氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
250 / 805
本編

198

しおりを挟む
 ドレファンを出て、ディーラン国内に入り、最初の休憩の時、マーウィンがエドワルドに婚約の事を詳しく聞こうと、横に並んで座り、話し掛けた。


「エドワルド!リラちゃんとの仲はどうなのか、詳しく教えろ!!」

「リラ嬢とは……リラちゃん・・?」


 マーウィンの呼び方に、疑問を抱いたエドワルドが、マーウィンに直接聞き返す。

 勿論、聞き耳を立てていた周囲の兵士達も、前国王陛下であるマーウィンが、エヴァンス侯爵令嬢をちゃん呼びした事に、耳を疑う程に驚いた。


「んん?エドワルドは知らんかったか?リラちゃんは私が一番可愛がっているお気に入りの娘で、昔はよくジルの家に忍び込み、リラちゃんを抱き上げ可愛がっておったぞ?あの娘に会う度、女の子も良いなとよく思った物だ!」

「……子供の頃……抱き上げた?」

「可愛かったぞ~!今はあまり笑わなくなったが、昔は抱き上げると、キョトンとした後あの可愛い声で、マーウおじ様、いらっしゃいませって微笑んでくれたからな!子供の頃も美少女で、もう、天使のような可愛さだった!!」


 力説するマーウィンに、エドワルドは嫉妬を胸にたぎらせる。

(リラの幼少期、抱き上げ、笑顔、愛称呼び……!!なんて羨ましい事を!!)

 そんなマーウィンの背後にゆらりと人影が見えたかと思うと、その人影はマーウィンに蹴りを食らわせた。


「何度も何度も、私が王宮内で仕事中に姿を眩まし、護衛の者達に泣き付かれて、屋敷に戻ってみれば、私の可愛い娘を抱き上げ、鼻の下を伸ばしている始末……。私とて、愛する家族と過ごしたいのを我慢して仕事に打ち込んでいたと言うのに、マーウは余計な仕事を増やし、人の家に無断で忍び込み、息抜きだと言って私の家の使用人に絡んでましたよね?私は庭師に、何度も手合わせ申し込まれるんですが、相手しないと駄目ですかね?と聞かされるわ、仕事が増えて帰りが遅くなる事も有るわで散々だったのですが、反省すら無く、何度も王宮脱走して、誰も見付けられないからと、私が連れ戻し係りにされ、逃走を防ぐ為にと、リリーとリラを領地に帰して、私と両親だけが王都で過ごす羽目になったんですからね?!あの頃の可愛い娘を堪能出来なくなった挙げ句、娘が笑わなくなった事は、今でも忘れていませんからね!!」

「悪かった!王都を離れさせる理由を作り、可愛いリラちゃんが笑わなくなるなんて、私も思って無かったのだ!」


 どす黒いジルギリスがマーウィンを踏み付け続けるが、ジルギリスの塩辛対応の理由の一つに、マーウィンが押し掛け、ジルギリスは仕方無しにリリーとリラを領地に帰したら、リラを罵り虐めていた元凶と親達が、ジルギリスや先代当主夫妻、ジーン不在の領地に何度も押し掛け、リラが笑わなくなってしまったと言う事が含まれていたようだ。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

処理中です...