氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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「陛下へのお目通りも済みましたし、リラ嬢、私と踊って頂けませんか?」


 エドワルドが組んで無い方のリラの手を取り、甘ったるい笑顔でその指先へと口付けをする。


「よっ、喜んで」


(平常心、平常心ですわ!醜い表情かおを晒してなるものですか!!)

 何とか表情を崩さずに返事をして、エドワルドと共にダンスフロアへと向かう。

 優雅に、軽やかに踊り出せば、会場中から視線を集める。

 何せ、一部の人間から、リラはダンスの出来ない令嬢だと噂を流されていたからだ。


「リラ嬢、私以外の男とは、絶対に踊らないで下さいね?」


 ダンスの最中、エドワルドは小声でリラに話し掛ける。

 リラが喋りながらでも完璧に踊れると知っているからだ。


「?わたくしを誘う物好きは、エドワルド様ぐらいだと思いますが」

「私の婚約者に興味を持たない輩等居ません。してやこれ程上手いのならば、一度は踊ってみたいと、誘ってみたいと思う男がいる筈です。貴女の匂いに誘われて、必要以上に密着し、悪さを働こうと考えるかも知れません。ですから、貴女は絶対私以外の男とは踊ってはいけませんよ?」

「???そもそもわたくし、エドワルド様以外と踊る気はありませんわ。婚約者のいる者や既婚者を誘う意味が解りませんもの」

「そうだね。私もリラ嬢以外と踊る気は無いよ。でも、念の為、今度その意味を私が教えてあげる。クルルフォーン邸で、二人切りの時にね」


 リラは首を傾げながらもコクリと頷く。

(愛人希望や、一夜のお誘いだと言う事も有るからね。胸や下半身を密着させて擦り、ドレスに隠れて情事の真似事やお誘いを堂々とダンス中にしてくる輩もいるから。これは、男女問わずいるけれど、男に誘われる女性の方が逃げ難いし、貴女にそんな被害を受けて欲しく無いから、実践を伴わせて教えるけれど、絶対に他の男となんか踊らせない。貴女が踊って良いのは私だけだ)

 性癖は各々違うが、その中には、人目を盗んで他人ひとの物を狙うたちの悪い人間がいるからだ。

 リラはエドワルドにとって、最愛であり、決して譲れない唯一の女性。

(貴女の匂いも何もかも、知って良いのは私だけだ。それ以外はいらない。私だけの物だ)

 ダンスを続けながらもお喋りは続く。小声で話し合っている為、音楽に掻き消され、他の者達には聞こえずに話せるから、密談には最適なのだ。


「そう言えば、先程陛下に、結婚をお許し下さりと仰っておられましたが、もう結婚許可証を頂いたのですか?」

「ああ、勿論。言ったでしょう、逃がさないと」

「にっ、逃げる気はありませんので、捨てないで下さいね?」


 無表情を装いながらも、見上げながら告げるリラの言葉に、エドワルドはこのまま抜け出し連れ帰りたくなった。
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