氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

153

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 翌日エドワルドは、王宮の牢に入れられた捕虜に会いに行く。牢と言うが、通常の地下牢では無く、家位の高い謀叛人を捕らえ、詰問する場所に収容した。

 そうは言っても罪人を取り調べる場所なので、高級品を取り揃える事はしない。

 当然周りは兵が囲み、数人の見張りを連れて中に入る。


「お前は庶子と言ったが、識字は出来るのか?」


 エドワルドはジーンも連れて捕虜と会い、史実や歴史書等を持ち込んだ。


「……一応、一通りは出来ます……」


 その言葉に、エドワルドは持ち込んだ本を机に置き、比較的新しい一冊を相手の前に置く。

「なら、これを読め。お前達の愚王が残さなかった、ドレファン国にとって都合の悪い事が、ことごとく載っているぞ。例えば七十年程前の戦争で、ディーランはドレファン国に大勝し、ディーランに戦争を仕掛けた代償として、ドレファン国王の命を世継ぎだけで無く、家臣のいる前で奪い、多額の賠償金を支払わせたとある。その時、当時のディーラン国王は神だと言うのなら、毒等で死ぬ事は無いだろうから、克服して見せろと、それが出来ないようならば、災厄を振り掛けて見せろと言ったが、人間同様死んだし、災厄すら起こせなかったと言われている。その後、当時のディーラン国王は数十年に渡り、平和な世を築き上げ、長い余生を送ったらしいが、何故、ドレファン国では語り継がれていないのか、不思議でならない。それ以前も、ドレファン国がディーランの土地を奪おうとした事はあるが、悉くディーランは阻止しているぞ」

「うっ、嘘だっ!そんな事!?」


 その言葉に、ジーンが呆れた声を出す。


「嘘な物か。当時の書類も沢山残してあるぞ。これは、ドレファン国王にしか使えない印とサインが入っているし、血判もある。我が国が嘘の史実を作って何の得になると言うのだ。言って置くが、ドレファンが我が国に押し入って来たのは今回が初めてでは無いぞ。歴史上、何度も有るが、毎回勝つのはディーランだ。お前達は考え無かったのか?何故、今までドレファンはディーランを襲っていないのか。答えは、襲っているものの、悉く負けているから山脈を越えたこちら側に領土が無いのだ」

「そもそも、我が国がドレファンに手を出さないのは、ドレファンを国土にすれば、その地の整備や土地改良、法改正と、諸々に時間と金が掛かり過ぎるからだ。それをディーランの国税で賄うなんて、馬鹿げている。そもそも、隣だと言うのに、何故、ドレファンとディーランで土地の豊かさが違うか、差が有り過ぎるのか、考えた事は有るのか?お前達の国王が神だ何だと持て囃されている時、我が国は国王自ら土地の改良と水路の確保、各研究者の派遣、インフラ整備等々、どうすれば国民が豊かに過ごせるかを考え、少しでも向上する為に、汚職にまみれた貴族達は裁き、災害が起きた地では税の軽減や復興支援、職人達の技術向上の為の大会等、思い付く限りの政策を実行しているからだ。神の血筋と図に乗って、国内を疎かにする愚王とこの国の国王とを一緒にするな」


 エドワルドは、捕虜の男を冷たく見据え、淡々と言い放った。
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