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本編

25 正当防衛

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「一応言って置きますが、正当防衛ですからね?」


 ハインは無表情のまま突っ込み、イージーがその言葉に反応する。


「正当防衛?……って事は、今まで言ってた事以上の、何かが有ったって事?」


 表情には出さないが、渋々と言った感じで答えるハイン。


「はぁ。……まぁ、そうですね。娘、もしくは妻をたぶらかしたと誤解され、剣を向けれられたり、知りたくも無い内情を知って、命を狙われたり。……ああ、後、わたしにとっての“宝”に手を出そうとした方々も居ましたね……」


(ああ……後、その身を買ってやろうと言い出した、変態貴族な雇い主もいたっけなぁ。自分より強い者を組み敷くなんて快感は、そうそう多くは無いとかなんとか……。放っといたらウチの子達に害が及びそうだし、何より、そのままのさばらして置くのは、問題が多そうだったから、取り敢えず殺さない程度に痛め付けて、充分な脅しを掛けて置いたつもりだけど……)


「もういい……。それ、隊長には言わない方がいいぞ。また、キレるだろうからな。言うにしても、時間は置いてやれ。血圧が上がる……」

「はぁ」


 相槌を打ちつつ、ハインは思う。

(聞かれない限り、言わないつもりでいるんだけどなぁ……。でも、何でキレるのかが、よく解らない。隊長は家族や身内、同じ部族ですら無いと言うのに……。それとも隊長は、誰にだってそうなんだろうか?)

 そんな事を考えてると、イージーが大きな溜め息を吐く。


「はぁ~っ。……よく、頑張って来れたねぇ。偉いよハイン」


 イージーが、優しい眼差しでハインを見詰める。


「そんな大袈裟な……。大した事じゃ無いですよ」


(わたしにとってはいつもの事だ。褒められる謂れは無い)

 そう思っているのに、イージーの言葉に、ゼクトまでが賛同する。


「いや、本当に、よく生き延びてくれた。それだけでも凄い事だ」


(やっぱり……隊長も副隊長達も、変わってる。だって、嫌味や皮肉で言われる事はよく有る事だけど、この人達からは、その手の嘲りや、軽蔑と言った蔑みは一度たりとも感じない。感じるのは、労りや優しさばかりしか含まれていない。今日、初めて会っただけの相手だと言うのに。……どうして隊長も副隊長達も、わたしなんかに気を遣うんだろう?身分も何もかもが、全く違うと言う状況なのに。そもそも、今まで会った人達は、特に年の近い男達は皆、いつも、敵意や嫌悪、悪意と言った物しか向けて来なかったのに……。故郷の人達ですら、そう言った物を向けてくる人達が多かったと言うのに……)
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