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本編
75 北部
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「ルナはこの鳥に、気に入られたのか」
「ルナ姫はウチの子……妹に雰囲気がそっくりなんですよ」
「……妹?」
ウィンザックスがハインに問うと、ハインは王子も勘違いしてたのかと内心思いながらも説明する。
「はぁ。わたしの住んでた北部地方では、家庭内の自分より下になる未成年者をウチの子と言うんです。同じ家に居る子だと、実子は勿論ですが、弟妹や姪、甥でも、ウチの子と呼ぶんです」
そんな説明をすれば、ゼクトは唯一人、思い当たる節が有ったのか、頷いていた。
「ああ、そうらしいな。ウチの隊にも一人、北部出身者が居て、そいつが同じ事を言っていたぞ」
「えっ、そうなの?」
「初めて聞いたぞ」
イージーとクラウスの言葉に、ゼクトはハインにも解り易いよう、補足説明をする。
「北部出身のサウジールと言う男だが、隊長が一時期放浪の旅をしていた事が有ってな。その時に隊長が連れ帰って来た者なんだが、妹が居るらしく、同じように言っていた事が有る。少数部族だとよく有る事らしいぞ」
北部は特に少数部族が多い。ハインの部族もその一つだ。
そうは言っても昔と比べれば少数部族自体がかなり減り、ステラ国民として生活し、昔ながらの部族として暮らしているのは少数だろう。
レ・ザンは遊牧民を指す言葉だが、今では本来の意味を知る者達は少なく、部族名だと思っている者達が殆どだ。
その為少数部族は代々その意味を口伝で伝えているようだが、少数部族に属さない者達は、ヴァンガルー族をレ・ザンと言う部族だと思っている者達や、二つの部族だと思っている者達が多い。
(北の出身者も居るんだ。……と言うか、隊長。普通の貴族所か、身内に王族が居るのに、よく放浪の旅になんか出して貰えたなぁ)
「放浪と言っても一応の目的は有ったがな。とは言え、その目的は果たせなかったが」
「そうなんですか」
クラウスは目的が有ったと言うが、だからと言って貴族に属する者が、一人で旅をしている事自体が異常じゃないだろうかとハインは思う。
剣の腕前がとても良いから、身包みを剥がされる事態にはならなかったようだが、普通なら、金品を狙われたり脅されたりしていた事だろう。
(どんな目的が有ったかは知らないけど、それでも、少数部族の居る北部にまで足を伸ばすなんて、ある意味凄いなぁ。放浪って言ってるぐらいだし、歩きって事だよね。わたしもここまで歩いては来てるけど、貴族の人が歩く距離では無いと思う)
ハインは故郷を、十五の成人になった年で離れた。
子供達を連れて移動していたり、一人街で仕事を請け負っていたり、一定期間同じ場所に留まったりもした為、普通の旅人よりも明らかに時間が掛かっているのだが、それでもクラウスとは違い片道だ。
ハインは賞金稼ぎをしていたので、同じ街に半年以上と言った長期間の滞在は無い。
どの道、馬や馬車で移動するなら未だしも、北部までを徒歩で往復するには数年を要する事になるのだから、貴族がそれをするなんて、ハインには想定外でしか無かった。
「ルナ姫はウチの子……妹に雰囲気がそっくりなんですよ」
「……妹?」
ウィンザックスがハインに問うと、ハインは王子も勘違いしてたのかと内心思いながらも説明する。
「はぁ。わたしの住んでた北部地方では、家庭内の自分より下になる未成年者をウチの子と言うんです。同じ家に居る子だと、実子は勿論ですが、弟妹や姪、甥でも、ウチの子と呼ぶんです」
そんな説明をすれば、ゼクトは唯一人、思い当たる節が有ったのか、頷いていた。
「ああ、そうらしいな。ウチの隊にも一人、北部出身者が居て、そいつが同じ事を言っていたぞ」
「えっ、そうなの?」
「初めて聞いたぞ」
イージーとクラウスの言葉に、ゼクトはハインにも解り易いよう、補足説明をする。
「北部出身のサウジールと言う男だが、隊長が一時期放浪の旅をしていた事が有ってな。その時に隊長が連れ帰って来た者なんだが、妹が居るらしく、同じように言っていた事が有る。少数部族だとよく有る事らしいぞ」
北部は特に少数部族が多い。ハインの部族もその一つだ。
そうは言っても昔と比べれば少数部族自体がかなり減り、ステラ国民として生活し、昔ながらの部族として暮らしているのは少数だろう。
レ・ザンは遊牧民を指す言葉だが、今では本来の意味を知る者達は少なく、部族名だと思っている者達が殆どだ。
その為少数部族は代々その意味を口伝で伝えているようだが、少数部族に属さない者達は、ヴァンガルー族をレ・ザンと言う部族だと思っている者達や、二つの部族だと思っている者達が多い。
(北の出身者も居るんだ。……と言うか、隊長。普通の貴族所か、身内に王族が居るのに、よく放浪の旅になんか出して貰えたなぁ)
「放浪と言っても一応の目的は有ったがな。とは言え、その目的は果たせなかったが」
「そうなんですか」
クラウスは目的が有ったと言うが、だからと言って貴族に属する者が、一人で旅をしている事自体が異常じゃないだろうかとハインは思う。
剣の腕前がとても良いから、身包みを剥がされる事態にはならなかったようだが、普通なら、金品を狙われたり脅されたりしていた事だろう。
(どんな目的が有ったかは知らないけど、それでも、少数部族の居る北部にまで足を伸ばすなんて、ある意味凄いなぁ。放浪って言ってるぐらいだし、歩きって事だよね。わたしもここまで歩いては来てるけど、貴族の人が歩く距離では無いと思う)
ハインは故郷を、十五の成人になった年で離れた。
子供達を連れて移動していたり、一人街で仕事を請け負っていたり、一定期間同じ場所に留まったりもした為、普通の旅人よりも明らかに時間が掛かっているのだが、それでもクラウスとは違い片道だ。
ハインは賞金稼ぎをしていたので、同じ街に半年以上と言った長期間の滞在は無い。
どの道、馬や馬車で移動するなら未だしも、北部までを徒歩で往復するには数年を要する事になるのだから、貴族がそれをするなんて、ハインには想定外でしか無かった。
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