インキュバス

フランク太宰

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インキュバス

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  暗い六畳の部屋で二人の男達が他愛もない話をしている、タバコの煙が部屋に充満し、カビ臭い。この世の釜のそこを除こうと思えば、彼らが見えるかもしれない。彼らは共に言葉数多くはない奴だが、その人生振り返れば共に、優しさと光のないものだった。であるから彼らは釜の底にいる資格がある、何処にいようと、資格は必要なのだ。例え、それが臭く 最悪な場所でも。この話では最悪な場所で、そこにいる資格を持つ男達が会話する。現在、過去、未来、常に紳士淑女でハイライトの当たるの皆様には御見せできない品物であり、この物語を読む資格のある人は、そう、一度は釜の底にいたことのある方々に限られる。

・部屋で男と男が
「良い女知らない?」
「まずは、歯を磨けよ」
「うるせぇよ、磨いてるわ、毎日」
「三回磨け、毎日」
「なんで三回?」
「毎食後だろ」
「毎日、きっちり朝夕晩、飯を食う柄じゃないだろ俺たち」
「一緒にするなよ、俺はできることなら、規則正しい生活をしたいと思ってる」
 「臭い男が規則正しいのは気色悪くないか?」
「臭くて不規則だったら、救いがないだろ。臭いだけなら、まー病気ということもありえる」
「病気な...」
  部屋のテレビからは、"どうでもいい"報道番組が流れている。年増の女アナウンサーが今日の重大ニュースを読み上げる。
「なーこのニュース知ってるか?
薬やった俳優の」
「ああ、ネットでみた。知らない俳優だ、興味ないね」
「まー確かに」
「そういえば、変な話を聴いたよ」
「誰から?」
「Sだよ、事務の」
「ほーう、仲良いのか?」
「悪くはねぇよ、Kさんと三人で飲みに行ったんだよ、歓迎会の後」
「なるほどな、俺が夜勤の時のやつか」
「そう、お前、知ってるだろうけどKさんSに気があるだろ、だから飲みに行ったんだよ」
「なんでお前が一緒なんだよ?」
「そりゃ、Kさんと仲良いのって俺ぐらいだろ」
「知ってるけどよ、あの人も意気地がないよな」
「確かに」
「で、どうだったんだよ?」
「特になにもなかったようだ、Kさんは泥酔したSを自分家まで運んだらしい。でもなにもしなかったらしいよ、まー少なくともKさんの気持ちは、Sに気持ち悪い位に伝わったんじゃないか」
「上手に生きれない男っていうのは、情けないよな」
「ところで、お前はどうなのよ、Sのこと」
「気が強いばっかりで、可愛いげがない奴だよ」
「嫌いじゃないんだろ?顔は悪くないしな」
「顔もタイプじゃない」
「贅沢なこと言うよな、お前って」
「質素な考えに至らないのが、男ってもんだろ。まーでよ、そろそろ本題に入らせろよ」
「本題ね、女の話でこれ以上重要なことも無いだろう」
  男は男の揚げ足を無視した、揚げ足の取り合いはテレビの中の政治家連中のフリークス ショウを見ることで、満たされている今日この頃だ。
「Sはあの時、すでに結構、酔っぱらっていて、支離滅裂な話をしていた。もっとも、一通り上司の悪口を言ったあとにな。で、彼女はボックスに入った楊枝の束をみて言ったんだよ"最近、唇に楊枝をさされたって"」
「誰に?」
「同じ事を彼女に言った、そしたら男に刺されたって言い出しやがった、だから俺もKさんも、どういうことなのか聞き出したさ、酔った女に尋問して。
でもおかしな話だろ、彼女が唇に楊枝が刺さって仕事してるの見たことあるか?
穴を隠すのにピアスしてるのも包帯巻いてるのも見たことない」
「別に貫通したとも限らないだろ、お遊び半分でやったのかもしれない、そういうのが好きな奴もいるからな」
「ああ、御名答。確かに変な奴もいる、Sも含めてな。でもそういうことじゃなかったんだ、今回に限っては」
 男は話を続け、もう一方の男も素直に聴く姿勢を続けた。
「Sはこう言った"彼は裸の私の唇にグサと楊枝を刺したの、彼はイケメンの中のイケメンでサデスティックの王子さまなのよ、真夜中から朝方に来るの、きっと次は抱き合いながら私を絞め殺してくれる"そこまで言って彼女は寝始めた」
「まさか、夢話か?」
「まー夢だろうな少なくとも俺らの生きる世界では」
「確かにイカれた女だ。ただ泥酔していたんだろ、何の意味もない妄言だ」
「そうだろうな、でも正直なところの気もする、彼女のな」
「色々あるんだろ、色々」
「なぁ、色々あるのは誰のせいだと思うよ?」
  そして一人の男はテレビの画面を指差した。




 
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