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第三話 魔者の花嫁編
3ー57 四属性対抗試合3 そして今日も弟子は師匠の世話を焼く
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対抗試合午前の部、三試合が終わり、ロワメールたち三人は闘技場内の一室で昼食を食べていた。『秋雲』特製仕出し弁当である。
「ジュール、残念だったね」
「まあ、フレデリクが相手だったからな。さすがに荷が重いだろう」
セツは焼き魚に箸を伸ばした。弁当箱には色とりどりの料理が詰め込まれている。もちろん味は申し分ない。
「どうして、一回戦と同じ作戦でいかなかったんだろう? あんなに上手くいったのに」
「あれは、対風使い用の戦い方だ。土使いには意味ないよ」
ジュールが負けたのが悔しいのか、がんもを頬張りながらロワメールは不服げだった。
「あの人、やっぱり強いの?」
「そうだな。強いと思うぞ。少なくとも、俺が手合わせした中では断トツだな」
ふーん、と気のない返事のロワメールに、セツは苦笑する。どうもロワメールはフレデリクが苦手なようだ。
「でも、二回戦でジュヌヴィエーヴ嬢はフレデリクさんに勝ってますよね?」
「魔法戦は、純粋な強さだけじゃなく、属性の相性もある。一回戦のジュールなんかは作戦勝ちだな。そう単純なものでもない」
カイの疑問に、セツが説明した。
「では、同じく司候補のジスラン殿とはどちらが強いのでしょうか?」
「その二人の対戦は、午後からでしょう?」
ここのところ元気がなかったロワメールも、ギルド祭を満喫している。
楽しそうな王子様に、セツも密かに安堵していた。
「マスターと殿下は、楽しまれているかい?」
選手控室で弁当を食べながら、フレデリクがリュカに確認する。
「それはもう! 堪能してくれてますよ」
案内役を任された愛弟子は、午前中の様子を思い出して胸を張った。
「っていうか、正確には楽しんでる殿下にマスターは満足してるっつーか」
リュカはモグモグと口を動かす。
「あれは、ダメな父親の典型っすね。なんせ殿下の欲しがるもの、片っ端から買い与えるんですから」
どれだけ王子様に甘いのか、セツの溺愛ぶりに呆れる。
「欲しがるもの?」
ギルド祭の屋台に、王子殿下の興味を引くようなものがあっただろうか。
「綿菓子から始まって、リンゴ飴に焼き鳥、イカ焼き、それからトウモロコシ!」
食べ物ばかりである。
「おれが案内するより、リュカに頼んで正解だったね」
言葉とは裏腹に、フレデリクには哀愁が漂っている。
「……おれ、どうも殿下に警戒されてる気がするんだよね」
リュカが弁当から顔を上げると、フレデリクが物憂げに溜め息を吐いていた。
「ジュールが言ってたでしょ。王子様にとってマスターは家族なんですよ。フレデリクさんだって、いきなり現れたおじさんが、お袋さんにグイグイ迫ってたら嫌でしょうが」
「そんなにグイグイいってない……」
リュカに窘められ、フレデリクはしょんぼり弁当をつつく。
「リュカはいいよな。その特異体質のおかげで殿下にも気に入られて」
そのままいじけて、弟子に絡みだした。
なに言ってんだこの人、と言わんばかりに、リュカが胡散臭いものを見る目つきで師匠を見やる。
「特異体質ってなんすか」
「年下の男にやたら懐かれる体質」
「………」
思い当たる節がありすぎて、リュカは反論しない。
リュカは魔法学校の生きた伝説として恐れられるが、その反面、後輩男子に慕われることは多い。
「リュカは面倒見がいいから後輩に好かれるんだとずっと思ってたけど、面倒を見ていない殿下にまでってなったら、それはもうなにかしら、そんな体質だよ」
「どんな体質っすか、それ」
リュカがロワメールに懐かれる原因を訳のわからない体質のせいにして、フレデリクは自分を慰めようとしているようだが、とんだ迷惑である。
「どうせなら、女子に懐かれる体質がよかったっすね」
面倒臭いので適当に話を合わせておいたが、リュカにとってその願望は案外切実だった。
