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本編

42 ハインの知名度が上がらない理由

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 ハインが頷けば、クラウスはホッとしたように笑う。

(そんなに心配しなくても、大丈夫だと思うんだけど)

 万が一噂が流れたとしても、ハインの姿を見た隊長格及び、その隊員達は、有り得ないと断言するだろう。

 それはここ、王城に限らず、過去、ハインに出会った者達全てが、その見掛けと実力の差に騙されたのだから。

 そして、ハインの実力を、目の当たりにしたとしても、その殆どの者達は、その事実を否定するのだ。

 だから、知名度も上がらなかったのだと、ハインは思っているが、ハインを知る者達の中で、ハインの名を出す事自体が禁句に近い状態なのだ。

 ハインは一部の同業者から、『守銭奴』や『荒稼ぎ』と言った具合で呼ばれているが、ハインの見掛けと実力の差に騙され、叩きのめされた者達は数多く、そんな輩はハインの名を聞いただけで震え上がる程だ。

 その為、ハインの名を出せば、報復を恐れてか、一同に口を閉ざすのだ。

 ハインに叩きのめされ、意識を失う寸前に、ハインに言われた言葉が、脳裏に刻み込まれたようだ。

 曰く、二度は無いと思って下さい。それと、余計な事を言った場合もですよ?と言う、淡々とした声だけが耳に残ったのだろう。

 その為、ハインの名を聞いただけで、そんな奴は知らないと隠すのだ。

 だからこそ、裏で『守銭奴』や『荒稼ぎ』と言えば、ハインを示すのだが、『ハイン』と名を出す者は、ハインの実力を知らない、叩きのめされた者では無い者達で、ハイン=守銭奴、荒稼ぎと言った渾名とは、結び付かないようだ。

 そして、一度でも叩きのめされた者達は、そんな奴等に対して、同じ目に合いやがれと、口を噤んでいたり、叩きのめされた事実を知られたくは無いからと、ハインの事を、誰が幾ら調べても誰も話さず、中には、ハインに助けて貰った事の有る者達とて、話してハインに迷惑を掛ける事を心配しているので、知らない振りをしてくれている為に、実在してるのか?と思われてしまう程なのだ。

 ハインを知る者達を探すには、ハインを連れて行く事が一番手っ取り早い事なのだが、それを知らない者達は、ハインの知名度が無さ過ぎて、調べようも無く、行き詰まる事になり、余計に侮る羽目になるのだが、そうして侮り、痛い目を見ると言う事が、繰り返されているなんて誰も思っていないだろう。

 何せ、そんな事になってるなんて、当の本人で有る、ハインですら知らなかった事なのだから。

 だから、喩え、ハインと言う名の賞金稼ぎを調べても、何も出て来ないし、出たとしても、ハインを見た事の無い者達の噂ぐらいで、ハインを見ても、気付く事無く素通りするだけなのだ。
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