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恋愛厨への素朴な疑問
とにかく付き合う相手が欲しい恋愛厨
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やっと川村先輩たちが卒業したと思ったら、また新たな厄介ごとが舞い込んだ。
違うクラスの菅くんに告白されてしまったのだ。
放課後の教室で、菅くんはユラユラと揺れながら言った。
「彼氏いないならさ~俺と付き合って欲しいんだけど~」
中学生男子というのはなぜ揺れるのか?
首をへこへこと前後に動かしながら、体は左右に揺れている。一種の照れ隠しなのだろうか?
菅くんとは違うクラスだったが、委員会が一緒になって初めて喋った。話がはずんで楽しかったが、それが彼の恋愛感情に火を付けるとはまったく予想していなかった。
菅くんはちょっとやんちゃな風情の普通の男の子で、頬にニキビがたくさんあり、委員会で先生の話を聞いている時、退屈だったのか頬のニキビをいじりすぎ、ニキビから血を流していた。
そんな印象しかなかった。
私は正直困った。
嫌いではない。
しかし、どうせまた付き合うなんて話になったら面倒なことになるのは分かっていた。
「まだあまり喋ったことないし・・ちょっと考えさせて」
と、私は曖昧な返事をしてしまった。
今思うとこれは最もまずい返事だった。
菅くんに「もっと親しくなればどうにかなる」、そう期待させてしまったのだ。
この日から菅くんの電話攻撃が始まってしまった。
ほぼ毎日菅くんから電話がかかってきた。
あまりに回数が多いので、母親から勝手に「彼氏」にされ、菅くんから電話がかかって来ると
「彼氏から電話だよ~」
と呼ばれた。
これは地獄だ。
そう思って意を決して、菅くんにはっきりと
「受験で忙しいから彼氏を作る気はない」
と伝えた。
するとあっさりと承諾してくれたのだが、予想外の返事が返って来た。
「じゃ、受験終わったら付き合おうよ!」
え~。
伝わっていなかったことにがっかりしたのと同時に、ああ、受験終わったらどうやって断ろうか、と悩ましい思いに駆られた。
私は「男が絡むとろくなことはない」と当時から悟っていたので、女子高に進学することに決めていた。
その後、無事に志望校に合格できたのだが、待ってましたとばかりに菅くんはまた電話して来た。
ところが
ここはアホな中高生である。
新しい高校に行ったら、菅くんはあっさりと他の女の子に目が行き、私のことなどすっかり忘れてしまったのだ。
これで地獄の菅くんの電話攻撃は終了を迎えるのだが
その2年後のことである。
私は高校二年生だった。
女子高に通い、それなりに楽しい日々を過ごしていた。
彼氏はいなかったが、充分楽しかったし、彼氏を作りたいとも思わなかった。
学校から家に帰る途中バス停に立っていたら、あのニキビ流血男の菅くんにばったり会ってしまったのだ。
「よう!久しぶり!」
と菅くんは明るく気軽に声をかけて来た(彼のこの明るさと屈託のなさが嫌いになれない理由でもあった)。菅くんは友達数人と一緒だった。
そして菅くんは開口一番
「彼氏できたのかよ!」
とぶしつけにきいてきた。
「いないよ」
と私が言うと
「あーあ、だからあの時俺と付き合ってれば良かったのに!」
菅くんはそう言って、友達と自転車で消えて行った。
え?「あーあ」って何?
彼氏いないのはそんなに残念なこと?
彼氏いないより、たいして好きでもない人と付き合ってる方がまだましってこと?
菅くんの捨て台詞に私はしばらく考え込んだ。
彼氏いない=恥ずかしい、ダメな奴
こういう思考になるのだろうか?
彼氏がいなくても充分幸せであり、充実した生活を送っていた。一体なにがいけないのか?
