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第三話 魔者の花嫁編
3ー6 ユウジョウ ト ヤキモチ
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「オレ、カッコ悪かったよな」
ジュールに見つめられ、レオがハハ、と力なく笑う。
この明るい水色の瞳にこれまでの自分を見られていたのかと思うと、死にたくなるほど恥ずかしかった。
(オレは色々、全部、カッコ悪かった)
大きな目に、レオが映っている。
弱っちくて、すっげーダッセー奴がそこにいる。
(でも、この目に映っているのが、本当のオレだ)
例え情けなくても、みっともなくても。
これがオレなんだ。
「マスターが、ランス先輩に言った言葉、覚えてる?」
瞳にレオの姿を映しながら、遠慮がちにジュールが口を開く。
ーー未熟だとわかっているなら、強くなる余地はある。
それは、強くなりたいと望む者、全員の背中を押してくれる言葉だった。
「オレ、強くなるよ」
気負わず、粋がらず、だが、力強くレオは約束する。
「強くなって、ジュールの友達だって胸張って言えるようになる」
レオがやけに大人びて見えたのは、ジュールの気のせいだろうか。
「今だって、胸張って言ってよ」
「ダメ。もっと強くなってから」
「ええ~、それ、ボクが凹むんだけど」
ジュールは拗ねるが、しばらく待ってもらわなければ。
「見ててくれ、ジュール」
レオは晴れやかに笑った。
「うんと強くなって、お前を驚かせてやる!」
カーテンが揺れる。
相変わらずうるさいセミの声に、ジュールの声が混じった。
「……ボクだって、全然ダメダメだよ」
ジュールが決まり悪く呟く。
「どこがだよ。ジュールはずっと、真面目に頑張ってるじゃンか」
「それは、単にボクの性格の問題」
なんの冗談かと思ったが、俯いたジュールは笑っていなかった。
「……ボクね、実は迷ってたんだ」
「………」
「ボクは、魔法使いに向いてないんじゃないかって、ずっと思ってた。魔法使い、辞めようかなって考えてたんだ」
後ろめたそうに告白するジュールに、やっぱり、と後悔の念がレオに押し寄せる。
フレデリクの話に、学生時代の記憶がいくつも甦った。
ジュールがどれだけ良い成績を収めようと、レオールだから、あの双子の弟だから、そう言ってジュールの頑張りや努力は認められなかった。
それどころか、レオールだから当たり前、あの二人の弟だから当たり前と、やっかみでしかない陰口をどれだけ言われてきたか。
(なンで、あの時もっと守ってやれなかったンだ!)
己の不甲斐なさを呪い、今度こそはと、レオは身を乗り出した。
「兄貴や姉貴と比べるな! ジュールはジュールだ!」
勢い込むレオに、ジュールはうん? と可愛らしく小首を傾げる。
「兄さんや姉さんとはよく比べられるけど、違う人間なんだから、違うに決まってるよね?」
ヘラリと笑うジュールに、レオはおおいに肩透かしを食らった。
(あ、あれ……?)
「おんなじだったら、逆に怖くない? 他人を比べる人って、謎だよね~」
「あ、うン……そーだな……」
風船が萎むように勢いが消え、浮いた腰が所在無げにベッドに戻る。
(そうだった! こいつは、こういう奴だった……っ!)
一見弱々しいが、ジュールは柳のように柔らかく、決して折れない精神の持ち主だった。
先走った自分が恥ずかしい。
「でも、心配してくれてありがとう」
その不意打ちの笑顔に耐えられず、レオはさり気なく窓の外に視線を転じた。
「あのね、ボクにはみんなみたいに、強い意志も立派な志もなくて、それこそレオールだから魔法使いになったようなもので。こんなボクに、黒のローブを着る資格はあるのかなって思ってたんだ」
亜麻色の髪が、風に揺れている。
どこか他人事のように、ジュールは続けた。
「ボクなんかが魔法使いでいいのかなって、そう思ってた」
レオは、言葉が出てこなかった。
ずっと一緒にいたのに、気付いてやれなかった己の不甲斐なさが腹立たしい。
「でも、それ、間違ってた。ボクは、魔法使いに向いてた。殿下が、それを教えてくれたんだ」
「ふーーーーーン」
なんだか含みのある返事をされ、ジュールがレオを見れば、さっきまでの笑顔が嘘のようになんだか不機嫌である。
(そンなの、オレだって相談されれば、いくらだって言ってやるけど?)
