43 / 85
本編
41 訓練場 (クラウス視点)
しおりを挟む
ハインと共に、ハインと初めて対面した訓練場へと向かい、訓練の様子をハインに見せる。
それを無表情のまま、瞳だけを動かし、黙って見ているハインを横目に、ハインの剣技に付いて、思いを馳せる。
(ハインの剣技には型が無い。普通、訓練を受けた者は、基礎が有って当然だが、ハインの場合、基礎らしき物は、全く無かった。いや、この場合、俺達の知る基礎とは全くの別物だと言うべきか……。限られた時間での手合わせだった。だからこその引き分けだ。これがもし、無制限での一本勝負だったなら、この俺が負けていた可能性が高い。参ったな……。これでも、将軍格を除いた隊長格の中でなら、誰にも負けない腕を持つと、自他共に認められて居たんだが、まさか、そんな俺が、同じ国の同じ場所で、競える相手に出会すなんて、想像すらしていなかった。街中で出会った程度なら、きっと気付かず普通にそのまますれ違っていただけだろう。そんな、一般人だと誤認させられる程の腕を持つ強者が、自分の部下になるなんて、嬉しくて仕方無い。この先、そんな相手と好きなだけ手合わせが出来るなんて、考えただけでもワクワクする。本気で遣り合える相手が居る。それが、これ程楽しく嬉しい物だなんて知らなかった……。これは、絶対に横取りされないように、充分気を付けなくては……)
「暫くは見学、と言う形で、訓練を見ていて貰う。今の段階でハインの実力が、俺と同等以上だと、他の隊に知られる訳にはいかないからな。人前で身体を充分に動かせないのは苦痛かも知れないが、これも仕事の内だと思って、我慢して欲しい」
「はぁ」
あっさりと相槌を打つハインに、念の為、言葉を重ねる。
「言って置くが、『賞金稼ぎだから』と言う理由じゃないからな?」
「……そうなんですか?」
(やはり、勘違いしていたのか……)
「そもそも、賞金稼ぎと言っても、ハイン程の腕前を持つ者は稀だ。それとも何か?賞金稼ぎを名乗る者は皆、ハインと同等の腕前を持つとでも言うのか?」
「それは……無いです」
(当然だ。そんな事が罷り通るなら、この国は滅んでいる)
「お前を、他の隊に取られたく無い。それが理由だ」
きっぱりと言い切るクラウスに、ハインは驚く。
そんな物好きが、他にも居るのだろうか?と。
訝しげなハインの視線を感じたのか、再度クラウスが口を開く。
「知れば、必ず連れ去ろうとする男に、一人心当たりが有るからな。あの将軍を止められるのは、王か、その家族のみだ」
(だからこそ、王子に早い事、話を付けなければならないのだが、肝心の本人が、話を聞ける状態じゃ無い。事、人事に関しては)
「兎に角……そういう理由だから、俺と同等以上だと言う事を、呉々も、内密にしていて欲しい」
それを無表情のまま、瞳だけを動かし、黙って見ているハインを横目に、ハインの剣技に付いて、思いを馳せる。
(ハインの剣技には型が無い。普通、訓練を受けた者は、基礎が有って当然だが、ハインの場合、基礎らしき物は、全く無かった。いや、この場合、俺達の知る基礎とは全くの別物だと言うべきか……。限られた時間での手合わせだった。だからこその引き分けだ。これがもし、無制限での一本勝負だったなら、この俺が負けていた可能性が高い。参ったな……。これでも、将軍格を除いた隊長格の中でなら、誰にも負けない腕を持つと、自他共に認められて居たんだが、まさか、そんな俺が、同じ国の同じ場所で、競える相手に出会すなんて、想像すらしていなかった。街中で出会った程度なら、きっと気付かず普通にそのまますれ違っていただけだろう。そんな、一般人だと誤認させられる程の腕を持つ強者が、自分の部下になるなんて、嬉しくて仕方無い。この先、そんな相手と好きなだけ手合わせが出来るなんて、考えただけでもワクワクする。本気で遣り合える相手が居る。それが、これ程楽しく嬉しい物だなんて知らなかった……。これは、絶対に横取りされないように、充分気を付けなくては……)
「暫くは見学、と言う形で、訓練を見ていて貰う。今の段階でハインの実力が、俺と同等以上だと、他の隊に知られる訳にはいかないからな。人前で身体を充分に動かせないのは苦痛かも知れないが、これも仕事の内だと思って、我慢して欲しい」
「はぁ」
あっさりと相槌を打つハインに、念の為、言葉を重ねる。
「言って置くが、『賞金稼ぎだから』と言う理由じゃないからな?」
「……そうなんですか?」
(やはり、勘違いしていたのか……)
「そもそも、賞金稼ぎと言っても、ハイン程の腕前を持つ者は稀だ。それとも何か?賞金稼ぎを名乗る者は皆、ハインと同等の腕前を持つとでも言うのか?」
「それは……無いです」
(当然だ。そんな事が罷り通るなら、この国は滅んでいる)
「お前を、他の隊に取られたく無い。それが理由だ」
きっぱりと言い切るクラウスに、ハインは驚く。
そんな物好きが、他にも居るのだろうか?と。
訝しげなハインの視線を感じたのか、再度クラウスが口を開く。
「知れば、必ず連れ去ろうとする男に、一人心当たりが有るからな。あの将軍を止められるのは、王か、その家族のみだ」
(だからこそ、王子に早い事、話を付けなければならないのだが、肝心の本人が、話を聞ける状態じゃ無い。事、人事に関しては)
「兎に角……そういう理由だから、俺と同等以上だと言う事を、呉々も、内密にしていて欲しい」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
150
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる