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本編
58 王子との初顔合わせ
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ハインは必ず守ると言い切り、音のする方へと顔を向け、少し目を細めながら時を待つ。
ルナルティーザの背後に回していた手に、常に隠し持っている小刀を握る。と同時に、一人の男が息を切らせながら、部屋の中へと駆け込んで来た。
「兄様……」
(これが王子……)
ルナルティーザの呟きに、持っていた小刀を元の場所へと隠すハイン。
ルナルティーザを抱き締めている格好のハインを認識した王子は、妹が襲われていると思い込み、ハインに激昂し、掴み掛かる。
「貴様ぁっっ!!」
ハインはされるがまま、ルナルティーザから引き離され、そこに遅れてクラウスが到着する。
王子が腕を振り上げるのを見て、止めに入ろうとするが間に合わない。
「まっ……止めろ!ウィン!!」
ガッ!!
ハインは無抵抗のまま、王子に顔を殴らせる。
その後直ぐにクラウスが王子を羽交い締めにするが、王子の怒りは治まる筈も無く暴れ出す。
「離せっ!殺してやるっっ!!」
「ちょっと待てっ!取り敢えず落ち着けっっ!!」
「これが落ち着いていられるか!!!」
思わず、事態の成り行きに付いていけなかったルナルティーザが我に返り、ハインへと駆け寄り、その腕を取る。
「庇えずにいて、申し訳御座いません!」
ルナルティーザの言動に王子は驚くが、それでも、誤解したままだった王子の怒りは増すばかり。
「ルナ!そいつから離れろ!!」
王子の言葉に振り返り、ルナルティーザが言葉を放つ。
「兄様の誤解です!この方はわたくしを救って下さったの!わたくしっ……わた、くし……」
ルナルティーザは誤解されたハインの為に、何が有ったのかを言おうとするが、思い出すだけで震えが止まらず、喉が凍り付いたかのように声が出なくなる。
その様子にハインは、掴まれた方とは逆の手で、ルナルティーザの手を励ますように優しく摩る。
妹の異常な雰囲気と、それに対応する無表情のハインを見据え、冷静にならなくてはと、何とか怒りを押し込み、暴れるのを止める。
王子の抵抗が無くなり、必死で冷静になろうとしている事を理解したクラウスは、王子の拘束を緩める。
ただし、見せ掛けでは困るので、完全に解く事はしない。
「落ち着いたな?」
「……ああ。何とかな」
王子は深呼吸をして、ハインに声を掛ける。
「何が有ったのか、説明しろ」
だが、ハインは答えない。
一人分の、音と気配が近付いて来ていたからだった。
ルナルティーザの背後に回していた手に、常に隠し持っている小刀を握る。と同時に、一人の男が息を切らせながら、部屋の中へと駆け込んで来た。
「兄様……」
(これが王子……)
ルナルティーザの呟きに、持っていた小刀を元の場所へと隠すハイン。
ルナルティーザを抱き締めている格好のハインを認識した王子は、妹が襲われていると思い込み、ハインに激昂し、掴み掛かる。
「貴様ぁっっ!!」
ハインはされるがまま、ルナルティーザから引き離され、そこに遅れてクラウスが到着する。
王子が腕を振り上げるのを見て、止めに入ろうとするが間に合わない。
「まっ……止めろ!ウィン!!」
ガッ!!
ハインは無抵抗のまま、王子に顔を殴らせる。
その後直ぐにクラウスが王子を羽交い締めにするが、王子の怒りは治まる筈も無く暴れ出す。
「離せっ!殺してやるっっ!!」
「ちょっと待てっ!取り敢えず落ち着けっっ!!」
「これが落ち着いていられるか!!!」
思わず、事態の成り行きに付いていけなかったルナルティーザが我に返り、ハインへと駆け寄り、その腕を取る。
「庇えずにいて、申し訳御座いません!」
ルナルティーザの言動に王子は驚くが、それでも、誤解したままだった王子の怒りは増すばかり。
「ルナ!そいつから離れろ!!」
王子の言葉に振り返り、ルナルティーザが言葉を放つ。
「兄様の誤解です!この方はわたくしを救って下さったの!わたくしっ……わた、くし……」
ルナルティーザは誤解されたハインの為に、何が有ったのかを言おうとするが、思い出すだけで震えが止まらず、喉が凍り付いたかのように声が出なくなる。
その様子にハインは、掴まれた方とは逆の手で、ルナルティーザの手を励ますように優しく摩る。
妹の異常な雰囲気と、それに対応する無表情のハインを見据え、冷静にならなくてはと、何とか怒りを押し込み、暴れるのを止める。
王子の抵抗が無くなり、必死で冷静になろうとしている事を理解したクラウスは、王子の拘束を緩める。
ただし、見せ掛けでは困るので、完全に解く事はしない。
「落ち着いたな?」
「……ああ。何とかな」
王子は深呼吸をして、ハインに声を掛ける。
「何が有ったのか、説明しろ」
だが、ハインは答えない。
一人分の、音と気配が近付いて来ていたからだった。
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