でも、ジュールが相談相手に選んだのは、親友であるレオではなくロワメール王子だった。
「仲良いよね、最近」
「うん! やっとジュールって、名前で呼んでいただけるようになったんだ!」
へへ、と嬉しそうに笑うジュールに、なんだろう、苛立ちを覚える。
「へー、そー。よかったね」
棒読みで返し、レオはイライラと指でシーツを叩いた。
何故だか無性に面白くない。
「それは嫉妬だな」
「ヤキモチってやつよね~」
まるで心を見透かしたような少女達の言葉に、レオはギョッとした。いつこらそこにいたのか。
「リーズ!? ディア!? ちょっ、お前らなに言って……!」
「ヤキモチ?」
ジュールが、意味がわからずに繰り返す。
「レオったら、ジュールが王子様と仲良いから、ヤキモチ妬いてるんだって」
「ち、違う!!!」
ディアにとんでもないことを言われて焦るが、レオの否定は虚しく空を彷徨った。
「え~、そうなのぉ? やだなぁ、レオったら」
当のジュールにも笑われてしまう。
「違うっつってンだろ!」
「これまでも、これからも、レオがボクの一番の親友だよ」
「………っ」
可愛いことを可愛い顔で言われ、レオが絶句する。
(この天然がっっっっっっ!!!!!!!)
顔が赤くなるのを必死に耐えるレオの苦労など素知らぬ顔で、ジュールが席を立った。
「ボク、飲み物用意するね~」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
❖ お知らせ ❖
読んでくださり、ありがとうございます!
3ー7 青春迷走 は7/26(金)の夜に投稿を予定しています。
ジュールに見つめられ、レオがハハ、と力なく笑う。
この明るい水色の瞳にこれまでの自分を見られていたのかと思うと、死にたくなるほど恥ずかしかった。
(オレは色々、全部、カッコ悪かった)
大きな目に、レオが映っている。
弱っちくて、すっげーダッセー奴がそこにいる。
(でも、この目に映っているのが、本当のオレだ)
例え情けなくても、みっともなくても。
これがオレなんだ。
「マスターが、ランス先輩に言った言葉、覚えてる?」
瞳にレオの姿を映しながら、遠慮がちにジュールが口を開く。
ーー未熟だとわかっているなら、強くなる余地はある。
それは、強くなりたいと望む者、全員の背中を押してくれる言葉だった。
「オレ、強くなるよ」
気負わず、粋がらず、だが、力強くレオは約束する。
「強くなって、ジュールの友達だって胸張って言えるようになる」
レオがやけに大人びて見えたのは、ジュールの気のせいだろうか。
「今だって、胸張って言ってよ」
「ダメ。もっと強くなってから」
「ええ~、それ、ボクが凹むんだけど」
ジュールは拗ねるが、しばらく待ってもらわなければ。
「見ててくれ、ジュール」
レオは晴れやかに笑った。
「うんと強くなって、お前を驚かせてやる!」
カーテンが揺れる。
相変わらずうるさいセミの声に、ジュールの声が混じった。
「……ボクだって、全然ダメダメだよ」
ジュールが決まり悪く呟く。
「どこがだよ。ジュールはずっと、真面目に頑張ってるじゃンか」
「それは、単にボクの性格の問題」
なんの冗談かと思ったが、俯いたジュールは笑っていなかった。
「……ボクね、実は迷ってたんだ」
「………」
「ボクは、魔法使いに向いてないんじゃないかって、ずっと思ってた。魔法使い、辞めようかなって考えてたんだ」
後ろめたそうに告白するジュールに、やっぱり、と後悔の念がレオに押し寄せる。
フレデリクの話に、学生時代の記憶がいくつも甦った。
ジュールがどれだけ良い成績を収めようと、レオールだから、あの双子の弟だから、そう言ってジュールの頑張りや努力は認められなかった。
それどころか、レオールだから当たり前、あの二人の弟だから当たり前と、やっかみでしかない陰口をどれだけ言われてきたか。
(なンで、あの時もっと守ってやれなかったンだ!)
