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31.替えの効かないモノ
しおりを挟む一方その頃、祐樹はトイレの個室でひとり、野球部のユニフォームに着替えていた。
……ノーパンでユニフォーム着ると、なんか変な感じだな
チャックを陰毛に巻き込まないように注意深くあげて、ベルトを締める。生地は分厚いから、傍からは分からないだろう。
「おー、祐樹。遅いぞー」
キャプテンの高橋に声をかけられたが、適当に返事をする。平然を装って、グラウンドに足を踏み入れた。
三田以外はみんな集まっていて、ストレッチをしていた。端に藤岡の姿を見付け、俺はどきりとした。
いつものようにちょっかいをかけられたマズいな、と警戒する。けれど、藤岡はこちらから目を逸らし、遠くのほうへ走っていった。
「藤岡、最近変わったよな……」
高橋にそう訊かれて、そのとき初めて、藤岡にキスをされたことを思い出した。ちょっと顔が赤くなりつつ、首を振る。
「さあ……わかんない」
そんな会話をしつつストレッチをしていると、三田が戻ってきた。
ストレッチを終え、外周に移る合間、三田が誰かにバレないように耳打ちで俺に話しかけた。
「ごめんな。……下、大丈夫か?」
「あ、……うん」
さっきまで気にしてなかった部分に、途端に意識が向かった。
外周を走っている間、汗と布地であそこが擦れる感触を地肌で感じる。一歩踏み出すごとに陰嚢が揺れ、次第に血が集まっていくのを感じた。
明らかにモノは硬くなっていた。ノーパンだから、たぶん見られたら、一発でバレてしまう。
「……ちょっとトイレ」
ぼそりとそう告げて、ばれないように集団から外へ出た。
校舎1階のトイレへ走った。
この時間の校舎は静かだった。抑えきれない欲情を抱えたまま、呆然と個室のトイレに座った。
鎮まれ鎮まれと意識するほど、なぜか俺のモノは硬度を増していく。
ここ最近は刺激が多すぎて、感覚がバグっていた。
見ているだけから、触れられるようになり、触れるようになり…………思い出すと止まらない。
いっそ抜いてしまおうか、と陰茎に手をかけた瞬間、ノックの音が鳴った。
肩をびくつかせ、扉のほうをじっと見つめる。
「おーい、大丈夫か」
その低く響く声に安堵する。三田の声だった。
「う、うん。大丈夫。収まったら、すぐ戻るから」
そう言ってしまってから、自分の失態に気づいた。
収まったら、なんて言ってしまったら、勃起してるのが丸わかりだ。
「……お腹、痛いの?」
「えっ、あー……そうそう」
そうか、普通はそう思うのか、と遅れて気づく。
俺の反応の可笑しさに気づき、三田は笑った。
「もしかして、勃起してんの?」
逡巡の後、俺は観念して扉を開けた。
正直なことを言うと、助けて欲しかった。
「……どうにか、してほしい」
足元まで下ろしたズボン、白い太腿の上に屹立とそびえたつ祐樹のモノがあった。それを見て、三田は息を呑んだ。
「すぐに収めて、練習戻んないと、な」
そういうと、三田は俺の前に跪き、なんの躊躇もなく俺のモノを咥えた。無防備な先っぽに、三田の口内の熱が広がる。
「ん、あっ……」
俺は悶絶した。
突然の出来事に頭は追い付かず、股間の刺激だけが先行して走る。
視界には少し伸びた坊主頭と髪を弾く汗の粒があった。触れると、その汗が弾けて飛んだ。
「いい?」
ぼそりとそう訊かれただけだが、俺はもうたまらなくなった。
「もう……ヤバいかも」
口の動きに合わせて、右手で竿を上下に刺激され、俺は我慢できず、30秒足らずで果てた。
三田は口に出されたものを、俺の股の隙間から便器に吐きだした。
「だいぶ、出たな。朝も出してたのに」
白くどろりとしたものが、三田の口に垂れていた。
「……ありがと」
俺はティッシュを手に取ると、まずそれを拭いた。
いろんな感情が交差し、それしか言葉にできなかった。
三田はにこりと笑って、腰を上げた。
「やっぱ夏のトイレは暑いなー」
「しー、誰か来るよ」
「来ないよ、たぶん」
そういうと、三田は俺の唇に軽くキスをした。
俺の警戒などよそにケロリとした態度で、立っている三田をどこか逞しく思った。
俺が自分のモノをティッシュで拭いて、ズボンを上げるとき、三田が「あ、」と声を上げた。
「やっぱ今、返そうか、パンツ?」
「え、あぁ、いいよ。部活終わったらで、大丈夫」
俺はそういうと、さっさとズボンを上げて、ベルトを締めた。
「じゃあ、それなら持ち帰って、洗って返すよ」
「いやっ!いいよ、それは本当に……大丈夫だから……」
しどろもどろな祐樹を、三田は見逃さなかった。
鋭い目つきで、祐樹のよこしまな考えを射抜いた。
「……もしかしてだけど、俺が履いたパンツ、洗わずに取っておこうとか考えてない?」
図星だった。
俺は顔を赤らめて、下を向く。
「……まじか」
さすがの三田も引いていた。
パンツは絶対洗って返そうと、三田は思った。
「パンツは、明日返す。お礼はまた……今度するからさ」
そういって三田は、俺の頭に手を乗せる。
また下の状況が盛り上がる前に、俺は腰を上げた。
「ありがと、そろそろ練習戻ろっか」
「おう」
二人してトイレを出る。
朝よりも慎重に、ばれないように、注意しながら校舎を後にした。
野球部はもうキャッチボールを始めていた。
罪深い二人の頭の上にも、夏の太陽は等しく陽を注いでいた。
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