ヴァインガー ~過去と未来を結ぶ絆~

カザハナ

文字の大きさ
68 / 85
本編

66 衝撃発言

「あの……」


 ハインの声に、ウィンザックスは反応する。


「何だ?」

「わたし如きが、口を挟むべき事じゃないのは充分解っています。でも……それでも言わせて下さい」

「……何をだ?」

「あの男は、姫君に相応しく無い。婚約者候補から外すべきです」


 王子と目を合わせ、きっぱりと言い切るハインの声は、ラズを相手にしていた時のように、先程の会話よりも、少しだけ低く冷たい。


「……その男は、お前に何を言った?」


 ハインの冷えた瞳に、その声音に、強い嫌悪感が有るのを感じ取り、ウィンザックスが問う。


「……手を貸せば、それ相応の褒美を取らすと。何なら俺がこの女を抱いた後、この女を回してやるとも言われました」


 ハインの言葉に、ウィンザックスは頭を鈍器で殴られたかのような衝撃に襲われる。

 だが、そんなウィンザックスにはお構い無しにハインが言葉を続ける。


「男のあまりの下種ゲスな発言に、思わず蹴り飛ばしてしまいましたが、多分、大丈夫だと思います。わたしは年よりも若く見られがちなので、子供だと思ったでしょうし、その子供と侮った相手にやられたなんて、普通は知られたくないでしょうから」


(普段わたしが相手にする奴等と違ってあまり身体を鍛えていないようだったから、かなり手加減はしたつもりだけど、攻撃されるとすら思ってなかったようで、腹筋に力が入って無かったからなぁ。感触からすれば、それ程の重傷にはならないと思うけど、痣ぐらいは出来るだろうし、骨は折れてはいないだろうけど、ひびぐらいは入ってるかも知れない。まぁ、どの道暫くは激痛にさいなまれる筈だけど、嫌がる女性に無理強いしてたんだから、自業自得だよね)

 ハインがそんな事を思っていると、ウィンザックスが驚いたような顔でハインに聞き返してくる。


「……蹴り、飛ばした?」

「はぁ。男の鳩尾に膝蹴りを一発。一応加減はしたので、骨は折れてないと思いますが、罅は入ってるかも知れません。まぁ、確実に痣は出来ているでしょうけど、あれぐらい、姫君の心情を思えば痛め付けた内には入りません」


 平然と言い放つハインに、呆気に取られるウィンザックス。


「……お前……」


 無表情のままのハインを見ていたウィンザックスの肩が震え、堪えられずに笑みを浮かべる。

 向ける場所の無かった怒りが、ハインの言葉で胸がく思いなのだろう。


「良くやった。本当に、お前が居てくれて良かった。ルナの事は任せろ。私もそんな奴をルナの結婚相手になんてしたくは無いからな。ただし、お前にも協力はして貰うからな」

「はぁ。まぁ、わたしに出来る事なら、ですが」

「頼んだぞ。頼りにしているからな、ハイン」


 そのウィンザックスの言葉に、ハインは心底驚く。

(隊長と言い王子と言い、どうしてここの人達は、会ったばかりの私を受け入れてくれるんだろう?ここは本当に、不可思議な場所としか言いようが無いんだけど……)


「そろそろ戻るぞ。妹が心配しているだろうからな」

「はぁ……。あの、これはどうすれば?」


 ハインはウィンザックスに渡されたハンカチを差し出す。


「持っていろ。まだ腫れているからな」

「はぁ……」


(……邪魔になるんだけど、まぁいいか。さすがに姫君に心配される訳にはいかないからなぁ)

 そうしてハインはウィンザックスの後ろに付いて歩き、ルナルティーザの居る部屋へと戻ったのだった。

感想 37

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

メリザンドの幸福

下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。 メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。 メリザンドは公爵家で幸せになれるのか? 小説家になろう様でも投稿しています。 蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。