ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

31 ハインの思惑と戸惑い

「「「どうでもいい……」」」


 見事なまでに、声をハモらせる三人は、各々、驚きと呆れと、苦々しい物が綯い交な まぜになった表情を見せるが、ハインは全く気付かない。

(あの子達と共に生き、暮らしてけるのなら、それでいい……)


「……悔しくは無いの?」


 イージーがポツリと聞く。

 悔しい?何の事だろうと悩むが、直ぐに思い当たる。


「戦場で必要なのは、武術の腕や、知識だけじゃ、駄目なんです。確かにその二つは大事な物だけど……。冷静な判断力とそれに伴う行動力、揺るぎ無い信念が無ければ、勝てる物も勝てないです。味方が敵に成り代わる事も有れば、敵が協力者になる事だって有る。結局、誰がどう動くのかなんて、分からないのですよ。そんな所に、常に居た者を信じるなんて、心臓を握らせてるようなものですよ?」


(ここまで言えば、わたしの事も、警戒せざるを得ないだろう。賞金稼ぎなんて、そんなものだから)


「……お前は違うだろ」


 それなのに、クラウスは怒ったような、呆れたような声で、苦々しくも否定する。

(やっぱり、変な人だなぁ……)

 そんなクラウスを、不思議そうに見るハイン。


「どう……かなぁ。どうでしょう?わたしには、分かりません」


(既に、この手は汚れている。食べる為では無い命を、わたしはこの手でほふって来たのだから)

 わざと、挑発するような、自嘲的な笑みを見せる。

 三人共、その笑みを、見た筈だ。

 現に、ゼクトとイージーからは、息を吞む気配がした。

 なのに、クラウスは再度口を開く。


「お前は違う。でなきゃ、他人の心配なんてしないだろ。忘れたのか?お前が言ったんだぞ。必要以上に関わるなと。俺みたいな奴が、自分の所為で、悪く言われるのは嫌だと」


 思ってもみない言葉セリフに、ハインが戸惑う。


「それは……」


(確かに言った。でも、あれは……)


「そんな事言ったの?ハインが?」


 少し驚きながら、イージーがクラウスに問う。


「ああ。勿論断ったがな」

「……納得したのか?こいつは」


 多分、ハインはしていないのだろうとゼクトは予測する。これまでの発言や考え方からして、きっとしていないのだろうと思いながら、確認の為にクラウスへと聞いたのだ。


「条件付きでな」

「「条件?」」


 一体どんな、と言う訝しげな顔をする二人。


「最悪の事態になったら、罪を被せて切り捨てろ。それが上に立つ者の役目だと」

「……納得したのか?隊長は」


 驚きながらも、再度同じ言葉で対象者だけを変えて問うゼクト。


「一応はな」


 あっさり言うクラウスに、イージーが反論する。


「らしく無いよ!そんなの!」

「同感だな」


 ゼクトとイージーの二人が、納得出来ないと言う顔をする。


「そう言うな。つまり、最悪の事態にさえしなければ良い、と言う事だ」


 その含みの有る言葉に、ハインは全く気付いて無いが、長年の付き合いが有る二人には感じる物が有った。


「最悪の事態……か」

「全く、とんでもない約束を交わしたねぇ……」
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