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本編
49 刺青
ハインは腕に、ハインの部族特有の刺青が彫られているのだが、この国に限らず、周辺国やここ、クルセイと呼ばれる領域では、刺青を彫る部族は殆ど居らず、刺青と言えば、誰かの奴隷か、昔奴隷だった者達の認識が強い。
その為、刺青と言えば、無理矢理奴隷にされた者達と言う認識が強いのだ。
この国は大昔に奴隷制度が廃止されたが、貴族や金持ち連中の中には、忠誠心の証や、自身の所有物として、裏で刺青や焼き印を付けさせている者達もいる。
だからこそ、刺青と聞けば誰もが敬遠するし、一緒に風呂に入ろうと誘われる事も無くなるだろうと思い、口にしたのだ。
これはハインの思い付きと言うよりは、ハインの弟が言った事である。
男が相手なら、理由を言わずに隠すより、刺青を見られたくないと言った方が、きっと勝手に勘違いするよと。
そしてハインの弟の思惑通り、クラウス達は刺青と聞いて、どこぞの貴族や金持ち連中に付けられたものだろうと勘違いをした。
その為、クラウスは苦々しい顔付きで言葉を放つ。
「……誰にも入らせないように見張っててやるから、一人で入れば良い。使い方も教えてやる。俺は呼び出される事も有るだろうが、その時は他の奴に頼むから、安心して入れ」
「?!いえ、そこまでして頂かなくても結構です!水桶さえ借りる事が出来れば、問題有りませんから。入隊して直ぐのわたしがそんな厚待遇を受けたりすれば、他の方々が良い気はしません」
クラウスの言葉にハインは驚き、そこまで迷惑を掛ける訳にはいかないと辞退するが、ハインの言葉を聞いて、頷くようなクラウスでは無い。
「大きな傷痕が有るから、個別に入らせる事にしたと言えば、全く問題無い。他人の視線が気になる程の傷痕だと言えば、誰もが納得するだろう。ハインも、刺青の事は口にしなくていい。他人に見られたい物では決して無いだろうからな」
「……はぁ」
実際ハインの傷痕は、大型の肉食獣と対戦した事により出来た傷痕なので、かなり目立つ物だ。ただ、幸いと言うべきか、一族の証でも有る刺青には一切影響の無い場所に有るが、くっきりとその腕に残っている。
ハインの部族にとって、刺青は部族の一員で有り、神聖な物。刺青に傷を入れると言う事は、誇りを傷付ける事と同意で、屈辱でも有る。だが、何よりも屈辱なのは、人狩りで命を奪われた上に、その誇りの刺青をも奪われる事である。
その為、人狩りが横行していた時代は、そんな連中に奪われるぐらいならと、死を覚悟した段階で、自ら刺青を傷付けるか、仲間に頼むかしていた事も有るようだ。
普段は刺青を包帯で隠してはいるし、公共の浴場での場合も巻いたままで入浴しているのだが、公共の浴場は性別を勘違いされてる事が多い為、極力水桶で身体を拭って済ましているから、一人でゆっくりと入れるなんて、贅沢過ぎるんだけどなぁと思っていたのだった。
その為、刺青と言えば、無理矢理奴隷にされた者達と言う認識が強いのだ。
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そしてハインの弟の思惑通り、クラウス達は刺青と聞いて、どこぞの貴族や金持ち連中に付けられたものだろうと勘違いをした。
その為、クラウスは苦々しい顔付きで言葉を放つ。
「……誰にも入らせないように見張っててやるから、一人で入れば良い。使い方も教えてやる。俺は呼び出される事も有るだろうが、その時は他の奴に頼むから、安心して入れ」
「?!いえ、そこまでして頂かなくても結構です!水桶さえ借りる事が出来れば、問題有りませんから。入隊して直ぐのわたしがそんな厚待遇を受けたりすれば、他の方々が良い気はしません」
クラウスの言葉にハインは驚き、そこまで迷惑を掛ける訳にはいかないと辞退するが、ハインの言葉を聞いて、頷くようなクラウスでは無い。
「大きな傷痕が有るから、個別に入らせる事にしたと言えば、全く問題無い。他人の視線が気になる程の傷痕だと言えば、誰もが納得するだろう。ハインも、刺青の事は口にしなくていい。他人に見られたい物では決して無いだろうからな」
「……はぁ」
実際ハインの傷痕は、大型の肉食獣と対戦した事により出来た傷痕なので、かなり目立つ物だ。ただ、幸いと言うべきか、一族の証でも有る刺青には一切影響の無い場所に有るが、くっきりとその腕に残っている。
ハインの部族にとって、刺青は部族の一員で有り、神聖な物。刺青に傷を入れると言う事は、誇りを傷付ける事と同意で、屈辱でも有る。だが、何よりも屈辱なのは、人狩りで命を奪われた上に、その誇りの刺青をも奪われる事である。
その為、人狩りが横行していた時代は、そんな連中に奪われるぐらいならと、死を覚悟した段階で、自ら刺青を傷付けるか、仲間に頼むかしていた事も有るようだ。
普段は刺青を包帯で隠してはいるし、公共の浴場での場合も巻いたままで入浴しているのだが、公共の浴場は性別を勘違いされてる事が多い為、極力水桶で身体を拭って済ましているから、一人でゆっくりと入れるなんて、贅沢過ぎるんだけどなぁと思っていたのだった。
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