ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

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本編

60 虫

 王子がハインへと向き直り、再びハインに問う。


「もう一度聞く。何が有った?」


 その問いにハインが答える前に、ルナルティーザが反応し、ずっと掴んでいたハインの腕を、知らず知らずの内に、強く握り締める。

 ハインは、不審者でしかないハインの言葉をちゃんと聞こうとする、その姿勢に再度驚いていた。

 そしてハインは、ルナルティーザがハインの腕に加える力に対し、眉をひそめるでも、振り払うでも無く、何事も無かったかのように、無表情のまま王子の問いに答える。


「何も……。何も有りません」


 ハインの淡々とした返答に、王子の怒りが再度、込み上げてくる。

 何も無かったのに、妹を抱き締めていたと言う気か?!と、怒鳴りそうになるが、歯を食いしばり、何とか堪えていると、ハインが言葉を続けた。


「ただ……虫が……。余程恐かったのでしょう。追い払いましたが、姫君が怯えていたのでつい、ウチの子達にするような接し方をしてしまいました」


 ハインのその言葉に、言質を取ったとばかりにラズが縛られたまま叫ぶ。


「そこの姫は、虫なんかで怯えるものか!!いい加減な事をーー」


 ハインの鋭い視線と殺気のような威圧感に、思わず黙り込んでしまうラズ。

 そんな中、クラウスはハインに対して何も言わない。

(怒っているのだろうか?無理も無い。少し目を離した隙に、こんな騒動になっているのだから)

 ラズに視線を向けた時に、視界に入ったクラウスに対してそんな事を思いながらも、ハインは王子へと視線を戻し、再び言葉を発する。


「姫君には馴染みの無い“虫”だったのでしょう。わたしの知る常識では、わりとよく耳にする虫です。ですが、厄介な害虫でしか有りません。姫君の事を想うので有れば、護衛を増やし、信頼出来る方々を室内に配置する事をお薦めします。特に今日は寝入った後も、誰かがそばに居るべきです」


 ハインのその言葉に、ルナルティーザが即座に反応し、言葉を発する。


「それならわたくしは、貴方が良いわ!兄様、お願い!わたくし、この方ともっと色々な話をしたいの。だからこの方を、連れて行ってしまわないで!!」


 ハインに必死ですがり付き、懇願こんがんするルナルティーザいもうとの姿に、釈然としない王子は、沸き上がる怒りと嫉妬を持て余す。

(何故そんなにもなつけるんだ?!何なんだこの状況は!!これじゃあまるで、助けに来た私が悪者みたいじゃないか!)

 王子は心の中で愚痴っていた。
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