氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

274

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 リラ達と一旦別れて、エドワルドは部屋に足を踏み入れる。

 リラと一日中一緒に過ごせる旅行は、エドワルドにとって嬉しい物でしか無い。

 エドワルドはそれ程疲れている訳では無いので、先代当主であるリラの祖父、ジオラルド=エヴァンスに会いに行くのも良い。

 そう思っていると、扉がノックされる。


「どうぞ」

「失礼致します。もし、お疲れで無ければ、我が先代エヴァンス家当主、ジオラルド様がお会いしたいと申し出ておられますが、如何致しましょうか?」

「是非ともお会いしたい。直ぐに向かおう」

「いえ、それには及びません。私はここに居りますので」


 そう言うと、扉の影から先代当主のジオラルドが顔を出す。


「お久し振りです、エドワルド殿下。座って話をしませんか」

「ええ。お久し振りです、ジオラルド殿。殿下は止めて下さい、この先身内になるのですから」

「ああ、そうだね。……しかし、まさかエドワルド殿が、ウチの孫と結婚するだなんて、これっぽっちも思ってなかったよ」

「私も結婚したいと思う日が来るとは、思っていませんでしたよ、彼女と出会うまでは」


 エドワルドは、リラを想うと思わず口許に笑みを浮かべ、それを見たジオラルドが内心驚く。エドワルドの笑みなんて、滅多にお目に掛かれる物では無かったからだ。


「変わりましたね……」

「彼女のお陰ですよ。まぁ、彼女に関わる事以外は、大して変わっていないと思いますが」


 エドワルドの言葉に、ジオラルドが笑う。


「ああ、そうだ。リラに内緒で進めると言う、ここでの結婚式の事を話そうと思っていたのだよ。リラが来る前にね」


 ジオラルドが茶目っ気たっぷりにエドワルドへと切り出し、エドワルドがそれに頷く。


「私も、色々と相談したいと思っていたのです。王都に戻ってからも、色々と相談させて頂いても構いませんか?」

「ああ、良いとも良いとも。ここにいらっしゃる時は、夜中に私がここへと赴きますよ。昼間は孫達、特にリラと、領内を見て回らなければならないでしょうからな」

「とても楽しみにしていました。彼女が育ったこの地を見て回る事や、彼女が育った本宅にお邪魔させて頂く事を」

「是非ともゆっくり滞在し、この先、婚姻後も幾度だろうと足をお運び下さい。その内、曾孫にも会わせて頂けると、嬉しいですね」

「ええ、子供が出来た後も必ず来ます」


 二人がにこやかに話していると、また扉がノックされ、返事をすると、噂のリラがひょっこりと顔を見せ、ジオラルドを見付けて膨れた。


「ズルいですわ、お祖父様。わたくしからご紹介する楽しみを奪ってしまわれるなんて!」


 そう言ってリラは、二人の座る、客間のソファーに足を向けた。
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