ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

44 訓練後の後片付け

 夕方になり、訓練を終えて、食事だと、訓練場を後にし、食堂へと足を向ける隊員達。

 一部の者が、訓練で使われていた道具を片付けているのを見て、ハインが自ら近付き、残っている隊員達に声を掛ける。


「わたしも手伝います。どこに置けば良いのか教えて下さい」

「ちょっと待て、それは見た目よりも重いぞ!」


 隊員達がハインの持とうとした物を見て、待ったを掛けるが、ハインはそれを、ひょいっと難なく持ち上げる。


「えっ……。お前、思ったより、力が有るんだな……」


 ハインの見た目はひょろっとした細さなので、ハインでは持てないだろうと思っていたのだ。

 既に重そうな剣を下げているし、十四~五才にしか見えないからだ。


「はぁ。見た目に依らずと、よく言われます。それで、どこに持っていけば良いんですか?」

「あー……」


 教えて良い物かと、隊員達が、ハインの指導者で有るクラウスを見る。

 そもそもハインは、仕事中ともなれば、普段、ジッとしている事の方が少ない。

 いつもなら、試合の後でも、人目に付けば直ぐ仕事、どれ程試合をこなそうと、雇い主には関係無いし、仕事が入らなくても、大会等で勝った後なら、その稼ぎを目当てに襲ってくる輩が多いのだ。

 それこそ、家畜に群がる獣のように。

 勿論、そんな気を二度と起こさないように、来る者全てを打ち負かしていたからこそ、守銭奴だの荒稼ぎだのと呼ばれるようになったのだが、ハイン的には他人の評価等、どうでも良かったりするので、ハインは気にもせずに、ハインの懐を狙う者達に地獄を見せていた訳だが、元々酸素の薄い山育ちの為か、体力も人並み以上に有るのだ。

(そうでなくとも、今日は昼前に手合わせしただけで、大した仕事もしてない状態だし。これぐらいはさせて貰わないと……)

 ハインは道具を抱えたまま、指示を待つ。

 すると、クラウスも訓練道具を手に取り、ハインを促した。


「行くぞ」

「……あの、隊長?指示さえして頂ければ、充分ですよ?」


 何も、隊長自ら動かなくてもと、ハインは言ったつもりなのだが、クラウスはあっさりと言う。


「言ったろ、俺はお前の指導者だと。生憎あいにく俺は、部下の育成、指導に、手を抜く気は無いからな」


 つまり、自ら手本として、ハインと一緒に雑用を熟す、と。


「……はぁ」


(本当に、変な人だなぁ。面倒事を、自ら被るなんて。今日、初めて会ったのに。会ったばかりで名乗り上げるし、賞金稼ぎと知っても、態度を変えない所か、家族とまで言い出す始末だし。こんな人、わたしは知らない。分からない。だから、この人は、わたしの知らない初めてを、わたしに与えてくれるのだろう……。こんな人だったら良かったのに。こういう人だったらきっと、違っていただろうに。だけど、それは有り得ない。過ぎ去りし過去で有り、覆せない物だから。忘れてはいけない、彼女の事を。彼女の最期を。あれは、過去では無く、この先の未来にまで危惧された事だから。……彼女は話さなかった。死を望んでいながらも、わたし達を売る事はしなかった。気高く美しいあの花は、静かに笑顔で散っていった。知られれば、こんな結末にもなり得ると示すかのように……。わたしは、自ら選んだ事だから、喩え誰かに素性を知られても、命を狙われようが、切り捨てられようが、仕方の無い事。周りの全てが敵になっても、迎え撃つ覚悟は出来ている。それまでは、極力知られないよう、細心の注意を払わなければ。家族とまで言ってくれた、この人を巻き込まない為にも……)
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