氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 一応の止血はさせた物の、身動きすらしない愚王に、愚王の相手をしていた女に命じて服を着させる。と言っても、縛ったままなので、上着は羽織る程度だが、下は着せれるので良しとする。

 因みに、切り落とす際に愚王の一物を握らせたり、止血する際も、指示だけしてこの女にさせた。

 勿論、可愛い部下と呼べる使用人達にも、汚物を触らせる気は無かったからだ。

 女はこの愚王の愛人か何かなのだから、雑な扱いで構わない。脅して命令しているだけの存在だ。使えないなら剣で切り捨てて、他の女を連れて来るぞと言えば充分だった。


「さて、足を切り落とした訳でも無いので移動したいのですが、いい加減声を上げるだけでいるのは止めて頂けませんか?耳栓をしていても、その耳障りな声が聴こえてくるので煩くて煩わしいのですが。その声を止めないと、他の部位も切り落としていきますよ?」


 取り敢えず、今死なないなら別に何をしても問題は無いと思っているジルギリスからすれば、実行に移す事は容易い。

 そんな思惑を感じ取れたのだろう愚王は、痛みを堪えて何とか叫ぶのを止める。


「出来るじゃないですか。初めからすれば良いものを。ほら、早く立ちなさい」

「おっ……お前は誰だ?!私が誰だか解ってやっているのか?!こんな事をして、ただで済むとおもうなよ?!!」

「煩いと言ったでしょうが。誰か解らずに、態々こんな所まで来る馬鹿がいると思ってるんですか?知ってて来ているに決まっているでしょうに。だから愚王と呼ばれるんですよ、この愚王が」

「なっ?!」

「何に驚いているんです?愚王じゃないとでも思っているんですか?愚王以外の何者でも無いですよ、この馬鹿が。神の末裔?そもそも神ならば、これ程簡単に身体に傷を負う筈は無いでしょうに。貴方が本物の神だと言うのなら、証拠を見せてみなさい、証拠を!」

「しょっ……証拠?!?」

「初代が戦に負けなかった?単に運が良かったのと、他より少し賢かっただけですよ。死んだ時に日が陰った?日蝕と被っただけですし、偶々の条件下で亡くなる人はどれ程いると?ドレファンの言い分で神になるなら奇跡の生還を果たす者とて神になりますが?神だ何だと言うのなら、その焼けた物を元に戻すか、再生すれば良いでしょうに」


 こんな馬鹿と話している時間が勿体無いと、ジルギリスは強行手段に出る事にした。


「マーウ、そいつをこの部屋から引き摺り出しなさい」

「ん?もういいのか?」

「いいですよ。話すだけ時間の無駄ですから」

「了解」


 マーウィンは愚王の腕を掴み、エドワルド達がいる扉に向かって歩き出した。
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