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フェールの花-価値のない王子は完璧な王に愛される-
プロローグ
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人はどこまで屈辱に耐えられるのか。震える腕で足を持ち上げながら、歯を食いしばる。
一月前までは、いま自分に起きていることを予想すらできなかった。むしろ一生、想像すらしないものだった。
「随分と余裕だな」
違うことを考えて気を反らそうとしていることに気づかれて、非難するような低い声が響く。そしてすぐに青灰色の瞳が迫って来る。
瞳に映り込む自分を見たくなくて、視線をそらす。
「そらすな」
顎を掴まれて元の位置に戻されても、抵抗することはしなかった。
「何を考えている」
問われても、何を考えているのかわからない。いろいろなものが断片的に流れているというか、どうしたいのかも、どうしたらいいのかもわからなくなっている。
いつも自分は途方に暮れている気がする。ゆっくりと覆いかぶさってきた目的に気づいて、自然と唇を引いてしまう。
「抵抗するか?」
どこか楽しそうに響く声に、何とか力を抜く。全てを諦めて目を閉じると、少ししてから唇に柔らかな感触がする。
支配されていると強く感じる。ひどく弱い存在になった気がして、すがれるものが欲しくて仕方ない。
けれどすがれる物も、助けてくれる者もいない。もし自ら抵抗したとしても、簡単に押さえられてしまうことはわかっている。
「いつまで耐えられるか見てやろう」
唇から離れて、今度は頬に柔らかな感触がする。そして熱く湿ったものが、ゆっくりと這っていくのを感じる。
舌で舐め上げられている。まぶたが震えて、そっと目を開くとまた目が合う。
薄暗いベッドの上で、揺れる蝋燭の火を映す瞳に見惚れそうになる。ずっと憧れていた人に与えられる熱は、ひどく甘美に感じる。
けれど違う。二人の間にあるのは、国同士の密約だけだ。
「夜は長い、ゆっくり楽しもう」
陽の光の中で、部下に指示している時と変わらない表情に眩暈を感じる。もしかしてこれは夢なのではないかと。
触れるか触れないかの距離で、指がゆっくりと肌を辿っていく。
「ふぅ……あっん……」
感じてはいけないと思うのに、溢れそうになる声を必死に堪える。なぜ体はこんなにも心を裏切るのだろう。
この手は快楽を与えてくれるものだと、体が反応してぞくりとした感覚が腰を震わせる。
「もっと聞かせてくれ」
耳元で優しく囁かれて、卑猥な声を上げる。快楽を主張する場所に、大きな手が絡みつき撫で上げられていく。
視界が涙で滲んでくると、自分の体を見て笑む姿が見える。裸を見られることを恥ずかしいと思ったことは一度もなかった。
幼い頃から体を清めるのは一人ではなかったし、基本的に従者がいつでも傍にいた。けれどいまは見られたくないと強く思う。
ただ、ただ、早く終わってくれと願う。どうか自分が落ち切ってしまう前に……。
一月前までは、いま自分に起きていることを予想すらできなかった。むしろ一生、想像すらしないものだった。
「随分と余裕だな」
違うことを考えて気を反らそうとしていることに気づかれて、非難するような低い声が響く。そしてすぐに青灰色の瞳が迫って来る。
瞳に映り込む自分を見たくなくて、視線をそらす。
「そらすな」
顎を掴まれて元の位置に戻されても、抵抗することはしなかった。
「何を考えている」
問われても、何を考えているのかわからない。いろいろなものが断片的に流れているというか、どうしたいのかも、どうしたらいいのかもわからなくなっている。
いつも自分は途方に暮れている気がする。ゆっくりと覆いかぶさってきた目的に気づいて、自然と唇を引いてしまう。
「抵抗するか?」
どこか楽しそうに響く声に、何とか力を抜く。全てを諦めて目を閉じると、少ししてから唇に柔らかな感触がする。
支配されていると強く感じる。ひどく弱い存在になった気がして、すがれるものが欲しくて仕方ない。
けれどすがれる物も、助けてくれる者もいない。もし自ら抵抗したとしても、簡単に押さえられてしまうことはわかっている。
「いつまで耐えられるか見てやろう」
唇から離れて、今度は頬に柔らかな感触がする。そして熱く湿ったものが、ゆっくりと這っていくのを感じる。
舌で舐め上げられている。まぶたが震えて、そっと目を開くとまた目が合う。
薄暗いベッドの上で、揺れる蝋燭の火を映す瞳に見惚れそうになる。ずっと憧れていた人に与えられる熱は、ひどく甘美に感じる。
けれど違う。二人の間にあるのは、国同士の密約だけだ。
「夜は長い、ゆっくり楽しもう」
陽の光の中で、部下に指示している時と変わらない表情に眩暈を感じる。もしかしてこれは夢なのではないかと。
触れるか触れないかの距離で、指がゆっくりと肌を辿っていく。
「ふぅ……あっん……」
感じてはいけないと思うのに、溢れそうになる声を必死に堪える。なぜ体はこんなにも心を裏切るのだろう。
この手は快楽を与えてくれるものだと、体が反応してぞくりとした感覚が腰を震わせる。
「もっと聞かせてくれ」
耳元で優しく囁かれて、卑猥な声を上げる。快楽を主張する場所に、大きな手が絡みつき撫で上げられていく。
視界が涙で滲んでくると、自分の体を見て笑む姿が見える。裸を見られることを恥ずかしいと思ったことは一度もなかった。
幼い頃から体を清めるのは一人ではなかったし、基本的に従者がいつでも傍にいた。けれどいまは見られたくないと強く思う。
ただ、ただ、早く終わってくれと願う。どうか自分が落ち切ってしまう前に……。
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