氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
265 / 805
本編

213

しおりを挟む
 リラは早々に仕度を済ませ、ダンとレベッカ、双子達を連れて王宮へと向かい、父親のジルギリスに面会を求める。

 ルナは今回お忍びでは無いので、ルネとお揃いの色違いで、所々にレースやリボンの付く、女の子用ペアルックの服装だ。

 暫くするとジルギリスが現れ、人払いをする。

「どうしたんだい?突然」

「今日届いた物なのですが……」


 ジルギリスの問いに、リラはソッと例の書簡を差し出す。


「?レオン君の紋章だね」


 ジルギリスはそれを手に取り中を確認する。


「……。これは、早々に教育をし直す必要が有りそうだね。仕方無い。王妃にも許可を頂いて、アレクシス君と同等の(恐怖)教育を施さないと。有難うリラ、教えてくれて。こんな失礼な呼び出し状に応じる必要はないよ?」

「ですが、王太子の呼び出し状を無視したと取られてしまうでしょうし、エドワルド様に迷惑が掛かりそうなので、一応お会いしてみますわ」

「そう……。ダン、王太子が目に余る様なら、教育的指導をしても構いませんよ。後で報告を入れなさい。それとこれの中身だけは、私が預かって置くからね」


 ジルギリスは、リラに封筒だけを渡し、レオンの書簡を軽く振る。

 封筒の方はレオンの紋章が有る為、通行書にもなるからだ。


「了解です」

「今は子供で済むかも知れませんが、学院生活が終わっても、子供気分で居られては困りますからね。王族は特に権力の象徴ですから」

「それではわたくし、行って参りますわ」


 ジルギリスは笑顔でリラを見送った後、レオンの後見人である、エドワルドの執務室に足を向けた。

(ここは大好きな叔父からも、レオン君のその迂闊さに喝を入れて貰わないと……)

 そしてリラは、レオンの呼び出しの場所へと向かう。

 そこは、王族のプライベートな空間で、前は王妃であるアナスタシアの部屋だったが、今度は王太子、レオンの部屋が有る居住区の、広間に当たる部屋だ。

 その部屋に案内されて直ぐに、王太子のレオンが現れ人払いを命じ、リラの連れであるダンやレベッカ、双子達を一瞥し、リラに言葉を掛けてくる。


「貴女がエヴァンス侯爵令嬢ですね?内密の話が有ります。その者達も下げて頂きます」

「お言葉ですが、王太子様。それは致し兼ねますわ」


 リラがきっぱり言い切り、レオンは眉を寄せる。


「王族の私が望んでいるのに、ですか?」

「王太子様、わたくしはこれでも婚約者のいる未婚の娘。婚約者以外の男性と二人切りになる事は禁じられておりますの。それは喩え、社交界に出席していない子供だろうと、お年を召した高齢の男性だろうと、大した違いは有りません。王族だと仰るのなら、もっと慎重に行動をなさいませ」


 リラは初っ端から、レオンに苦言と言う名の駄目出しをした。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...