ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

22 食堂での食事

 豊富な種類の料理の数々に、ハインは心底驚き、また、その料理に含まれる、具の多さに驚嘆する。

(凄い……。さすが王城……。ここに有る食料だけで、わたしの家なら一~二年分は持ちそう……)

 ハインの頭の中に浮かぶのは、大切な家族達。

(あの子達、ちゃんと食べてるかなぁ……?)

 少し、心配しつつも、食べ易そうな、具沢山のシチューとパンを一つ選ぶ。

(うわぁ、物凄く美味しそうだ。……だけど、やっぱり給金から引かれるんだろうなぁ。住み込みって言ってたけど、食事付きとは聞いてないし……。となると、調理場を借りて、自分で作った方が安いだろうなぁ。でも、市場に行くにも、隊長に付き添って貰わなきゃ駄目だから、迷惑でしかないだろうし……。後でどれぐらい引かれるのか、ちゃんと確認しよう。少しの間なら、まだ持ってる非常食で我慢すれば良いだけだし)

 そんな事を思いながら、パンとシチューを持って、嫌と言う程の注目を浴びながらも、クラウスの後を付いて行く。

 クラウスが案内するのは、隊員達とは別の、階段を上がる場所。

 階段を上がった先の席に、ゼクトとイージーが座っている。

(……と言うか、ここ、位の高い、上官達の居る場所では?テーブルやイスは、下の階と同じだけど、他の隊員達は上がって来ないし、本当にわたしが居て良いのだろうか?)

 思わずハインが立ち止まっていると、イージーが手招きする。


「ハイン、こっちこっち!」

「はぁ……」


 逆らう理由も無いので、無表情のまま近付く。


「ハインはここに」


 クラウスが、ハインをゼクトの隣を示す。

 本来は、ゼクトの隣にイージーが居るのだが、見習いは指導官の席の前の方が、都合が良いだろうと、イージーがゼクトの前に移動していたのだ。

 クラウスとハインが席に座るのを待ちながら、声を掛けるイージー。


「揃った事だし、じゃあ、食べよう」


 ハインは、食事への感謝を忘れずに、料理へと手を伸ばす。

 先ずは、パンを一口。

 手で千切った時も、あまりの柔らかさに驚いたが、口に入れた時の、香りや食感は、今まで食べていたパンとは、まるで比べ物にはならない程だ。

 これがパンだと言うならば、今まで食べていたパンは、何なんだと思える程に。

(シチューだってそうだ。野菜も肉も柔らかく、特に肉は口の中で蕩けそう。こんなにも美味しい物が有るなんて、それを口に出来るなんて、わたしはなんて贅沢をしてるんだろう。出来る事ならこれを、一口でも良いからあの子達にも食べさせてあげたいなぁ……)

 じっくりと、味を噛み締めながら食べ進めるハイン。


「旨いか?」

「はい」


 クラウスの問い掛けに、無表情ながらも即答すると、クラウスは満足げな笑みを浮かべて相槌を打つ。


「そうか」


(隊長は、本当に良い人だなぁ)

 ここには、ハインとクラウスに、ゼクトとのイージーで、今の所、四人しかいない状況だ。

 そして、下の階と比べると、私語も少なく静かな方だ。

(わたしの家とは大違いだ。かなり気を遣わせてしまってる部分も有るんだろうなぁ)

 ハインはそう思いながら、黙々と食べ進めた。
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