氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

本編

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　一ヶ月振りの王都でも、リラが一緒に居た事で、あっという間に過ぎ、結婚式まで一ヶ月を切ったのだが、久々に王宮に登城すると、仕事量が思っていたより少なく、それこそ、大量に有るだろうと予想していただけに、思わぬ誤算だったのだが、理由を聞いて納得がいった。

　と言うのも、学院でレオンが授業を受けている間、暇なのでと、ジェフがレオンの授業時間が終わるまでの間、王宮で政務官の仕事を手伝っていたそうだ。

　因みにジェフは、エヴァンス家の遠縁で、王立学院卒業後、エヴァンス領にて政務官に就いていましたが、現在、同学年だったアレクシス国王陛下からの要請により、一時的ですが、王太子の侍従に就かせて頂いております。国の政務官が、高が一地方の政務官に負ける筈も無いとは思いますが、精々頑張って下さいね？と発破を掛けたそうだ。

　物の見事に対抗心を燃やした政務官達だったが、ジェフが王宮にいる時間は、レオンの授業時間のみと知り、時間も経験も少ない者に負ける訳が無いと、余裕綽々で仕事の報告をアレクシスにすると、アレクシスからジェフのした仕事量を見せられ、固まったらしい。

　何せ、ジェフは政務官達のした仕事の二倍は軽く上回っている量を熟していたからだ。

　政務官達が嘘だ！信じられないと喚き出したのを見ながら、アレクシスは、ジェフに関する情報を流す。

　曰く、ジェフは学院でも頗る優秀だった事、エヴァンス領は実力重視で、平民だろうと王都よりも優秀な人材がゴロゴロいる事、そんな中、ジェフは己の実力で政務官の地位を勝ち取り、更なる難関であり、最高峰とされるエヴァンス家内の政務官として、領内各地から集まる書類の精査をしている凄腕の政務官だと。

　本来、エヴァンス領から出る事は無かった筈だが、エドワルドとエヴァンス家令嬢の婚約により、一時的に王都に来ていた所を、昔の誼よしみで無理を言ってレオンの教育係り兼侍従を願い出たのだとアレクシスは言い、そもそも、エヴァンス領の場合、職場で頂点に上り詰めたとしても、そこで天狗になり踏ん反り返っていたら、次の者に蹴落とされる場所であり、上だからと気を抜いていたら即座に引き摺り降ろされるような場所だと言って置く。

　上になれば踏ん反り返るだけで、仕事を碌にしない連中の多い王宮なんて、真っ平だと言って、卒業後の進路をエヴァンス領に決めていたジェフが、短時間だろうと負ける訳無いだろうと、アレクシスは政務官達にぼやいていたそうだ。

　ただ、売られた喧嘩を買ったのなら、最後までやり通せ。でなければ、高が一地方の政務官に、王都の政務官が恐れをなして逃げ帰ったと、ジェフに噂を流して貰う事になるからなと、アレクシスも脅していたらしく、その為泊まり込んで仕事を片付けるような量も無く、エドワルドは夕方エヴァンス家に寄れる時間を手に入れたのだった。