ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

19 珍獣気分

「ああ、そうだ。王子との顔合わせは、第一王女が旅に出てからになると思う」


 クラウスが食堂に向かいながら、とんでもない事を言い出した。


「えっ……。顔合わせ……するんですか?わたしと、ここの王子様が?」


 その言葉にハインは物凄く驚く。

 まぁ、驚くとは言っても、ハインはいつもの仕事用の顔なので、表情には全然出ていない為、クラウスも全く気付かず話を進める。


「本当なら、今日にでもした方が良いんだが、準備だ何だで時間が取れそうに無いんだよ。万全を期する為にも、俺の隊からも、何人かは同行させる予定だし、第二王女の婚約者候補が第一王女不在の中で、訪問して来ると言う話も有るし、まぁ、色々とごたついているんだ」

「はぁ」

「そんな訳で、人の出入りが激しく、相当機嫌が悪くてな。機嫌が悪い時に連れて行っても、適当にあしらわれるだけだから、出来れば時期をずらしたいんだ。どうせ、機嫌の悪い時に連れて行って会わせたら、後々覚えてないだの、何故ちゃんと会わせなかっただの、怒るに決まっているからな。俺としては、そんな八つ当たり紛い、食らいたくは無いんでな」


(別に、会わなくても、これっぽっちも問題無いと思うんだけどなぁ……。出来れば忘れていて貰いたい……)

 あまり目立ちたくないハインは、その話題は聞かなかった事にしようとした。

 そして、そんな事を思っていると、どうやら食堂に近いようだ。

 とても美味そうな匂いが辺りに漂い、思わず唾を嚥下えんかする。

(美味そうな匂い……。そう言えば、住み込みだとは聞いていたけど、食事付きとは言われて無かった。食事代は幾らぐらい掛かるのかなぁ?場所が場所だし、豪華な食材とかを使われていそうだなぁ……。そうなると、金貨一枚は減るのかなぁ?さすがにそれは、避けたいんだけど……)

 ハインはそんな事を考えながら、クラウスと一緒に食堂になっている大広間に入って行くと、その場に居た騎士服姿の人達が、ハインを見返し、ひそひそと小声で会話をする。


「おっ、来た来た」

「見れば見る程ほっそいなぁ~」

「誰だ?あれ……」

「年、幾つなんだ?」

「あそこの隊長が牽引してるって事は、貴族か?」

「あれが?」

「若いよなぁ、どう見ても」


 遠巻きながらも、好奇心がひしひしとハインに纏わり付くようだ。

(……何だろう、この、嬉々とした雰囲気は……。食事が美味しい?でも、視線はこっちだし……。食事に何か混ぜた、とか?いや、それは無いか。わたしだけなら未だしも、隊長だって食べるんだし、他の人達も食べるんだから。でも……何て言うか……今の所敵意は無いけど、珍獣扱い?……何か……微妙……)


「どうした?」


 入り口で足を止めたハインに気付き、振り返って傍に戻ってくるクラウス。


「……いえ、ちょっと……。珍獣扱いは初めてだなぁ、と……」


 後半を、ボソボソと、聴こえるか聴こえないかぐらいの声で呟くハイン。


「……珍獣?」


(あっ、ちゃんと聞き取れたんだ)


「敵意や悪意、軽蔑や嫌悪なら、いつもの事だから、大して気にはならないけれど、嬉々とした視線を向けられるのは、檻の中の、珍獣気分です」


(まぁ、猛獣扱いなら、何度か受けていたから、その内慣れるとは思うけど……)

 ハインは一人、遠い目をした。
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