己の不甲斐なさを呪い、今度こそはと、レオは身を乗り出した。
「兄貴や姉貴と比べるな! ジュールはジュールだ!」
勢い込むレオに、ジュールはうん? と可愛らしく小首を傾げる。
「兄さんや姉さんとはよく比べられるけど、違う人間なんだから、違うに決まってるよね?」
ヘラリと笑うジュールに、レオはおおいに肩透かしを食らった。
(あ、あれ……?)
「おんなじだったら、逆に怖くない? 他人を比べる人って、謎だよね~」
「あ、うン……そーだな……」
風船が萎むように勢いが消え、浮いた腰が所在無げにベッドに戻る。
(そうだった! こいつは、こういう奴だった……っ!)
一見弱々しいが、ジュールは柳のように柔らかく、決して折れない精神の持ち主だった。
先走った自分が恥ずかしい。
「でも、心配してくれてありがとう」
その不意打ちの笑顔に耐えられず、レオはさり気なく窓の外に視線を転じた。
「あのね、ボクにはみんなみたいに、強い意志も立派な志もなくて、それこそレオールだから魔法使いになったようなもので。こんなボクに、黒のローブを着る資格はあるのかなって思ってたんだ」
亜麻色の髪が、風に揺れている。
どこか他人事のように、ジュールは続けた。
「ボクなんかが魔法使いでいいのかなって、そう思ってた」
レオは、言葉が出てこなかった。
ずっと一緒にいたのに、気付いてやれなかった己の不甲斐なさが腹立たしい。
「でも、それ、間違ってた。ボクは、魔法使いに向いてた。殿下が、それを教えてくれたんだ」
「ふーーーーーン」
なんだか含みのある返事をされ、ジュールがレオを見れば、さっきまでの笑顔が嘘のようになんだか不機嫌である。
(そンなの、オレだって相談されれば、いくらだって言ってやるけど?)
でも、ジュールが相談相手に選んだのは、親友であるレオではなくロワメール王子だった。
「仲良いよね、最近」
「うん! やっとジュールって、名前で呼んでいただけるようになったんだ!」
へへ、と嬉しそうに笑うジュールに、なんだろう、苛立ちを覚える。
「へー、そー。よかったね」
棒読みで返し、レオはイライラと指でシーツを叩いた。
何故だか無性に面白くない。
「それは嫉妬だな」
「ヤキモチってやつよね~」
まるで心を見透かしたような少女達の言葉に、レオはギョッとした。いつこらそこにいたのか。
「リーズ!? ディア!? ちょっ、お前らなに言って……!」
「ヤキモチ?」
ジュールが、意味がわからずに繰り返す。
「レオったら、ジュールが王子様と仲良いから、ヤキモチ妬いてるんだって」
「ち、違う!!!」
ディアにとんでもないことを言われて焦るが、レオの否定は虚しく空を彷徨った。
「え~、そうなのぉ? やだなぁ、レオったら」
当のジュールにも笑われてしまう。
「違うっつってンだろ!」
「これまでも、これからも、レオがボクの一番の親友だよ」
「………っ」
可愛いことを可愛い顔で言われ、レオが絶句する。
(この天然がっっっっっっ!!!!!!!)
顔が赤くなるのを必死に耐えるレオの苦労など素知らぬ顔で、ジュールが席を立った。
「ボク、飲み物用意するね~」
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