ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

文字の大きさ
30 / 85
本編

28 罪悪感

 クラウスがふと、家族に仕送りしたかったと言ってたハインを思い出す。


「ハインは凄いな」


 クラウスが感心したように言うが、ハインには、何の事かすら分からない。


「何がですか?」


 そう問い返してみるものの、クラウスの返事も分からない。


「色々、だ」


(……色々?色々って何だろう?本当に、全然意味が解らないんだけど……?)


「それよりハイン、もっと食え。こっちが良いなら、こっちのも取れ」


 豊富な種類を乗せた大皿を、クラウスは再びハインの側に置く。


「……えっ?あの、でも、隊長は?」


(わたしの側に置いたら、物凄く取り辛い筈なのに)


「ハインが食ったら俺も食う。心配するな」

「はぁ……」


(良いのかな……わたしだけがこんな贅沢をして……。まだ、仕事らしい仕事すら、していないって言うのに……)

 クラウスの言葉に相槌を打つが、無表情ながらも戸惑いは隠し切れていない。


「どうした?」


 ハインの様子に、クラウスが問い掛ける。


「何でも有りません。……ただ……」

「ただ?」


 優しく聞いてくるクラウスに、ハインは言い淀む。

(言っても良いのだろうか?こんな事。でも、わたしはこれに、慣れる訳にはいかない。いつかはきっと、辞めなければいけない時が来る。だから、この贅沢に、慣れてはいけない。勿論、この優遇過ぎる扱いにも)


「少し、罪悪感みたいな物が、有るだけです」

「……罪悪感?」


 訝しげなクラウスを、正面から見据えて、頷くハイン。


「わたしだけが、贅沢な思いをしている事。……隊長達にとっては普通の事でも、わたしにとっては物凄く贅沢な事です。沢山食べられる事、安心して休める建物が有る事、つくろわ無くてもいい服が着れる事。当たり前だと思われてるこれ等は、一部の人間にとって、入手するのが困難な物になるんです。だから、家族の中でもわたしだけが、そんな思いをするのは不公平だなと……」





 この遣る瀬無さは何だろう……。

 ハインの言葉に、その場に居た三人は、何も言えなくなる。

 ハインの言葉通り、それは当たり前過ぎて、当たり前とすら思ってもいなかった事。

 意識する事無く生きて来た事。

 だから、余計に言葉が出ない。




 重苦しい雰囲気が漂い始め、それに気付いたハインが補足を加える。


「あの……気にしないで下さいね?く言うわたしも、故郷を離れて知った事ですし、だからこそ、雇って貰えて本当に感謝しています。雇って損したなんて思われないように、目一杯頑張りますので、ジャンジャンき使って下さいね。ご指導宜しくお願いします」


 ハインは背筋を伸ばして、頭を下げる。
感想 37

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

メリザンドの幸福

下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。 メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。 メリザンドは公爵家で幸せになれるのか? 小説家になろう様でも投稿しています。 蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。