ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

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 その場に居た全員が、凍り付いたかのように固まり、耳を疑い絶句した。

(下働き?いやいや、まさか……。だって、お前、隊長と互角の腕前……。それが下働きだって?まさか……本気で言ってるのか?!こいつは!?!)

 そんな隊員達の声が、聴こえた訳でも無いのだが、場に流れる、困惑に満ち溢れた空気が、ハインにまで困惑をもたらしてくる。


「あの……?……一体、どうなさったんです、か?」


 理由わけが分からず、ハインは内心、途方に暮れるしかない。

 ここは、事情を知るだろう上の人間に聞けば済むのだろうか?と、ハインは無表情の顔を、クラウスに向けると、クラウスは何故か、顔を片手で覆っている状態だ。


「……悪いな。どうやら、手違いが起きたようだ」


 深い溜め息を吐きながらの、クラウスのその発言に、ハインは絶望的な気分に陥る。


「……そう……ですか……。手違い……。まだ、間に合うかなぁ……」


 表情の全く読めない、ハインの言葉に、ちょっと待てぇ!早まるなっ!!と、誰もが突っ込みそうな所で、クラウスが待ったを掛ける。


「その事なんだがハイン。下働きじゃなく、こっちに来ないか?」

「……え?」


 無表情ながらも、首を傾げるハインに、クラウスは尚も言い募る。


「立て札はもう一つ有ったんだ。近衛騎士、直属見習い。条件は、実力重視で、俺達との実技試験。月給は、金貨三枚で住み込み指導。後はハイン、全てはお前次第だが……俺はお前に入って欲しいと思っている」


 その言葉を受けて、ハインがポツリと聞き返す。


「……ですか?」


 その声は思いの外小さくなってしまい、クラウスはハインの呟きを聞き逃してしまった為、慌ててハインに聞き返す。


「悪い!聞き取れなかった。もう一度言ってくれないか?」


 ハインは内心動揺しているが、表情には一切出さずに、何とか言葉を絞り出す。


「良いんですか?本当に……。わたしは、コネも何も持たない、只の一般人ですよ?」

「ああ、そう言う事か……。心配は要らない。俺等が欲しいのは、実力有る希望者だ。……ただ、規則やトラブル防止の為に、行動制限や……監視付き、にはなるんだが……」

「ちょっ……隊長?!」


 クラウスの言葉に、隊員達は大いに驚くが、クラウスは構わず正直に話す。


「指導者、と言えば、聞こえは良いが、実際問題は監視になる。休みですら、行動を共にされるんだからな」


 逃すには、惜しい人材では有るものの、隠すのは、誠意に掛けるとばかりにクラウスが言う。


「だからって、今言わなくても……」

「そもそも、見習いの責任は、全て指導者が負うことになってるんですから……」

「もうちょっと、印象の良い言い方をして下さいよぉ!」


 見習い希望者に、悪印象を与えてどうするんだと、隊員達の誰もが、クラウスに抗議をする。


「自分一人、手合わせ出来たからって、ズルいよ、隊長!!」

「そうですよ!僕達も、一度ぐらいは手合わせしたいのに、即、断られたら、どうしてくれるんです?!」


 他の試験官達もクラウスの言い方に非難するのだが、言われた当の本人で有るハインは、隊長は誠実な方なんだなぁと、内心大いに感心しながら、ハインも自分の考えを口にする。


「隊長の言う事は、もっともだと思います。腕が良いからと言って、信用出来る理由にはならない。それとこれとは、別問題ですからね」


 キッパリと言い切るハインに、その場にいた誰もが押し黙った。
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