英雄王の末裔 ~赤のラファルクスと厭われ王子~

カザハナ

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秘密の逢瀬

見知らぬ“赤”との遭遇

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 その日も一人、離宮の森を散策していたら、何人かの殺し屋が私を狙い、襲ってきた。逃げている内に離宮からどんどん離れてしまい、崖がある方へと逃げてきてしまっていた。そして運の悪い事に、ここ数日の雨続きで地盤が緩んでいたのだろう。それ程端を歩いていないにも拘らず、崖が崩れ、私諸とも地面が落ちた。
 精霊が守ってくれた事もあり、あちこち打ってはいたが自力で脱出し、水の精霊が衣服の汚れを落としてくれたのまでは覚えている。だけど、落下場所から少し離れた後、頭を打っていたせいか意識が薄れていった。


「――い……おい。大丈夫か?」

 頬に何かがペチペチ当たる。

「ん……」

 痛む頭を柔らかい何かに乗せられているようだ。
(どこだ?ここ……。何で人の声が、有り得ない程の近くに聞こえるんだ?)
 ぼんやり目を開けると、私の瞳に見たこともない程鮮やかな赤が視界に飛び込んでくる。

「おっ目が覚めたな。なら大丈夫か。それにしても崖から落ちた割りには目立った外傷はないな」

 信じられない程の至近距離に人がいる。これは夢だろうか?燃えるような鮮やかな赤髪に赤衣服、赤い……瞳……?
 頭の下の温かで柔らかな感触、信じられない程の至近距離……?
   !!!
 何が下にあるのか気付き、思わずガバッと身を起こし、急いで立ち上がろうとすると、頭に激痛が走り、立てない程に頭がクラクラして膝を折る。

「……馬鹿か?お前……」

(悪かったな、馬鹿で!)
 言い返したいが言い返せない。馬鹿をやった自覚はあるが、今まで父としか触れ合った事がない私からしたら、人との触れ合いは初めてなのだ。しかも、初対面な上に膝枕されてる状況だなんて……。

「もう一度横になれ。顔色が悪い」
「だっ……大丈夫です。何ともありませんから……」
「お前は医者か?いいから寝ろ」
「いえ……。でも――」
「それとも何か?貴様は人の好意を仇で返す気か?」
「……いえ……」

 仕方なく、のそのそ地面の上に寝ようとする。

「違う。ここだ」

 腕を引っ張られ、相手の膝に再度乗せられる。

「……有難う御座います……」

 どうすればいいのか分からずに戸惑いながら、取り敢えずお礼の言葉を口にする。
(父にすらこんな事された記憶はないのに、まさか、見知らぬ男の人に膝を借りる事になるなんて……。何でこんな事になったのかなぁ……。……何で?)
 突如、崖から落ちた時の事が頭に甦る。
 殺し屋達の殺気、怒声。
(――あっっ――!!!)
 咄嗟に身を起こそうとすると、私の動きを読んだのか、今度は起き上がる前に止められた。人差し指一本で。

「二度もやる気か?」
「それどころじゃないんです!早く逃げないとまた――」
「……もう遅い」

 感情の読めない色鮮やかで綺麗な瞳が私を見下ろす。

「まさか、貴方は……」

(奴等の仲間?!)
 そんな絶望にも似た思いが頭を過るが、赤髪の相手、ラファルクスは、荷物の柔らかい部分をナクラルの枕替わりにして立ち上がる。

「ちゃんと寝てろ。私が出る」

 ナクラルの位置からは草に隠れて見えなかった両手持ち剣を拾い上げ、少し声を上げる。

「こいつに用があるのなら、私を倒してからにしろ。一人じゃ何も出来ないザコ共が」
「!!!」

 ラファルクスに挑発された殺し屋達は、標的をラファルクスに替え、襲い掛かる。
 距離はまだある。が、ラファルクスにとってはないも同然。剣を横に構え、右手のみで剣を一振り、飛んで来る大量の武器やその武器の合間から近付いて来た殺し屋達を吹き飛ばす。
 誰が想像しただろう。自分が投げた武器に襲われ即死や重傷するなんて。ただ一度、その一度の攻撃で二度と武器を扱えない状態になるなんて。
 ここで即死した者はまだマシかも知れない。運良く生き残れたとしても、炎や赤い色を見ただけでこの日を思い出し恐慌状態に陥り暫く寝込み、悪夢に魘され続け精神を病む。死ぬまでずっとそれが続くのだから、運が良かったとは言えないだろう。
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