氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

338

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 披露宴会場の入り口で、エドワルドとリラが並び、各国の大使や双方の身内、極々親しい者達だけが、新郎新婦に話し掛け、他の参加者達は、高位から順に、祝福の言葉だけを贈れる決まりになっている。

 因みに、各国の大使達で式に参加していた者達は、他国の者達で有る為、地獄の説教も参加資格が無く、アナスタシアが控え室から呼ばれる少し前に呼ばれたので、どのような話し合いが有ったのか詳しくは知らないが、国内の不祥事を起こした貴族の処遇に付いての話し合いとは聞いていたので、このような晴れの日に態々すると言う事は、王命の花嫁にちょっかいを掛けた国賊紛いがいたのだろうと判断され、誰の口からも文句は出なかったそうだ。

 そうして、二人で親しい者達からの祝福の挨拶に応対をしていると、体格の良い一人の男が近寄って来る。


「この度は、ご結婚おめでとう御座います。先日は愚弟と父、祖父が大変失礼な事をしたと聞き、当主としてお詫び申し上げます」

「貴殿はーー」

「デュークお兄様!お久し振りですわ」


 リラが相手の男を、ニコニコしながら見ている。


「久し振りだね、リラ。幸せそうで何よりだ。皆が押し掛けては迷惑だろうと思い、訪問せずにいたのですが、どうやら間違っていたようですね。後から叔母上に聞き、キルロスが当家に寄った時に、同行すれば良かったと後悔しておりました」

「いや、本人達からの謝罪は受けているし、デューク殿に落ち度は無い」

「そう言って頂けると有り難いです。皆様お待ちのようなので、また今度、機会が有ればゆっくりと」


 そう言って、デュークは次に祝福の挨拶へと来た者と交代する。

 あのセイル家の者に、あれ程の良識と配慮を持ち合わせていた者がいるとは。

 他の者達とも挨拶が一段落して、リラに聞いてみる。


「リラ。先程のデューク殿は、セイル家の者にしては珍しいタイプの者だよね?」

「デュークお兄様は、ジオラルドお祖父様や、ジルギリスお父様に、よくご質問なさっておいででしたわ?子供の頃から、教師代わりに教えていたとか。多分、その所為ではないでしょうか?」


 リラの返答で、思わず成程なと思ってしまったエドワルドだった。

 そうして披露宴の挨拶も済み、食事会となり、リラに祝いの酒を勧めようとした者達を退け、その代りにとエドワルドが受ける。


「彼女は酒を飲むと、寝付いてしまいますから。私がもっとも楽しみにしている初夜を、どうか取り上げないで頂きたい」


 そんな事まで口に出し、リラが全身を真っ赤に染める様子も愛でながら、エドワルドは密かに心の中で決意していた。

 あの可愛過ぎる酔っ払い姿を、人前で晒させてなるものかと。
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