フレデリクは女性にモテる。顔が良く、紳士然とした振る舞いの、高給取りの超実力派魔法使い。そりゃあ女性に困らないはずである。
ファンのお姉様方に手を出すような下品な真似はしないが、これまで何人もの美女とお付き合いをしてきた。フレデリクは一度結婚に失敗しているので、あくまで大人のお付き合いだ。
対してリュカは人並みに結婚願望はあるが、何故か女性に縁がない。
リュカにとっては自分と正反対の師匠が、羨ましい限りである。
「このまま殿下に嫌われて、マスターの家を出禁になったらどうしよう……」
はあぁー、と大きな溜め息を吐いてフレデリクは項垂れた。
対抗試合の真っ最中に、緊張感がないのか余裕綽々なのか。
(ほんと、魔法が絡むと台無しだよ、この人)
普段のカッコいいフレデリクはどこにいったと、リュカは嘆きたくなる。
「ほら、午後も試合あるだから、しっかり弁当食ってください」
なんのかんの言いながらも、師匠の世話を焼くリュカであった。
「ジュール、一回戦はおめでとう」
昼食を終えたロワメールたちは、陣中見舞いにジュールの控室に顔を出した。
すでにレオ、ディア、リーズが来ており、空の弁当箱がテーブルに置かれている。
「レオ、傷は大丈夫か?」
「平気です! まだ無理はできませんけど、ジュールの晴れ舞台なんで!」
心配するセツに、レオは快活に笑った。
「元気そうでなによりだ」
「頑丈なのが取り柄なんで!」
湖城からの帰り道の、痛々しい笑顔とは違う。心なしか、顔つきもかわって見えた。
「あんな悄気てたくせに」
「馬鹿は風邪引かないって言うもんね」
ディアとリーズが、すかさず茶化す。
「うっさいわ!」
ジュールが負けを気に病んでいるかと思ったが、仲間と笑い合っていた。
「うーん、まあ、引きずってもしょうがないんで。午後からの兄さんとの試合に意識を切り替えないと」
優等生は優等生な返事をする。
「一回戦はお見事でした。二回戦も、良い試合だったと思います」
「ありがとうございます、カイサマ」
カイが大きく頷く。その意味を、ジュールだけが理解していた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
❖ お知らせ ❖
読んでくださり、ありがとうございます!
3ー58 四属性対抗試合4 四者四様 は1/22(水)の夜、21時頃に投稿を予定しています。
「ジュール、残念だったね」
「まあ、フレデリクが相手だったからな。さすがに荷が重いだろう」
セツは焼き魚に箸を伸ばした。弁当箱には色とりどりの料理が詰め込まれている。もちろん味は申し分ない。
「どうして、一回戦と同じ作戦でいかなかったんだろう? あんなに上手くいったのに」
「あれは、対風使い用の戦い方だ。土使いには意味ないよ」
ジュールが負けたのが悔しいのか、がんもを頬張りながらロワメールは不服げだった。
「あの人、やっぱり強いの?」
「そうだな。強いと思うぞ。少なくとも、俺が手合わせした中では断トツだな」
ふーん、と気のない返事のロワメールに、セツは苦笑する。どうもロワメールはフレデリクが苦手なようだ。
「でも、二回戦でジュヌヴィエーヴ嬢はフレデリクさんに勝ってますよね?」
「魔法戦は、純粋な強さだけじゃなく、属性の相性もある。一回戦のジュールなんかは作戦勝ちだな。そう単純なものでもない」
カイの疑問に、セツが説明した。
「では、同じく司候補のジスラン殿とはどちらが強いのでしょうか?」
「その二人の対戦は、午後からでしょう?」
ここのところ元気がなかったロワメールも、ギルド祭を満喫している。
楽しそうな王子様に、セツも密かに安堵していた。
「マスターと殿下は、楽しまれているかい?」
選手控室で弁当を食べながら、フレデリクがリュカに確認する。
「それはもう! 堪能してくれてますよ」
案内役を任された愛弟子は、午前中の様子を思い出して胸を張った。
「っていうか、正確には楽しんでる殿下にマスターは満足してるっつーか」
リュカはモグモグと口を動かす。
「あれは、ダメな父親の典型っすね。なんせ殿下の欲しがるもの、片っ端から買い与えるんですから」
どれだけ王子様に甘いのか、セツの溺愛ぶりに呆れる。
