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本編
51 視察の旅の日
ハインは通常通り、腰に剣を下げた状態で、クラウスと共に訓練場に向かうと、夜勤の見回りとすれ違い、挨拶だけ交わす。
違う隊の者達からは、当然不快な視線をハインは浴びるが、ハインはこれも仕事の内だと割り切っている。
朝の訓練に使う道具を出したり、剣の訓練には参加しないが、体力維持の為の運動には参加する。
ハインは目立つ事の無いように、最後尾を走っていたり、動きを遅めにしてストレッチをしたりしているが、息切れ等はしていない為、見る者が見れば、他の者達よりも体力に余裕が有ると感じるだろう。
ただ、それは見た目に惑わされずに見る事が出来る者に限っての話だが。
そうして殆どの時間をクラウスと共に過ごし、クラウスが王族の呼び出しや、用が有る時には、ハインはイージーとゼクトの二人と一緒に行動する日々が続いている。
ハインが他の隊の者達から嫌がらせを受けないのは、ハインの傍にクラウスか、副隊長達が居るからに他ならない。
実力差から考えて、本当にハインが相手を殺す気ならば、他の隊員では瞬殺されるだけだろう。
ハインの実力は、それ程に高いからこそ、隊長格が付くのは当然なのだが、それを知らない者達は、ハインが特別扱いされていると勘違いしているのだ。
今の時期に騒ぎを起こせば、厳罰を下される事も相まって、ハインが一人で行動出来る時期まで居るならば、それからで良いと企んでいる者達もいるのだろう。
ハインは未だに王子との対面を果たしてはいないが、そのまま忘れていて欲しいなと、思っていたりする。
勿論そう言う訳にはいかないようだと解ってはいるつもりだが。
第一王女が視察の旅に出ると言われた当日、王城内は朝から騒がしく、クラウスも王子と共に第一王女を見送る為、ハインを両副隊長達に任せて王子の部屋へと向かう。
ハインは相変わらずの無表情っぷりでクラウスを見送り、両副隊長の指示を待つ。
「何も起こらないとは思うが、王城内でもこれだけの騒ぎだ。第一王女に何か有ったら困るからな。将軍は街の外まで同行するらしいぞ」
「王子やウチの隊長は、城内で見送るらしいけどね」
「それじゃあ、第二王女も隊長達と見送るんですね」
何気無くハインが呟くと、ゼクトがそれを否定する。
「いや、第二王女は昨夜の内に挨拶を済ませているからな。見送りには顔を出さない筈だ」
「病弱……とまではいかないんだけど、少し身体が弱くてね。その上、部屋に籠りがちだから、すぐに体調を崩されてしまうんだよ」
「……危なくないのですか?」
ハインの疑問に首を傾げるイージー。
「何が?」
「手薄では有るな。この騒ぎに紛れて不審者が入り込まないとも限らない。……一応ルナルティーザ姫の居住区も巡回して置くか」
ゼクトはハインの言いたい事を直ぐに察知し返事をすると、イージーがその言葉で理解した。
「ああ、そう言う事か。そうだね。あのガース隊長は嫌な顔をしそうだけど、まぁ、その時は王子の名前を借りちゃえば良いか」
イージーは気軽にそう言うと、第二王女の居住区に足を向けて歩き出す。
「……いいんですか?」
一応ハインはゼクトに問えば、ゼクトも気楽に返答する。
「構わんだろ。ガース如きに王子の名を使うのは気が引けるが、あの王子なら話を合わせて下さるし、事後報告にはなるが、隊長にも報告はするからな」
軽快な足取りで、前を歩くイージーを、追う形で歩き出すゼクト。
当然ハインもその後に続く。
「……何事も無ければ良いんだけど……」
二人には聴こえないよう、殆ど声に出さずに呟く。
何も無い、と思いたい。だが、何故か嫌な予感がするのだ。
この城内に、浮わついた空気を害する何かが存在する。
