氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
185 / 805
本編

133

しおりを挟む
 リラと二人で話していたが、寝室に籠るのはあまり良くないので、リラに庭を案内して欲しいと頼み、快く了承を貰える。

 エヴァンス邸は、王宮から近い一等地だが、その庭は広く、敷地内に目隠しになるような高い外壁や高木、侵入者専用の罠が、所々に張り巡らされているらしい。


「最近、見知らぬ馬鹿が掛かる事も増えてるからなぁ。罠作りを趣味にしてる奴が、色々試しちゃあ改良を加えてってるみたいだぞ?昼間でも、判り易い罠と判り難い罠が有るから、あんま端には寄らねぇ事だな」

「ダンが作った訳ではないのか?この国で見掛け無いような物もあるようだが……」

「俺も作ってるが、本格的な物は元からいる古株だ。まぁ、そいつに色々吹き込んで作らせた物も有るがなぁ。あの国ではあんな感じの物が、そっちの国ではこんな感じの物がって言やぁ再現してくれんだよ。元々は、リリー奥さんの為の仕掛けだったらしい。ジルの旦那が穏和そうに見えるからって、中身もそうと決め付けて、リリー奥さんに手ぇ出そうとした馬鹿が大勢いたんだと。お貴族様はどこを見てんのかねぇ」

「リラの母親だけあって、夫人はとても美しい女性だからな。私もクルルフォーン邸の警備を強化していかなければ。リラに何かあってからでは遅いからね」

「……わたくし目当てに、公爵家へと入り込もうとする者なんて居ないと思います……」

「私をこれ程夢中にさせておいて?リラは自己評価が低いけれど、それは元々誰の評価?一部の、美醜の違いが分からないような者達の声等聞かなくて良い。家族や私の言う言葉に耳を傾けなさい。私にとって、リラは世界で一番美しいし可愛い。しかも、日に日に増して綺麗になっていく。私は心配でならないよ。リラに心を奪われた者達が、リラに無理矢理手を出し、私から奪おうとするのではないかとね。だから、出来る限りの対策はさせて欲しい。私の心の平穏の為にも」


 好きな相手にそこまで言われて、反論出来る者はいないだろう。勿論エドワルドもそれを見越して言っているのだ。


「ああそうだ。今すぐはさすがに私も忙しくて無理だけれど、クルルフォーン邸の庭は、あまり手を掛けていないから、リラの好きな花や植物も植えて欲しい。庭はダンに頼めば良いのかな?それともリラも来て一緒に考える?リラはキッチンを改築する部屋や配置も考えなければならないから、クルルフォーン邸の中を巡ったりと、色々する事は沢山増えるけれど、日数は掛かっても問題は無いからね」

「わたくし、クルルフォーン邸のお庭も見たいです!」

「それなら、仕事が粗方片付けば、改めて招待するよ」

「楽しみにしています!」


 エドワルドの思惑等全く考えずに、リラは嬉しそうに微笑んだ。

(嬢ちゃん……。相手が結婚する事の決まっている公爵様だから大目に見るが、明らかに誘われてんのに気付こうや……)
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...