英雄王の末裔 ~赤のラファルクスと厭われ王子~

カザハナ

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再会の行方

東の大陸

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 あれから5ティファル(※5年)。永遠に続きそうな程、1ディフェル1ディフェル(※一日一日)が長く遠く感じたこの月日。ラファルクス彼女の言葉だけを胸に刻み付けて、やっとここ、東大陸に着いた。……訳で……ここからどう行けばいいのやら……。

 エルト・デ・ルムと呼ばれる東大陸の玄関口である港町の宿の部屋で、一人悩む。

(聞いていなかった私も私だけど、“東へ来い”としか言わなかったんだよなぁ、ラファルクスあの人は……)

 もう癖になりつつある赤い石の存在を、確認する為だけに、服の上から握り締める。



 この石は、本当に私しか持つ事が出来なかった。

 最初に上の兄が私の首に掛かる紐を見付け、王宮から盗んだのかと問い詰め、違うと否定しても信じずに、私からこの石を取り上げようとしたが、その時兄は石に触れ、悲鳴を上げた。触れた手は焼けただれ、回復魔法で完治はしたが、自ら触ろうとはしなくなり、他の者に取り上げろと命じるも、触れた者は次々に怪我を負い、必ず痛い目に合う。そして、それは石に触れた者に限らず、私の命を狙ってきた者や物にも効果を発揮した。

 飛びくる武器は燃え上がり使い物にならなくなり、殺意を持って近付けば、火の魔力を持つ者は身体を凍らされ続け、風の魔力がある者は身動きが出来なくなる始末。魔力を持つ者は自身の対極にある属性で反撃を食らうようだ。それは魔力を持つ者にとって、計り知れない恐怖だろう。自身の魔力を相殺するだけなら未だしも、それを軽々上回り、魔力の源がある自身の身体に易々と影響を与えるのだから。それはつまり、運が良くても自身の魔力が消失する危機があり、そうなれば、息をするのと同じように使用出来た魔力が一生使えず生活する羽目になり、悪ければ確実に死が訪れる事になる。

 父が、この石の存在を知り、何処で手に入れたのか聞かれた為、正直に答えた。私の唯一になる女性がくれたと。

 父は驚き私に詳しく説明するよう求め、私はラファルクスとの出会いから約束までをも話した。父は喜び私が成人後に国を出る為の情報や手段を整え送り出してくれた。

 本当は私を国外には出したくないと思っていたのだろうが、あの国で私が幸せになれる筈もなく、国の体質を変える事が出来なかった事を悔やんでいた。私が国を出た後は、上の兄に王位を譲り退位して、私の母と出会った場所の近くで静かに暮らすと言っていた。

 あの国がどうなるかは私にも分からないが、私はもう、あの国の者ではない。



 東へは来れた。だが、これから何処へ向かえばいいのかが分からない。

 ――でも……喩え貴女への道が途切れていようとも、私は決して貴女を諦めない――

 何処へ向かえばいいのか分からないなら、片っ端から聞き込みまくればいいと、自棄とも取れる決意を胸に、服の中から取り出した赤い石にラファルクスへの想いを乗せて口付けを落とす。

『――北へ――』

 その時、誰もいない筈の部屋で、何故か声が聞こえた。

(誰もいない……?でも、あの声は……)

 忘れもしない彼女ラファルクスの声が、私の耳をくすぐった。
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