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本編

70 ハインの兄弟

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「ハインの弟妹にも双子がいるのですか?」


 ルナルティーザは興味津々でハインに聞く。


「はぁ。男の子同士の双子ですが、下から二番目と三番目がそうですね」

「下から二番目と三番目?ハインは何人兄弟なのかしら?」

「わたしは七人兄弟ですよ」


 ハインの言葉にクラウスが聞き返す。


「……七人?六人じゃないのか?」

「ああ、わたしには上に兄が居るんです。と言っても既婚者なので、独立してますが、わたしにとっては自慢の兄です」


 正確に言えば、ハインの兄とハイン達に血の繋がりは全く無い。

 それ所か、同じ部族ですら無かったのだ。

 義兄はハインが幼い頃に、ハインの父親がどこからか連れて来た、他部族の人間だが、今ではヴァインガーとしての証も部族の証も、その腕に刻まれて有る。

 彼は並々ならぬ努力で、ヴァンガルー族として認められた唯一の例外。他部族人で有りながら、ヴァインガーとしても認められた唯一の男で、ハインにとって自慢の兄でしかない。


「兄は独立し、結婚もしているので、弟妹達の面倒を見るのは、部族の中で成人しているわたしの役割なんです。と言っても、わたしは生活費を稼ぐ為に、あまり傍にいてやれませんが」

「……?ハインのご両親はどうしたのですか?」

「わたしの両親は、二人共五年前に亡くなっています」

「ごごごごっ、ごめんなさい!!知らなかったとは言え、わたくし無神経な事を聞いてしまいました!」


 慌てるルナルティーザにハインは首を横に振る。


「いえ。両親はわたしの中で生きているので、わたしはあの二人や家族に、恥じない生き方を選びたいと思っているだけです。……両親の事を聞かれるのは嬉しい事ですよ。少し寂しく思う事も有りますが」


 ハインの言葉に、ルナルティーザはハインの様子を窺いながら聞く。


「……聞かれたくないと思われたならば、直ぐにそう言って下さいね?わたくし、貴方に無理強いをする気は全く有りませんから。その、何故、亡くなられたのですか?」

「他の家の子ですが、危険な場所に行った子供達を助けに行き、庇って身代わりになったそうです。本当はその後に、責任を感じた家の親が、ウチの子達を引き取りたいと言ってきましたが、わたしが断りました。家族をバラバラにしたくは無かったので。暫くは新婚だった兄の所で面倒を見て貰っていたんですが、あまり兄に迷惑を掛ける訳にはいかないので、わたしが部族での成人を過ぎた時に、ウチの子達を連れて故郷を離れたんです」


「そうですか……。大変な思いをなさって来られたのですね」

「わたしはまだ、恵まれた方ですよ。守るべき者も居て、帰る場所も有りますから」


 無表情ながらもキッパリと言い切るハインに、話を聴いていたクラウスは、遣る瀬無く思った。
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