
「……大きい声を出さないでくださる?馬鹿みたいに信じちゃってかわいそうに……まぁ、本物かどうかなんてどうでもいいの。どうせこれからすべて壊れるんだから」
「…………え?」
「噂を流すのが、こんなにうまくいくなんて……。あなたが今までも、あの時もずっとあの方と一緒にいてくれたからこそ、ここまでうまくいったのかもしれないわね。それだけは感謝するわ」
「……壊れるって、どういう、意味ですか?」
「見ていたらわかるわ……あははは!……はぁ、おかしい。話はこれで終わりよ」

 エミリアは何がそんなに面白いのか声を上げて笑って、僕の横を通り、扉を開ける。それと同時に、息を大きく吸う音が聞こえた。

「――だ、誰か!誰か、来てくださいっ」

 僕は、これからいやなことが起こると、その声に確信した。
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