菅くんは恐らく、大人になったら今度は独身を笑うのだろう。
菅くんはある意味、四六時中恋愛し、それが成就することに人生の喜びを感じるタイプなのだろう。こういうタイプはよくいる。そしてこういう人は恋愛以外の楽しみに出会っていないことが多い。
シングルの人が何を楽しんで生きているのか
決して知ることはなく
自らの経験不足に気づくこともなく
同情し蔑んで自分勝手な優越感に浸るのだろう。
菅くんは決して悪い人ではなかった。
そういう大人になっていないことを切に願うばかりである。
違うクラスの菅くんに告白されてしまったのだ。
放課後の教室で、菅くんはユラユラと揺れながら言った。
「彼氏いないならさ~俺と付き合って欲しいんだけど~」
中学生男子というのはなぜ揺れるのか?
首をへこへこと前後に動かしながら、体は左右に揺れている。一種の照れ隠しなのだろうか?
菅くんとは違うクラスだったが、委員会が一緒になって初めて喋った。話がはずんで楽しかったが、それが彼の恋愛感情に火を付けるとはまったく予想していなかった。
菅くんはちょっとやんちゃな風情の普通の男の子で、頬にニキビがたくさんあり、委員会で先生の話を聞いている時、退屈だったのか頬のニキビをいじりすぎ、ニキビから血を流していた。
そんな印象しかなかった。
私は正直困った。
嫌いではない。
しかし、どうせまた付き合うなんて話になったら面倒なことになるのは分かっていた。
「まだあまり喋ったことないし・・ちょっと考えさせて」
と、私は曖昧な返事をしてしまった。
今思うとこれは最もまずい返事だった。
菅くんに「もっと親しくなればどうにかなる」、そう期待させてしまったのだ。
この日から菅くんの電話攻撃が始まってしまった。
ほぼ毎日菅くんから電話がかかってきた。
あまりに回数が多いので、母親から勝手に「彼氏」にされ、菅くんから電話がかかって来ると
「彼氏から電話だよ~」
と呼ばれた。
これは地獄だ。
そう思って意を決して、菅くんにはっきりと
「受験で忙しいから彼氏を作る気はない」
と伝えた。
するとあっさりと承諾してくれたのだが、予想外の返事が返って来た。
「じゃ、受験終わったら付き合おうよ!」
え~。
伝わっていなかったことにがっかりしたのと同時に、ああ、受験終わったらどうやって断ろうか、と悩ましい思いに駆られた。
私は「男が絡むとろくなことはない」と当時から悟っていたので、女子高に進学することに決めていた。
その後、無事に志望校に合格できたのだが、待ってましたとばかりに菅くんはまた電話して来た。
ところが
ここはアホな中高生である。
新しい高校に行ったら、菅くんはあっさりと他の女の子に目が行き、私のことなどすっかり忘れてしまったのだ。
これで地獄の菅くんの電話攻撃は終了を迎えるのだが
その2年後のことである。
私は高校二年生だった。
女子高に通い、それなりに楽しい日々を過ごしていた。
彼氏はいなかったが、充分楽しかったし、彼氏を作りたいとも思わなかった。
学校から家に帰る途中バス停に立っていたら、あのニキビ流血男の菅くんにばったり会ってしまったのだ。
「よう!久しぶり!」
と菅くんは明るく気軽に声をかけて来た(彼のこの明るさと屈託のなさが嫌いになれない理由でもあった)。菅くんは友達数人と一緒だった。
そして菅くんは開口一番
「彼氏できたのかよ!」
とぶしつけにきいてきた。
「いないよ」
と私が言うと
「あーあ、だからあの時俺と付き合ってれば良かったのに!」
菅くんはそう言って、友達と自転車で消えて行った。
え?「あーあ」って何?
彼氏いないのはそんなに残念なこと?
彼氏いないより、たいして好きでもない人と付き合ってる方がまだましってこと?
菅くんの捨て台詞に私はしばらく考え込んだ。
彼氏いない=恥ずかしい、ダメな奴
こういう思考になるのだろうか?
彼氏がいなくても充分幸せであり、充実した生活を送っていた。一体なにがいけないのか?
菅くんは恐らく、大人になったら今度は独身を笑うのだろう。
菅くんはある意味、四六時中恋愛し、それが成就することに人生の喜びを感じるタイプなのだろう。こういうタイプはよくいる。そしてこういう人は恋愛以外の楽しみに出会っていないことが多い。
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決して知ることはなく
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