氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 そして、ジーンが去った後、他の侍女達を下げて、リラが後の二人を紹介する。


「シアお、義姉様。しょっ、紹介しますわ。こちらがダンで、わたくしと兄様にとって、師であり、兄のような存在です。一応庭師ですが、武術に優れていて、兄様の剣の指南者でもあります。多分、この王国一の腕を持っていると言っても過言では無いと思っておりますわ。そして、こちらはルネ。ルナの双子の弟で、この二人は本来、ローズウッド領の山岳地帯に住む部族の者達ですが、訳あってわたくしが引き取りましたの。共通語は苦手ですが、この二人の腕は、ダンの教育も入っているので、普通の近衛よりは強いと思われますわ」


 ダンは王宮に行くのに髭を剃り、身なりを整えている為、普段よりも若作りだ。

 そして、ルナとルネはそっくりで、特に今回同じ服を着ている為、親しい者でなければ殆ど見分けが付かない。

 この二人をエドワルドに紹介していなかったのはまだ共通語が片言しか喋れない為だ。

 本来、王宮に来る時もこの双子を連れて来るか悩んだのだが、戦力として使うのなら使わない手は無いと思えたからだ。

 それ程に見掛けとは違い、この双子は強い。何せ、ダンが仕込む前に、ある程度の投擲武器は使えていたし、ダンが一から接近戦の闘い方を教え込んだからもある。

 若く、戦闘に対して覚えの良いこの双子は、力はまだまだ成長段階にあるものの、剣技では既に、エヴァンス家の中で、上位十人の中に入る程に強いのだ。

 まだ幼さの残る顔立ちをしていても、ジーンより剣の腕が立つのだから、使わない手は無いと言う訳だ。


「わたくし、お二人を見分ける自信がありません……」


 アナスタシアが落ち込む姿を見せるので、ルナが懐から髪結いの紐を取り出す。

「ルナ、赤い!」


 そう言って、肩より少し下の真っ直ぐな髪に括ろうとするが、上手く括れないようだ。

 奮闘するルナを見兼ねて、レベッカが声を掛ける。


「ルナ、その髪結いの紐を貸して?」

 レベッカが後ろに回り、ルナの髪を一つに束ねて、ルナの持つ紐で括ると、満足そうににこにこと笑う。


「ルネ、青い。レベッカ、ルネも」

「ええ、分かってますよ」


 因みにこの双子は、ルナの方がやや活発で、ルネの方が少しだけ大人しい。

 リラがこの双子を引き取ったのは、リラがデビューする少し前で、二人が罪人として、牢屋に入れられそうになっていた為、リラがその場で保護したのだ。話を聞けば、罪人に仕立てらそうになっていただけのようで、行く宛も無いので家に連れて帰ったのだ。

 エヴァンス家には、ジーンやジルギリスの他に、少数ではあるが他にも数人、この二人の部族の言葉を喋れる者達がいて、最初は警戒心剥き出しだった双子も、徐々に慣れ、今ではエヴァンス家の使用人として、ダンの下で働いているのだ。
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