「欲しがるもの?」
ギルド祭の屋台に、王子殿下の興味を引くようなものがあっただろうか。
「綿菓子から始まって、リンゴ飴に焼き鳥、イカ焼き、それからトウモロコシ!」
食べ物ばかりである。
「おれが案内するより、リュカに頼んで正解だったね」
言葉とは裏腹に、フレデリクには哀愁が漂っている。
「……おれ、どうも殿下に警戒されてる気がするんだよね」
リュカが弁当から顔を上げると、フレデリクが物憂げに溜め息を吐いていた。
「ジュールが言ってたでしょ。王子様にとってマスターは家族なんですよ。フレデリクさんだって、いきなり現れたおじさんが、お袋さんにグイグイ迫ってたら嫌でしょうが」
「そんなにグイグイいってない……」
リュカに窘められ、フレデリクはしょんぼり弁当をつつく。
「リュカはいいよな。その特異体質のおかげで殿下にも気に入られて」
そのままいじけて、弟子に絡みだした。
なに言ってんだこの人、と言わんばかりに、リュカが胡散臭いものを見る目つきで師匠を見やる。
「特異体質ってなんすか」
「年下の男にやたら懐かれる体質」
「………」
思い当たる節がありすぎて、リュカは反論しない。
リュカは魔法学校の生きた伝説として恐れられるが、その反面、後輩男子に慕われることは多い。
「リュカは面倒見がいいから後輩に好かれるんだとずっと思ってたけど、面倒を見ていない殿下にまでってなったら、それはもうなにかしら、そんな体質だよ」
「どんな体質っすか、それ」
リュカがロワメールに懐かれる原因を訳のわからない体質のせいにして、フレデリクは自分を慰めようとしているようだが、とんだ迷惑である。
「どうせなら、女子に懐かれる体質がよかったっすね」
面倒臭いので適当に話を合わせておいたが、リュカにとってその願望は案外切実だった。
フレデリクは女性にモテる。顔が良く、紳士然とした振る舞いの、高給取りの超実力派魔法使い。そりゃあ女性に困らないはずである。
ファンのお姉様方に手を出すような下品な真似はしないが、これまで何人もの美女とお付き合いをしてきた。フレデリクは一度結婚に失敗しているので、あくまで大人のお付き合いだ。
対してリュカは人並みに結婚願望はあるが、何故か女性に縁がない。
リュカにとっては自分と正反対の師匠が、羨ましい限りである。
「このまま殿下に嫌われて、マスターの家を出禁になったらどうしよう……」
はあぁー、と大きな溜め息を吐いてフレデリクは項垂れた。
対抗試合の真っ最中に、緊張感がないのか余裕綽々なのか。
(ほんと、魔法が絡むと台無しだよ、この人)
普段のカッコいいフレデリクはどこにいったと、リュカは嘆きたくなる。
「ほら、午後も試合あるだから、しっかり弁当食ってください」
なんのかんの言いながらも、師匠の世話を焼くリュカであった。
「ジュール、一回戦はおめでとう」
昼食を終えたロワメールたちは、陣中見舞いにジュールの控室に顔を出した。
すでにレオ、ディア、リーズが来ており、空の弁当箱がテーブルに置かれている。
「レオ、傷は大丈夫か?」
「平気です! まだ無理はできませんけど、ジュールの晴れ舞台なんで!」
心配するセツに、レオは快活に笑った。
「元気そうでなによりだ」
「頑丈なのが取り柄なんで!」
湖城からの帰り道の、痛々しい笑顔とは違う。心なしか、顔つきもかわって見えた。
「あんな悄気てたくせに」
「馬鹿は風邪引かないって言うもんね」
ディアとリーズが、すかさず茶化す。
「うっさいわ!」
ジュールが負けを気に病んでいるかと思ったが、仲間と笑い合っていた。
「うーん、まあ、引きずってもしょうがないんで。午後からの兄さんとの試合に意識を切り替えないと」
優等生は優等生な返事をする。
「一回戦はお見事でした。二回戦も、良い試合だったと思います」
「ありがとうございます、カイサマ」
カイが大きく頷く。その意味を、ジュールだけが理解していた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
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