ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

4 名乗り合い

 騒めきの中、ハインは一つの単語を耳にする。

(『隊長』……成程、道理で。この中じゃ一番強いと感じた訳だ。でも、態々わざわざ下働き相手にプロが見るなんて、さすが王様の住んでる所なだけ有るなぁ。下手に素人が見た場合、怪我人だって出る場合も有るし、相手の実力も図り兼ねない。でも、プロならそんなヘマはしない。プロが相手なら、わたしもある程度の実力を出せる筈だ)

 ハインがそう思っていると、相手もハイン同様、ハインの実力を探っていたようだ。

 そんな、隊長と呼ばれていた男が、模擬剣をハインへと的確に投げて寄越し、いきなり名乗り出してきた。


「俺は、クラウス=ジェイド。近衛騎士ここの隊長で、お前の試験官だ。お前の名は?」


 予想外の出来事に、ハインは内心、ただただ驚く。

 このような場で、名乗るという事は、相手を認めると言う事。対等で有る、と見做す事に他ならない。

(隊長と呼ばれるこの人が?)


「……どうした?名乗りたく無いのか?」


 クラウスの声に、ハインはハッと我に返り、腰の剣を外して言い返す。


「違います。あの……先に名乗られた事が、一度も無かったので、驚いただけです。わたしはハイン。手合わせ、宜しくお願いします」


 ペコリと頭を下げるハインに、クラウスは微妙な顔をしているが、ハインは全く気にめない。

 そして、そんなハインを見たクラウスも、渋々と言った感じでそのまま剣を抜き、構える。

 それを目にしたハインは、心底感心した。

(凄いな、さすがは隊長・・だ。今までわたしが手合わせした中で、五指に入るんじゃないかなぁ。でも、こっちだって負けられない。生活が掛かってるんだから!!)


「いつでも良いぞ、掛かって来い」


(……。あー、どうしよう?)


「……あの……すみません。出来れば、そちらから仕掛けて下さい。仕掛けるのは苦手で……」


 そう発言するハインに、隊員達は、命知らずだと嘆いている。

 クラウスの攻めは、速さが乗ると、重さが増すからだ。

 そして、ハインの言葉にクラウスは少し驚くものの、了承をした。


「そうか。なら、行くぞ!」


 クラウスの掛け声と共に、ハインは俯き、まぶたを閉じて、深呼吸を一つ。

 思い描くのは、大切な、守る者達。

 掛替えのない者達。

 居場所で有り、生き甲斐で有り、帰るべき所。

 守りたい。

 この手で掴み取る。

 未来をーー

 その瞳に、闘志が宿る。


 ガキンッッ!!!


 ハインは正面から受け止め、弾くように間合いを取る。

 そして、クラウスが、二撃、三撃と回数を重ね、速度が徐々に増して行く。

 だが、ハインも負けてはいない。

 時に流し、時にかわし、そして、タイミングを崩すかのように、切り返す。

 クラウスは、基礎訓練をきっちりと積んだ騎士。

 対するハインは、実戦経験のみ。

 基礎を受けた事すら一度も無い。

 それは、クラウスにとって、予想外だらけの出来事だった。

 ハインの剣は、基礎がなってない。

 いや、型が無い、と言っても良いぐらいだ。

 そのお陰で、どこから攻撃が来るのかが読み難い上、動きが最小限で、無駄が無い。

 細い身体の割には、そこそこの力も有る。

 スピード自体が速くて鋭い。

 何より、随分と場数を踏んでいるようだ。

 しかも、訓練では無く、生死を賭けた実戦。

 そんな気がしてならないのだ。

 ただ、ハインの剣は、血に飢えた邪剣では無く、何かを守る為の守護の剣。

 強さに驕るのでは無く、強さを磨く、その心。

 瞳に宿る闘志は、あまりにも鮮やかに澄み、輝き放つのだ。
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