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本編

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「悪かった悪かった。顔見知りだから、先に挨拶だけでもと思ったのだよ」


 朗らかに笑うジオラルドの前で、リラは未だに膨れている。


「久し振りだと、先代の当主と挨拶をしていただけだよ。リラもここに座って、ちゃんとリラの口からジオラルド殿に、私を紹介して貰えると嬉しいな」


 エドワルドの言葉に、リラはパッと花を咲かせるかのように微笑み、エドワルドの隣に座ってジオラルドに向かい合う。


「お祖父様、わたくしの婚約者で、三月の末には結婚する、エドワルド=クルルフォーン公爵様ですわ。わたくしを好いて下さるとてもお優しい方で、わたくしもエドワルド様の事をお慕いしております!わたくし、エドワルド様に選ばれて、本当に幸せ者ですわ♪」


 愛しの婚約者に、キラッキラの笑顔で言われて、喜ばない男はいないだろう。

 エドワルドは顔を赤く染め、リラの手を握る。


「幸せ者は、私の方だよ。こんなに美しくて可愛過ぎる婚約者に、ここまで言われるのだから」


 エドワルドの言葉にリラも顔を赤く染める。


「こここっ、このように、とても奇特な方ですが、結婚しても飽きられ無いよう、精一杯頑張りますわ!」

「私もリラに、飽きられ無いよう精一杯努力しよう」


 そう言って、エドワルドは幸せそうに笑う。

 そんな二人の様子を見て、ジオラルドはジーンの寄越した手紙の、エドワルドがリラにベタ惚れだから心配無い、との内容の事実を目の当たりにし、心底安堵するのだ。

 ジオラルドの知るエドワルドは、感情の起伏が殆ど無い、人形のようだと言われていた幼少期で、リラの隣に座るエドワルドとは、まるで別人のように思える程だ。

(あの彼が、こんな風に笑えるようになるなんて、あの頃は想像すら出来なかったな)

 エドワルドが笑った姿等、一度も見た覚えが無いと言える程に、エドワルドは笑わない子供だった。


「わたくしがエドワルド様を、飽きるなんて事は有りませんわ!!わたくしをこんなに夢中にさせてる癖に、日に日に大きく気持ちが育つのに、甘やかし過ぎたらエドワルド様が困る事になるのですよ?!」

「その言葉を、そっくりそのまま返してあげるよ。私は欲張りだからね。リラが私を甘やかし過ぎたら、それこそそれが日常になって、リラが困る事になるよ?」

「なりませんわ!そんな事を仰るのなら、わたくし、エドワルド様にしがみついてでも、絶対に離れませんからね?!!」

「私はリラを離す気なんて全く無いから、大歓迎だよ。確りとしがみついていれば良い」


(エドワルド様の良いように丸め込まれたようで、何だかとっても悔しいです!!絶対に逃がしませんからね!)

 リラが顔を赤く染めたまま、怨めしげにエドワルドを見ているが、エドワルドはそんなリラが可愛くて仕方なかった。
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