それは明らかな“異物”として、ハインの感覚に引っ掛かったのだ。
違う隊の者達からは、当然不快な視線をハインは浴びるが、ハインはこれも仕事の内だと割り切っている。
朝の訓練に使う道具を出したり、剣の訓練には参加しないが、体力維持の為の運動には参加する。
ハインは目立つ事の無いように、最後尾を走っていたり、動きを遅めにしてストレッチをしたりしているが、息切れ等はしていない為、見る者が見れば、他の者達よりも体力に余裕が有ると感じるだろう。
ただ、それは見た目に惑わされずに見る事が出来る者に限っての話だが。
そうして殆どの時間をクラウスと共に過ごし、クラウスが王族の呼び出しや、用が有る時には、ハインはイージーとゼクトの二人と一緒に行動する日々が続いている。
ハインが他の隊の者達から嫌がらせを受けないのは、ハインの傍にクラウスか、副隊長達が居るからに他ならない。
実力差から考えて、本当にハインが相手を殺す気ならば、他の隊員では瞬殺されるだけだろう。
ハインの実力は、それ程に高いからこそ、隊長格が付くのは当然なのだが、それを知らない者達は、ハインが特別扱いされていると勘違いしているのだ。
今の時期に騒ぎを起こせば、厳罰を下される事も相まって、ハインが一人で行動出来る時期まで居るならば、それからで良いと企んでいる者達もいるのだろう。
ハインは未だに王子との対面を果たしてはいないが、そのまま忘れていて欲しいなと、思っていたりする。
勿論そう言う訳にはいかないようだと解ってはいるつもりだが。
第一王女が視察の旅に出ると言われた当日、王城内は朝から騒がしく、クラウスも王子と共に第一王女を見送る為、ハインを両副隊長達に任せて王子の部屋へと向かう。
ハインは相変わらずの無表情っぷりでクラウスを見送り、両副隊長の指示を待つ。
「何も起こらないとは思うが、王城内でもこれだけの騒ぎだ。第一王女に何か有ったら困るからな。将軍は街の外まで同行するらしいぞ」
「王子やウチの隊長は、城内で見送るらしいけどね」
「それじゃあ、第二王女も隊長達と見送るんですね」
何気無くハインが呟くと、ゼクトがそれを否定する。
「いや、第二王女は昨夜の内に挨拶を済ませているからな。見送りには顔を出さない筈だ」
「病弱……とまではいかないんだけど、少し身体が弱くてね。その上、部屋に籠りがちだから、すぐに体調を崩されてしまうんだよ」
「……危なくないのですか?」
ハインの疑問に首を傾げるイージー。
「何が?」
「手薄では有るな。この騒ぎに紛れて不審者が入り込まないとも限らない。……一応ルナルティーザ姫の居住区も巡回して置くか」
ゼクトはハインの言いたい事を直ぐに察知し返事をすると、イージーがその言葉で理解した。
「ああ、そう言う事か。そうだね。あのガース隊長は嫌な顔をしそうだけど、まぁ、その時は王子の名前を借りちゃえば良いか」
イージーは気軽にそう言うと、第二王女の居住区に足を向けて歩き出す。
「……いいんですか?」
一応ハインはゼクトに問えば、ゼクトも気楽に返答する。
「構わんだろ。ガース如きに王子の名を使うのは気が引けるが、あの王子なら話を合わせて下さるし、事後報告にはなるが、隊長にも報告はするからな」
軽快な足取りで、前を歩くイージーを、追う形で歩き出すゼクト。
当然ハインもその後に続く。
「……何事も無ければ良いんだけど……」
二人には聴こえないよう、殆ど声に出さずに呟く。
何も無い、と思いたい。だが、何故か嫌な予感がするのだ。
この城内に、浮わついた空気を害する何かが存在する。
それは明らかな“異物”として、ハインの感覚に引っ掛かったのだ。
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