ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

40 ハインの家族 (クラウス視点)

「先程の住所……ここからでは夜通し軍馬で飛ばしても、丸三日は軽く掛かる筈だ。これ程離れて居ては、会いたくなっても直ぐには会えないだろう。家族を、こっちに呼ばなくても良いのか?」


 クラウスがそう聞くと、ハインから、返事が返る。


「はぁ。ウチの子達は、人の多い所が苦手で……」

「……達?」


 一人じゃないのか?と思い、クラウスが聞き返す。


「はぁ。五人居ます」

「ごっ……」


 あまりの驚愕に、言葉が続かない。

(十八で子持ちってだけでも驚いたのに、五人も居るのか?!……まさか……)


「母親違いとか言うんじゃないだろうな?」


(こいつには縁遠そうな言葉だが、十八で五人は無理が有る!……いや、待て、双子とか……なのか?)


「同じ……ですが?それが何か?」


 ただただ不思議そうにクラウスを見返すハイン。


「……いや、別に……」


 これ以上、詮索して良いものかと、視線を泳がせるクラウス。

(そう言えば、地方や部族に依っては、十二~三才ぐらいで結婚すると聴いた事が有る。こいつもその手の類いか?……いや、それよりも……)


「子供が居るのなら……いや、いい」


 クラウスは、続けようとした言葉を無理矢理呑み込み目を反らす。

 そこにハインが言葉を放つ。


「子供が居るなら、賞金稼ぎなんて危険な仕事は辞めて置け……ですか?」


 瞳には、何の感情も乗せないままで、ハインは淡々と言い放つ。

 先程の輝きが、まるで夢か幻のように、消え失せる。

 そこに有るのは凍り付いた瞳。まるで、あの時と同じような。

 クラウスの中で、遣る瀬無い思いが沸き上がる。


「金や仕事に、不自由をした事の無い俺がそんな事を言っても意味が無い……。俺が言いたかったのは、子供が居るのなら、家族を側に置くべきだと言いたかったんだ。子供達も、ハインが側に居るのなら、少しぐらい苦手な事も、我慢するんじゃないのかってな。だけど、それが出来るなら、お前は既にやっている。そんな気がしたからこそ言い止めたんだ」


 そうだろう?と言った視線でハインを見ると、少しだけ、よくよく見ないと分からない程度に眉を寄せ、困惑したような感情を覗かせる瞳。

 顔は無表情だが無表情ながらもその瞳には、本の少しの感情が表れる為、よくよく見れば、何と無く判るのだ。

(そうだ。それで良い。困惑だろうが何だろうが、無いよりはマシだ)


「……共に、暮らしたいです。でも、それは、今だけの一時しのぎじゃ無く、ちゃんと、暮らしたいんです……。だから、危険だろうが何だろうが、明日を掴む為なら、多少の犠牲は止むを得ない。稼げなければ、待つのは死です。危険だ何だと言ってはいられない。ただ、それだけです」


(静かな瞳、揺るがない思い。だからなのか?こいつがこれ程強いのは。見ていて、痛々しい程に鈍いのは……。本っ当にこいつは……)

 怒りとも、呆れとも付かない感情が胸を占める。

 それを吐き出すように、溜め息を吐く。


「……そうか。取り敢えず、行くぞ」

「はぁ」


 そうしてクラウスは、止めていた足を動かした。
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