氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
184 / 805
本編

132

しおりを挟む
 蜜を舐め取り、リラの背中のボタンをご機嫌な様子で留めていったエドワルドの腕の中へとそのまま収められてしまったリラが、ふと、自分の臀部に当たっていた熱を思い出し、エドワルドは大丈夫なのかと窺い見る。


「どうしたの?何か言いたい事が有るなら、言ってご覧?」

「あっ、あの……エドワルド様は、そのっ、大丈夫、なのですか?」


 リラが目を泳がせて顔を赤く染めるので、大体の察しは付くが、それをリラが聞く事で、エドワルドが煽られる事になる事までは、分からないのだろうなと思いながらも、その問いに答えるエドワルド。


「まぁ、あまり大丈夫とは言い難いけれど、私には、最強の呪文が有るから耐えられる」

「最強の、呪文……?」

「ダンに、今度私が暴走したら、女装したマッドに親愛のハグをさせるぞと、脅された。リラ以外の女性に近寄られるのも嫌だと言うのに、マッドに親愛のハグなんて絶対に阻止したいから、暴走したらマッドが来る、と唱える事にしたけれど、それが予想以上に効いていた」

「……ふふふっ、エドワルド様ったら」


 リラが、エドワルドの冗談なのだろうと思い込み、おかしそうにクスクス笑っているが、冗談では無く事実である。エドワルドはこの呪文によって、理性を失わずに済んだのだから。


「リラは外に出られない状態が続いているけれど、大丈夫?辛くはない?」

「わたくし、王都では王立図書館ぐらいしか行きませんので、問題は無いです。新しい本が読みたくなれば、使用人達に頼んで行って貰えますし、今はマッド達のドレス作りに参加したり、部屋で刺繍したり、時折ダンの整える庭にも行きますし、お茶会や夜会は苦手なので、極力参加したくはありません」

「私もリラを、極力茶会や夜会に参加させたくは無いな。王宮主催の茶会をたまに見掛けるが、男漁りの成果や自慢、流行のドレスや装飾、ゴシップの噂が殆どだ。きっと今は、私達の噂を面白おかしく流している事だろう」


 友好的な物ばかりなら良いが、中には悪意満載の物まであるだろう。まぁそれについては、エヴァンス家の使用人達があちこち潜り込んで調査していると、ジーンから聞いているので、情報が入り次第、黒幕共々制裁を下すつもりだ。

 リラがどこの茶会にも殆ど参加しないのは、今に限った事では無いし、参加すればするで、リラにどうやってエドワルドを落としたのか等、色々聞き出そうと虎視眈々と狙うだけで無く、あわよくばエドワルドとの仲に入り込んで、横取りしようと企みそうだ。

(どれ程、外見や中身を取り繕っても、リラ以外に興味は持て無いと言うのに……。そんな連中を相手にする時間を作るぐらいなら、仕事をしている方が断然良い)

 リラを抱えながら、エドワルドはつくづくそう思った。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...