氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 レオンは気が抜けたのか、その場に座り込む。

「おいおい、人前で王太子様が気ぃ抜くな。そういった油断や隙を晒すって事は、弱味を握られんのと同じだぞ。そういうのは時間を掛けて築き上げた、信用の出来る相手の前でだけにしろや。間違っても、初対面に晒すな。人には裏も表も有るんだ、騙されても文句は言えんぞ?社交や外交ってのは、時に騙し合いに発展する。平和ボケしてっと食われるぞ。噂なんぞは相手の一部でしか無い。下手すりゃ大嘘だって事も有るんだからな。自身が冤罪で罪人作り出したくなけりゃあ、ちっとは先を考えて動け」


 ダンがレオンの手を取り立たせる。


「俺等にそんな気はねぇが、中にはお前を、事故に見せ掛けて殺そうとする奴だって出てくるかも知れねぇんだ。知らん奴を迂闊に近寄らせんな。お前と似たような年のあの双子だって、お前を簡単に殺す技量は有るんだぞ」


 驚いたレオンがマジマジと双子達を見る。


「「必要ある、る」」


 レオンには、いつ出したのか分からないが、双子達のその手には短刀が握られていた。


「無いから!そんな必要!!」


 大慌てでダンの後ろに隠れるレオンを見て、ついついリラが笑う。


「ふふふっ、大丈夫よ。王太子様は二人の大好きな、王妃様の息子ですもの。わたくしに危害を加える素振りさえ見せなければ、何もしないわ」


 笑うリラを、レオンがマジマジと見て、その顔が徐々に赤く染まっていく。

(笑わない、人だと聞いていたのに……)


「?……王太子様?お身体の調子が悪いのですか?」


(王族や公爵が良いのだと聞いてたけど、それなら私だって……)

 熱に浮かされたような感じでリラを見てくるレオンにリラは手を伸ばし、額に触れようとしたその時、人払いをした扉が突然音を立てて開く。

 リラが手を引っ込め、扉の方を見ると、そこには息を切らせたエドワルドの姿があった。

 そしてそれを見たリラは、エドワルドが見惚れたあの笑顔を向ける。


「エドワルド様!」


 レオンは我に返り、その目を疑う。

 氷結の毒華と呼ばれるリラが、とても嬉しそうにエドワルドを見て微笑んでいる事と、何事にも動じない、あのエドワルドが息を切らせてここに来た事にもだ。

 レオンにとってのエドワルドは、完璧でミスの無い、どんな難題でも、全く動じる事の無い、文武両道、完全無欠の叔父上だ。

 王宮内を走るなんて、絶対に無いと思っていた人でもある。そのエドワルドが、息を切らせてレオンを睨み付けてくるのだから、驚くのも無理は無い。


「……レオン、これはどういう事か、詳しく説明をしなさい」


 その声は、レオンが今まで一度も聴いた事が無い程低く、冷たく、寒さを感じて背筋が冷えた。
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