やさしい魔法使いの起こしかた

青維月也

文字の大きさ
139 / 218
第三話 魔者の花嫁編

3ー42 魔法学校ってどんなとこ?

しおりを挟む
「そう言えば、ジュールはランスを先輩って呼んでるけど、それは水使いの先輩だから?」
 ロワメールがふと、かねてから疑問だった質問をする。

 水色の裏地を持つランスは、水と風の二色持ちだ。土使いのように、同属性として仲間意識が強いのかと思ったが、ジュールは首を振った。

「いえ、魔法学校の先輩だからです。慣例的に、同じ校舎で学ぶ二個上の上級生までを先輩と呼ぶんです」
「へー」
 魔法使いの裏事情に、ロワメールは好奇心を刺激される。

「今もですけど、学生の時も親切にしてもらいましたし、模擬戦の相手もよくしてもらっていたので、ボクは親しい先輩だと思っています」

 ジュールは入学当初から、周りから頭ひとつ飛び抜けていた。エリートになるのは確約されており、二色持ちのランスもそれは同じである。おのずと、二人の距離は近くなった。

「模擬戦? 魔法学校では、そんな実践的なこともしているのか?」
 ジュールの言葉に、別の意味でセツが驚く。

 徒弟制度が一般的だったセツの子ども時代に魔法学校はなく、知っていることは魔力のないノンカドーとかわらない。

 魔法学校入学は十三歳。模擬戦をするにはいささか早い気がした。

「模擬戦を本格的にするのは、高等部になってからです。戦闘職志望の生徒が、選択授業で選ぶ実践魔法の授業で……」
 そこまで続けて、セツとロワメールが話しについてこれてないのをジュールは理解した。

 そこで、魔法学校についてザックリと説明する。
「まず魔法学校と一口に言っても、初等部と高等部に分かれています」

 魔力を持った十三歳から十八歳の子どもたちが、魔法使いになるため通う全寮制の学校、それが魔法学校である。
 全国に一校のみ、ユフ島のギルド本部に併設されており、皇八島中から魔法使いの卵たちが集められていた。
 生徒たちはそこで、黒のローブならぬ黒のケープを纏い、勉学に励むのだ。ちなみにこのケープは魔道具ではなく、単なる制服である。

 初等部は基礎教養、一般礼節、魔法基礎などを学び、高等部では引き続き基礎教養、礼節を学びながら、初等部より深く魔法理論を学び、高度な魔法学習を行う。

「初等部も高等部も一年生から三年生までで、校舎も寮も分かれているので、二つ上までの先輩と面識があるんです」
 今年の春に学校を卒業したジュールと二十歳のランスは、通算二年間、学校で顔を会わせていた。

「魔法以外の勉強もするんだね」
「ええ、それはもうガッツリと……」

 基礎教養と言っても、算術や地理から歴史まで、幅広い分野を修めさせられる。礼節の授業も、子どもの内から品位を叩き込んでおこうという魂胆で、魔法使いの品格を重んじたいギルドの肝入りだ。
 その本気さは、ジュールのうんざりした表情が物語っている。

「そんなことまで勉強してたのか」
「はい。貴族や商人相手にも契約を結びます。彼らとも対等に会話ができるよう、学校での授業は多岐にわたるんです」
「なるほどな」
 セツは腕を組み、納得している。

 高等教育を受けている貴族や頭の回転が速い商人に、足もとを見られぬための基礎教養だ。
 不当な契約を防ぐのは、魔法使いを守ることと同義である。

 おかげで魔法使いは、知識人としても人々から尊敬されていた。学生時代に勉学に追われたことは、無駄にはならないのである。





「君の友達……怪我、大丈夫なの?」
 カードを繰りながら、ロワメールがついでのように聞く。

 カードはジュールが、退屈な馬車の旅のお供にと持参したものだ。一から十三までの数字と四つのマークが合わさったもので、外の国から入ってきたものである。

「レオですか? ご心配ありがとうございます。無事に退院しました」
「別に心配してるわけじゃ……」
 ロワメールは何故か、ゴニョゴニョと言い訳した。

 ロワメールがレオに良い感情を持っていないのは、ジュールも知っている。
 なにせ第一印象が最悪である。初対面の時に、セツを『魔法使い殺し』と大声で読んだのが原因だ。
 レオはその二つ名をカッコいいと思っているが、ロワメールにとっては忌むべき呼び名である。

(まあ、その他にも色々、レオの態度がマズかったんだろうな)
 その点に関して、ジュールはロワメールの味方だった。

 最強の魔法使いに敬意を。
 ジュールも口を酸っぱくしてレオに注意しているが、レオは魔法学校時代から礼節の授業が苦手だった。本人も反省しているが、考えるより先に口を開いてしまうらしい。
(レオらしいと言えば、レオらしいけど)

 面白いのは、ロワメールは自身に対する言動には至って寛容であるということだ。
(基本、ロワサマはお優しいよね)
 だから嫌いなはずのレオのことも、気にかける。
 ただセツに関してのみ、一切妥協する気はないようだった。
(それだけ、大切なんだろうな)

 そして、セツもロワメールを大切にしている。
 馬車に揺られながら隣り合って座る二人は、楽しそうに話している。
 穏やかに流れる優しい時間。

(ずっとこんな時間が続くように、ロワサマの力になりたい……)

 貴族の身分と魔法使いという立場があれば、できること。
 貴族であり、魔法使いでなければ、できないこと。
(ボクにしか、できないこと……)
 ジュールはずっと、模索していた。




 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 


 ❖ お知らせ ❖

 読んでくださり、ありがとうございます!


 3ー43 王子宮ってどんなとこ? は11/29(金)の夜、21時頃に投稿を予定しています。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

「追放された雑用係の俺、《真理の鑑定眼》で隠れた天才を集めたら最強パーティになっていた」

きりざく
ファンタジー
ブラック企業で過労死した男は、異世界に転生し《真理の鑑定眼》を授かった。 それは人や物の“本当の価値”、隠された才能、そして未来の到達点までを見抜く能力だった。 雑用係として軽視され、ついには追放された主人公。 だが鑑定眼で見えたのは、落ちこぼれ扱いされていた者たちの“本物の才能”だった。 初見の方は第1話からどうぞ(ブックマークで続きが追いやすくなります)。 評価されなかった剣士、魔力制御に欠陥を抱えた魔法使い、使い道なしとされた職業―― 主人公は次々と隠れた逸材を見抜き、仲間に迎え入れていく。 やがて集ったのは、誰もが見逃していた“未来の最強候補”たち。 鑑定で真価を示し、結果で証明する成り上がりの冒険が始まる。 これは、見る目のなかった世界を置き去りに、 真の才能を集めて最強パーティへと成り上がる物語。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界の社交界で、自分の幸せを選べるようになるまでの ほのぼの甘い逆ハーレム恋愛ファンタジー。

拝啓。私を追い出した皆様へ! 化け物と噂の辺境伯に嫁がされましたが噂と違い素敵な旦那様と幸せに暮らしています。

ハーフのクロエ
恋愛
 公爵家の長女のオリビアは実母が生きている時は公爵家令嬢として育ち、8歳の時、王命で王太子と婚約して12歳の時に母親が亡くなり、父親の再婚相手の愛人だった継母に使用人のように扱われていた。学園の卒業パーティーで婚約破棄され、連れ子の妹と王太子が婚約してオリビアは化け物と噂のある辺境伯に嫁がされる。噂と違い辺境伯は最強の武人で綺麗な方でオリビアは前世の日本人の記憶持ちで、その記憶と魔法を使い領地を発展させて幸せになる。

処理中です...